江戸観光案内

古地図を片手に江戸の痕跡を見つけてみませんか?

中坂

2013-07-20 | まち歩き

九段坂 と平行に、九段坂の一つ北の通りに在る坂が中坂です。もう一つ北に冬青木坂(もちのきざか)が在り、九段坂と冬青木坂の中間に在る坂なので、「中坂」といいます。急な坂道で、歩いて上るのはややしんどいのですが、江戸時代には、隣の九段坂は今よりもずっと急で、階段状に段差も付けられていたため、荷車を通すことが出来ず、荷車は、この中坂を通行していました。江戸名所図会で中坂と九段坂の絵を見ると、確かに中坂には荷車が描かれていますが、九段坂には描かれていません。


現在は、靖国通を通す九段坂の方が圧倒的に人通りや交通量の多い坂ですが、江戸時代には、道の片側が江戸城のお堀で、片側にしか町屋が並んでいなかった九段坂よりも、両側に町屋が並んでいた中坂の方が賑やかだったそうです。


みをつくし料理帖シリーズ(高田郁著、ハルキ文庫)の中で、主人公・澪が働く料理屋「つる家」の常連客として登場する、口の悪い戯作者・清右衛門の住まいは、この中坂に在ります(「俎橋から」(花散らしの雨に収録))。また、澪が料理に好んで使う、「流山の白味醂」を売る酒屋も、この中坂に在ります(「銀菊」(花散らしの雨に収録))。


中坂 東京都千代田区九段北1-13-6

東京メトロ東西線 九段下駅からすぐ 徒歩約1分


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九段坂

2013-07-06 | まち歩き

前回御紹介した俎橋から靖国通を西へ上る坂が九段坂です。かつてこの坂に沿って江戸城のお役人が住む九段になった長屋が在り、これを九段長屋と呼んだことが、九段坂の名前の由来です。当時の坂は現在よりもずっと急で、長屋だけでなく、坂そのものにも階段状に段が付けられていました。


現在は、九段坂を上ると、左手に日本武道館が在ります。ここで行われた入学式や卒業式、あるいはコンサートの思い出とセットで九段坂を思い出す人も、きっといることでしょう。爆風スランプの名曲「大きな玉ねぎの下で」の歌詞の中にある「玉ねぎ」は、武道館の屋根のてっぺんにある擬宝珠(ぎぼし)を指しているそうなので、「♪九段下の駅を降りて坂道を~」の一節で登場する坂は、九段坂と考えるのが自然でしょう。


一方、坂を上って右手には、靖国神社が在ります。有名な神社の一つですが、創建されたのは明治二年(1869年)と比較的新しい神社なので、古地図には載っていません。境内には、気象庁が長年観察している桜の標準木が在り、この桜が花開くと、東京で桜が開花したことになります。


みをつくし料理帖シリーズ(高田郁著、ハルキ文庫)の主人公・澪が働く料理屋「つる家」は、最初は神田明神の近くに在りましたが、不幸な災難に遭い、そのせいで俎橋近くに越してきます。「つる家」は、川筋から数えて三軒目の間口三間(約5.4m)程の二階家で、九段坂下に面して建っています。(「俎橋から」(花散らしの雨に収録)、「小夜しぐれ」(小夜しぐれに収録)他)


九段坂(九段下交差点) 東京都千代田区九段北1丁目

東京メトロ半蔵門線・都営新宿線 九段下駅からすぐ 徒歩約1分


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俎橋から望む九段坂