江戸観光案内

古地図を片手に江戸の痕跡を見つけてみませんか?

南蔵院

2015-10-17 | まち歩き

南蔵院は豊島区高田にある寺院で、室町時代に円成比丘(えんじょうびく)(永和二年(1376年)寂)が開山したとされる古刹です。前回ご紹介した面影からは北に200メートルほど行ったところに在ります。古くは道を挟んで向かい合う氷川神社の別当でした。本尊の薬師如来立像は奥州藤原氏の持仏で、円状比丘が諸国遊化のとき、彼の地の農家で入手し、この地に安置したと伝えられています。(江戸名所図会には聖徳太子の作にして、藤原秀衡の念持仏であり、奥州平泉に在ったと記されています。)

葉室麟著「おもかげ橋」(幻冬社)に登場する、小池喜平次の店の寮は、この南蔵院の東側に在るという設定です。草波弥市と小池喜平次の二人は、九州肥前蓮乗寺藩の元藩士で、過去に藩内の抗争に巻き込まれて国許を追われ、現在は江戸で暮らしています。剣客指南で糊口をしのぐ弥市。士分を捨て、飛脚問屋の主となった喜平治。今の二人は蓮乗寺藩とは何の関わりも無く日々を過ごしていますが、ある日突然、かつての上司の娘で、二人が想いを寄せていた萩乃という女性の護衛を依頼されます。依頼を断れず、二人は、この喜平次の店の寮で萩乃を匿います。

南蔵院は鬼平犯科帳シリーズ(池波正太郎著、文藝春秋)にも登場しており、第七巻に収録の「隠居金七百両」の中では、南蔵院の山門から躍り出た悪者二人が、女をかどわかします。第十八巻に収録の「おれの弟」の中では、長谷川平蔵の弟弟子・滝口丈助が、夜明けに南蔵院の門外に立ち止まり、拝礼する場面が登場します。滝口丈助は、これから決闘に向かう様子で、姿を隠してこれを見つめる平蔵は緊張します。

 

南蔵院 東京都豊島区高田1-19-16
都電荒川線面影橋電停から約200m 徒歩約3分

 


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