AT車ペダル踏み違い事故防止のために —左足ブレーキの勧め—

 このところ高齢者が運転する自動変速機付きのクルマ(以下、AT車)が暴走し建物に突っ込む事故のニュースを度々見聞きします。以前からあったのか、高齢者ドライバーが増えてきたからこの種の事故が増えたのか、あるいはAT車が増えたからなのか・・・(2011年時点で98.5%)。多くの場合、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み違いが原因のようですが、これは簡単に防ぐことができるように思えてなりません。

 手動変速機付きのクルマの場合にはアクセル、ブレーキ、クラッチと3つのペダルがあるのに足は2本しかありませんので否応なしにアクセルとブレーキを右足で踏み分けなければなりません。これに対してAT車の場合にはアクセルとブレーキ、2つしかペダルがありませんのでこの2つのペダルに右足と左足を専属で割り当てれば良いのです。

 例えばコンビニエンスストアの駐車場にバックでクルマを止める時、クリープでゆっくりバックするクルマの速度を左足でブレーキペダルを軽く踏みコントロールします。足が乗っているのはブレーキペダルのみですので、間違ってアクセルペダルを踏み込むことが引き起こす事故は理論上起きることはありません。

 人通りの多い商店街を走行する場合、どこからか急に子供が飛び出してくる危険性が常に潜んでいます。まっすぐ走っていたはずの自転車が急によろけるかも知れません。こういうシチュエーションの場合には右足でアクセルペダルを踏みながら左足はブレーキペダルに乗せてわずかに踏んでおきます。

 万が一子供が飛び出して来た、あるいは目の前の自転車がよろけたら、アクセルペダルに乗せた右足を緩めると同時に左足でブレーキペダルを強く踏み込みます。右足をアクセルからブレーキに踏み替えるための時間とペダルを踏んでから制動が始まるまでの時間の両方を節約することができます。つまり危険を察知してから停止までの時間と距離をより短くすることができるのです。

 後続車が車間距離を取らずにぴったり後ろについて「煽って」来るような場合には、アクセルはそのまま踏み続け(むしろ少々踏み増し)、警告のために左足でブレーキランプだけをパパッと点滅させます。たいていの場合、減速しない(あるいは加速している)のにブレーキランプが点滅するのに驚いて車間距離を取るようになります。

 以上がより安全な運転に視点をおいた「左足ブレーキ」のメリットです。もちろん加速から減速、減速から加速に移行する際にもアクセル-ブレーキ間の足の移動時間を節約できれば当然のこととしてより速く走ることにも寄与します。トルクコンバーターを使用した一般的なAT車の場合にはブレーキペダルを踏みながらもエンジンの回転数落ちを防ぐことでコーナリング後の加速への移行もよりスムーズになります。

 私が実践しているからと云うだけで左足ブレーキをお勧めしている訳ではありません。実は元F1ドライバーにして世界一等の技術系自動車ジャーナリストであるポール・フレールが自著「ハイスピードドライビング」(二玄社)においてAT車ドライブのテクニックとして推奨しているのです。

「いうまでもなくオートマチック・トランスミッション付きの車にはクラッチペダルはなく、アクセルとブレーキペダルしかない。このふたつのペダルを踏むのに右足だけを使い、左足を遊ばせておくのは私にはどうも不合理に思える。私の行ったテストの結果によれば、一つのペダルから隣のペダルに踏みかえるのに約1/10秒かかり、更にそれにドライバーの反応時間がプラスされる。こうせず左足でブレーキを踏むことに慣れてしまうと、安全性が大いに増すだけではなく、加速と制動がうまくつながるので街なかの混んだところでの運転はよりスムーズになる」
(「ハイ スピード ドライビング」
著者:PAUL FRERE 訳者:小林彰太郎
1966年7月16日初版 株式会社 二玄社 22頁より転載)

 更に同氏は2004年刊行のより一般向けの「はしるまがるとまる」でも「左足ブレーキの勧め」の項のおいて6頁を割いて「左足ブレーキのメリットは反応の速さ」と、その利点を説いています。

 と云う訳でポール・フレール及び郷秋がお勧めする左足ブレーキですが、これには少々の慣れが必要です。慣れないと「カックン」ブレーキになりがち、あるいはABSが効くほど強く踏み込めないので、実用の前に安全な場所で十分な練習が必要です。一般道での実践は、くれぐれも自信をもって左足でブレーキペダルを踏むことができるようになってからにしてください。

【参考】
古典的名著とも云える「ハイ スピード ドライビング」は絶版となっておりますが、改訂版である「新ハイスピード・ドライビング」が二玄社から刊行されております。
定価 1,728円(本体価格 1,600円)
A5判・192ページ・1993/12刊行
ISBN4-544-04044-2

「はしる まがる とまる」 もっと楽しいクルマの運転ポール・フレール著
定価 1296円(本体価格 1200円)
A5判変型・184ページ/2色刷り・2004/08刊行
ISBN978-4-544-04093-7


 と云う訳で今日の一枚は、1966年7月16日刊行の「ハイ スピード ドライビング」(郷秋の手元にあるのは1984年12月発行の第14刷)とホンダ・ビート。クルマをより安全に、より速く走らせたい方は是非ともお読み頂きたい一冊です。

 「恩田の森Now」 http://blog.goo.ne.jp/ondanomori に、ただいまは 4月22日に撮影した写真を6点掲載いたしております。春が深くなる森の様子をどうぞご覧ください。4月29日撮影の写真はおいおい掲載のつもりです。今週末の森の散歩&撮影はお休みになる可能性がありそうです。悪しからず。

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