旅はまだ終わらない。函館行き路線バスの待ち時間を利用し鴎島を散策。千畳敷では釣り人がのんびりと糸を垂れていた。江差もいい街だなあ。
二時間ほどバスに揺られる。乗客は数人のみ。海岸線をひた走り、右折すると緑あふれる渡島半島を横断、13時半前函館駅到着。ここにはお気に入りの店が数軒あるが、そのほとんどは夜間営業の居酒屋。ならばとて頭に浮かんだ古い大衆食堂へ足を向ける。おお、まだ健在だ!いきなり気分は孤独のグルメの井之頭五郎だ・・・久しぶりの函館だが観光客にまぎれて海鮮丼の気分じゃない。俺の脳は今何を求めている?俺の胃袋は何を入れて欲しがっている?そうだ、肉だ!肉と言っても焼き肉屋の気分ではない、もっとガツガツ喰らうような大衆的な肉を俺は今無性に喰いたがっている。それほどまでに俺の空腹感は追い込まれている・・・と、迷わずカツカレーを注文。う、うまい。うま過ぎるほどの美味さでないところがまた嬉しいのは、思い出そのままの味に再会したからだ。久しぶりの味が前よりもっと美味くなっていたならば、それはただ単に美味いとだけ表現される薄っぺらい美味さであり、その中には喜びなど無いのだ・・・と、ほぼ10年ぶりの変わらぬ津軽屋食堂であった。
もう一軒寄りたい店があった。『酒の丸善 瀧澤商店』の創業は戦前で北海道を代表する角打ちの銘店なのだ。観光客相手の店では活イカ一パイ1000円以上は当たり前だが、この店ではなななんと350円で食える。小ぶりだがその歯ごたえはポキポキで味も甘く、この肝がまた美味いのだ。奥尻で撮った画像をディスプレイで再生しながらハイボールを楽しむ、まさに旅の余韻に浸るには最高の時間だ。「奥尻かい、いいねえ。なまらうまかったっしょ?」と店主の言葉に、二軒の寿司屋の大将と塩ラーメンの店の親子の笑顔が浮かんだ。21年間、ずっと抱き続けた憧れの奥尻島、この旅のフィナーレにふさわしい時間だった。この満足感、達成感は一生涯消えることはない。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました
追記
いつもお世話になっている大切なお客様方、ささやかではありますが北海道民ソウルフードであるお土産を用意いたしました。
どうぞお気軽に店へお寄りくださいませ。おそらく、もらっても迷惑なものでしょーが。