ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『この道は母へとつづく』

2007-08-29 23:10:42 | 新作映画
----この映画って想像ついちゃうよね。
お母さんを訪ねて、孤児院の子供が旅をするというお話でしょ。
「確かにそれはそうなんだけど、
観る前に思っていたハートウォーミングな作品とは
まったく違っていたね。
この映画の舞台はロシア。
そこで育てられる子供たちは、
親に捨てられた孤児ばかり。
貧しく暮らす彼らの希望は、
裕福な外国人の養父母に引き取られていくこと。
6歳の少年ワーニャは、幸運にもイタリア人夫婦に気に入られ、
養子として院を出て行くことになる。
しかしある日、すでに養子として引き取られていった友だちの母親が
孤児院に突然現れたことで、
彼は自分を生んでくれた母親の存在を意識し始めるんだ」

----そこでワーニャは“母を訪ねて”旅に出るわけだニャ?
「うん。
でも周りはそれを許さないんだ。
というのも、ここにはある“ビジネス”が横たわっている。
ワーニャに逃げられるということは、
養子縁組の仲介業者であるマダムにとっては自分に入ってくる斡旋料が、
孤児院にとっては手数料が入らないことを意味する。
そこでマダムの執拗な追跡が始まる。
このサスペンスが加わることで、
映画はタイトルからイメージされるような叙情性とは
まったく異なる方向へと走り始めるんだ」

---ニャるほど。
「現在のロシアの社会的問題をえぐり出しながら、
映画は一方で戯画的な様相をも見せる。
というのも、このマダムの描き方が少しマンガチック。
運転手兼用心棒、そして愛人の男をアゴで使いながら
一緒にワーニャを追いつめるんだけど、
いつもあと少しのところで逃げられてしまう。
まるでトムとジェリーみたいな感じ」

---あらら。
「でもね。
この映画を観て
まず頭に浮かんだのは『求めよさらば得られん』の言葉。
つまり夢を叶えるには強い意志が必要ということ。
このワーニャは、お母さんに会いたい一心で、
お金をごまかしたり、文字を覚えたり、嘘をついたり。
さらには自分を守るために
あるとんでもない行動に出るんだ。
子供ながらにしてハードボイルド。
それというのも、
この孤児院には院を陰で牛耳る不良グループがあって、
ワーニャもその中の一員なんだね。
彼らの厳しい規律の中で生きてきたワーニャだからこそ、
この一人っきりの旅もなし得た気がするな」

---う~む。
「映画は、ワーニャが列車に乗るところ、
つまり院を飛び出してからが俄然オモシロくなる。
そしてだれもが驚かずにはいられない衝撃のシーン!-----
その後に続く
思わず頬が緩むラストとともあいまって
これはぼくにとって心に残る映画の一つとなったね」


     (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「これは<生きる才能>というヤツだニャあ」ぱっちり

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは (カオリ)
2007-11-16 21:19:47
なかなかずっしり来るお話でした。
ワーニャの大人のような行動が哀しくなります。
ロシアのああいった現状も知らなかったですし、事実にインスパイアされてると言うこともあって、ショックでした。
返信する
■カオリさん (えい)
2007-11-17 12:05:30
こんにちは。

これはよくあるお涙ちょうだい映画とは一線を画した
魅力に富んだ一編でした。
まず主人公の少年の生きざまがハードボイルドなところ。
クライマックスの、あの“瓶”は凄まじい衝撃でした。
返信する
TB&コメント ありがとうございました。 (いとっち)
2008-01-23 18:23:26

「もし自分が居なくなってママが迎えにきたら...」
思いはとても子供らしいのに...
最後の笑顔に行き着くまでの行動がとても男らしくて。
ワタシも「心に残る映画」でした。
返信する
■いとっちさん (えい)
2008-01-24 23:03:45
こんばんは。

この映画、そのタイトルが邪魔してしまっている気がします。
観ると、ほんとうによくできた映画。
間違っても、お涙ちょうだいじゃないです。
もったいないなあ。
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