江戸観光案内

古地図を片手に江戸の痕跡を見つけてみませんか?

麻布一本松

2014-01-25 | まち歩き

麻布一本松は、麻布の暗闇坂、大黒坂、一本松坂が交わるところに立つ松の木です。古地図[1]に目を凝らすと、一本松が立つ位置に小さな白丸を付して「一本松」と記されており、周辺には「一本松町」の文字も見えます。前出の「一本松坂」の名の由来は、当然ながらこの一本松に因みます。


一本松は江戸名所図会にも描かれており、その姿は大変枝振りの良いものです。傍らには茶店が在り、牛車を引く人や棒手振り、駕籠かき、僧侶といったたくさんの人がその前を往来しています。現在のように高い建物が無かった大昔には、一本松はこの地のランドマークであり、これら道行く人にとっては格好の目印であったことでしょう。


現在の松は枯れたり、消失したりした後に植え継がれた何代目かの松です。かつては、この地から250メートルほど南に在る氷川明神(現氷川神社)の御神木でもありました。


一本松は、鬼平犯科帳(二十一)「麻布一本松」(池波正太郎著、文藝春秋)の中に登場。火付盗賊改方の同心・木村忠吾が一本松の茶店に入り、酒を頼むと、一人の女が寄ってきて、数日前に忠吾が懲らしめた浪人のことでお礼をしたいと言います。妻がいるにも関わらず、浮気心を抑えられない忠吾は、その女と数日後に会う約束をしますが・・・。


一本松が登場するその他の作品

  • 鬼平犯科帳(九)「本門寺暮雪」、池波正太郎著、文藝春秋

[1]麻布広尾辺絵図 嘉永二年(1849年)


麻布一本松 東京都港区元麻布1-3-37

東京メトロ南北線・都営大江戸線麻布十番駅から約450m 徒歩約6分


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一本松と一本松坂


暗闇坂

2014-01-11 | まち歩き

暗闇坂は麻布に在る坂の一つで、前回御紹介した鳥居坂を下り、真っ直ぐ行った先に在ります。名前の由来は、昼間でも暗くなるほどに樹木が生い茂っていたためだと言われています。一方通行の幅の狭い道路で、坂下から見て右側が高い崖になっているので、ここに木々が覆いかぶさるように生えていたのならば、確かに昼間でも薄暗く、「暗闇」のようであったかもしれません。


暗闇坂は、鬼平犯科帳(二十)「助太刀」(池波正太郎著、文藝春秋)の中に登場しています。知人の見舞いに出掛けた平蔵は、その帰路で、かつて同じ道場に通った横川甚助と再会します。甚助と共に暮らすお峰は、市口又十郎という浪人に母を殺害されたと甚助に告げ、甚助に敵討ちを頼みます。その市口又十郎は暗闇坂の下に道場を構えています。
暗闇坂とこの道場は鬼平犯科帳(二十一)「麻布一本松」、(二十二)「特別長編迷路」にも登場しています。


暗闇坂下 東京都港区麻布十番2-5-12

都営大江戸線麻布十番駅から約250m 徒歩約4分


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