(原題:Zwartboek-----Black Book)
----もう、どうしてこういう映画に誘うのニャ。
フォーンは、血がたくさん出たり、
残酷なシーンが多い映画はダメなの知ってるでしょ?
なぜ、見せるの?
第一、なんでこの監督、こんな映画作るのよ?
「う~ん。そうかなあ。
ぼくはとてもオモシロかったけどね。
監督のポール・バーホーベンが23年ぶりに
故国オランダに戻って作った-------。
それだけで興味津々じゃない。
日本で言えば、たとえば清水崇がハリウッドで成功して
以来、日本では全然作らなかったとする。
それが四半世紀ぶりに日本で大作を手がけたと言うようなもんだ。
しかも描くのが、第二次世界大戦中のレジスタンスの内幕。
ナチのスパイとなった女性がナチの将校を愛してしまい、
しかも敵の罠にハマってレジスタンス側には裏切り者と思われてしまう。
果たしてそれは?
いわゆる『アンフェアなのは誰だ?』(笑)」
----う~ん。確かにミステリー・サスペンスの要素はあったけど、
あの過激な描写が、もうフォーンにはダメ。
涙出てきちゃった。
「もとよりバーホーベンと言う監督は、
過激なエロス&バイオレンスをハリウッドに持ち込んだ張本人。
“抑制”だの、“見せずに想像させる”だのと言うこととはまったく無縁。
でも、今回は内容が内容だけに、
少しは抑えた演出をするんだろうと…。
ところが、その予想は甘かったね。
エロス&バイオレンスだけじゃない。
ヒロインがナチの加担者との汚名を着せられて
汚物を頭から書けられるシーンなんて
囃し立てる野次馬まで揃え、
まるでテリー・ギリアム=悪夢の世界。
彼らの上には聖歌隊までいるし…。
でも、その見せる→魅せるこそがバーホーベンの持ち味。
個々の深い心理描写の掘り下げではなく、
そこで起こっている事象の積み重ねで映画を構築していく。
バーホーベンは映画を“芸術とビジネスが見事に交差する場”と捉え、
究極の目的は、“相反する両者をうまく結びつけること”だと言う。
だが、彼によるとそれを達成できたのは
デビッド・リーンしかいないということになる」
----ニャるほど。
『ドクトル・ジバゴ』のような叙事詩的大作は、
ドラマを描くことで目一杯で、
細かい心理の綾を入れる余地はないものね。
「うん。この映画もそう。
ヒロインは敵の将校に惹かれて愛し始めるんだけど、
そこが緻密に描かれているというわけではなく、
そうなって当たり前と言う感じで強引に進んでゆく。
でもその強引さが、ある意味ぼくにとっては快感だったね」
----う~ん。確かによくできたお話だとは思うけどね。
インシュリンとチョコレートのくだりとか、
伏線もうまく張られているし。
ただ、あとで振り返ると真犯人=裏切り者が
あの男と言うのは
けっこう無理がなかった?
「だから、その強引さがいいんだって(笑)」
----でも、「なぜこんな映画を作るのか?」に答えてないよ。
「それはラストを観て分かんなかった?
1945年のラストショットでヒロインは言う。
『やっと静かになった。永遠に続くのかと思った』-----
でもそれから11年後の現実は?」
----あっ、そうか。
だから、あそこのカットで終わったんだ。
つまり悲劇はまだ続き、
人類は過ちを繰り返していると言うことか…。
でもこの映画観ると、人間はダメだニャ。
自分が生き残るためなら、顔色一つ変えずに人を陥れられる。
しかも表面的に見ただけじゃ、その人の本質は分からないんだから
始末に負えない。
「そうなんだよね。
しかもその腐臭漂う行為が行なわれるのは
戦争と言う極限状況の時だけじゃない。
いまの社会でも根強く生き残っているばかりか、
競争原理を持ち上げる<勝ち組負け組>の名の下に、
それを容認する空気さえあるのが恐い。
そう言う意味でも、
これは十分に現代への警鐘になりうる作品だと思うよ」
(byえいwithフォーン)
フォーンの一言「フォーンは恐くて何度も目を背けたニャ!」
※セバスチャン・コッホ、今年3本目だ度
人気blogランキングもよろしく
※画像はオランダ・オフィシャルの壁紙です。
----もう、どうしてこういう映画に誘うのニャ。
フォーンは、血がたくさん出たり、
残酷なシーンが多い映画はダメなの知ってるでしょ?
なぜ、見せるの?
第一、なんでこの監督、こんな映画作るのよ?
「う~ん。そうかなあ。
ぼくはとてもオモシロかったけどね。
監督のポール・バーホーベンが23年ぶりに
故国オランダに戻って作った-------。
それだけで興味津々じゃない。
日本で言えば、たとえば清水崇がハリウッドで成功して
以来、日本では全然作らなかったとする。
それが四半世紀ぶりに日本で大作を手がけたと言うようなもんだ。
しかも描くのが、第二次世界大戦中のレジスタンスの内幕。
ナチのスパイとなった女性がナチの将校を愛してしまい、
しかも敵の罠にハマってレジスタンス側には裏切り者と思われてしまう。
果たしてそれは?
いわゆる『アンフェアなのは誰だ?』(笑)」
----う~ん。確かにミステリー・サスペンスの要素はあったけど、
あの過激な描写が、もうフォーンにはダメ。
涙出てきちゃった。
「もとよりバーホーベンと言う監督は、
過激なエロス&バイオレンスをハリウッドに持ち込んだ張本人。
“抑制”だの、“見せずに想像させる”だのと言うこととはまったく無縁。
でも、今回は内容が内容だけに、
少しは抑えた演出をするんだろうと…。
ところが、その予想は甘かったね。
エロス&バイオレンスだけじゃない。
ヒロインがナチの加担者との汚名を着せられて
汚物を頭から書けられるシーンなんて
囃し立てる野次馬まで揃え、
まるでテリー・ギリアム=悪夢の世界。
彼らの上には聖歌隊までいるし…。
でも、その見せる→魅せるこそがバーホーベンの持ち味。
個々の深い心理描写の掘り下げではなく、
そこで起こっている事象の積み重ねで映画を構築していく。
バーホーベンは映画を“芸術とビジネスが見事に交差する場”と捉え、
究極の目的は、“相反する両者をうまく結びつけること”だと言う。
だが、彼によるとそれを達成できたのは
デビッド・リーンしかいないということになる」
----ニャるほど。
『ドクトル・ジバゴ』のような叙事詩的大作は、
ドラマを描くことで目一杯で、
細かい心理の綾を入れる余地はないものね。
「うん。この映画もそう。
ヒロインは敵の将校に惹かれて愛し始めるんだけど、
そこが緻密に描かれているというわけではなく、
そうなって当たり前と言う感じで強引に進んでゆく。
でもその強引さが、ある意味ぼくにとっては快感だったね」
----う~ん。確かによくできたお話だとは思うけどね。
インシュリンとチョコレートのくだりとか、
伏線もうまく張られているし。
ただ、あとで振り返ると真犯人=裏切り者が
あの男と言うのは
けっこう無理がなかった?
「だから、その強引さがいいんだって(笑)」
----でも、「なぜこんな映画を作るのか?」に答えてないよ。
「それはラストを観て分かんなかった?
1945年のラストショットでヒロインは言う。
『やっと静かになった。永遠に続くのかと思った』-----
でもそれから11年後の現実は?」
----あっ、そうか。
だから、あそこのカットで終わったんだ。
つまり悲劇はまだ続き、
人類は過ちを繰り返していると言うことか…。
でもこの映画観ると、人間はダメだニャ。
自分が生き残るためなら、顔色一つ変えずに人を陥れられる。
しかも表面的に見ただけじゃ、その人の本質は分からないんだから
始末に負えない。
「そうなんだよね。
しかもその腐臭漂う行為が行なわれるのは
戦争と言う極限状況の時だけじゃない。
いまの社会でも根強く生き残っているばかりか、
競争原理を持ち上げる<勝ち組負け組>の名の下に、
それを容認する空気さえあるのが恐い。
そう言う意味でも、
これは十分に現代への警鐘になりうる作品だと思うよ」
(byえいwithフォーン)
フォーンの一言「フォーンは恐くて何度も目を背けたニャ!」
※セバスチャン・コッホ、今年3本目だ度
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※画像はオランダ・オフィシャルの壁紙です。
『ブラックブック』はバーホーベン節炸裂の素晴らしい作品でした。それに対して映画会社の宣伝の仕方に問題がある様に感じます。コピーに『シンドラーのリスト』『戦場のピアニスト』を取り上げ、戦争文芸作の匂いを漂わせているのが駄目な気がします。本作は戦争を背景にした1級のサスペンス作と思うのですが。
この映画のコピー、微妙でしたね。
ぼくなんか、
バーホーベンがいわゆる「良心的作品」を作ることはありえない-----
と、どんな映画になっているのか、
かえって期待を煽られました。
結果、文芸大作とは正反対。
ぼくは楽しむことができましたが、
『戦場のピアニスト』を期待した人には
大不評だったことは想像に難くありません。
これでヒットすれば宣伝サイドも
「してやったり」なのでしょうけども……。
いいなぁ。
バーホーベン ファンなんですよw
狂気の愛だったでしょうか、タイトル忘れちゃったけど、ルトガーハウアーの出ていたの。
友達がルトガーファンで見せられたんですが、こんなのあるのか、って。
で、ロボコップの悪趣味ぶりとかスターシップトゥルーパーのアメリカ嫌いぶり、ショーガールの底意地の悪さなどなど、かなり愛しておりますw
なのでこの作品観たいのですが、こういう作品はあまり後悔されないんですよね・・・。
いいな 日本って。
バーホーベン、いいですよね。
この監督の映画で飽きると言うことはまずないです。
ラズベリー賞を受賞した『ショーガール』も
そのエロチシズムをたっぷり堪能しました。(笑)
オーストラリアでの公開予定がないのですか?
それは残念。
今回はなんと“女囚刑務所”もののエッセンスまで盛り込まれ、
またまた良識派の人々が顔をしかめる作品となっています。
エロスとバイオレンスに風格まで加わって、お腹一杯でした。
この人の映画ってちょっと達観してるというか、人間を突き放している様な所がありますが、この作品ではそれが生きていましたね。
ノラネコさんのところで知りました。
俊英と思っていたバーホーベンも、
もう68歳なんですね。
この分だと、
フェリーニのように
老いてもバイタリティたっぷり。
枯れない監督を貫き通しそうですね。
あっ、ティント・ブラスは別です(笑)。
たまにしかコメントを残さないでTBだけで失礼してます。
当地では最近、やっと公開になったので、観て来ました。
『トータル・リコール』しか観てないので、この監督の作風も何も知らず、
社会派大河ドラマ(?)なのかな…と思ってたのですけど
どんどんお話が進む、娯楽サスペンスなのでしたね。
人物の描き方とか、巧い伏線とか、くっきりした映像とか、
突き放したようなメッセージとか・・・
いろんな意味で面白い作品でした。
ぼくもこの映画を社会派大作と勘違いしていました。
ただ、悠雅さんとは逆に
これまでの彼の映画を観ていたことから、
「なぜバーホーベンが?」と思っていました。
でも観てみて納得。
これまでに作られたヒューマニズム映画からは
遥かに離れた地点で、
それでもしっかりと「戦争と人間」の本質を見据えた
作品となっていました。
やはりバーホーベンはオモシロいです。
ヴァーホヴェン、良くやりましたね。とにかく面白い社会派ドラマに仕上げていますよね。
それにしてもカリス・ファン・ハウテンは、凄い・偉い・可愛い!彼女の今後の更なる飛躍が楽しみです。
おっしゃる通り、裏切り者があの男と言うのは無理があったかも・・・
この映画、いま思い返してもよくできています。
だれもがやるアプローチとは異なる方法で
あの時代を描ききり、
完全に自分のものとしています。
バーホーベンの次回作が
本当に楽しみです。