ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ファニーゲーム U.S.A.』

2008-10-06 22:16:32 | 新作映画
(原題:Funny Games U.S.)


「いやあ、恥ずかしながらこんなこともあるんだな」
----ニャに?
恥ずかしいのはいつもじゃニャい。
「言うなあ。フォーンも(笑)。
実はこの『ファニーゲームU.S.A.』という作品、
ハリウッドにおける
ミヒャエル・ハネケ監督のセルフ・リメイク。
ところがぼくはオリジナルを観ている“らしい”ことに
ようやく気づいたんだ」

----どういうこと?
その“らしい”って?
「ぼくがミヒャエル・ハネケを“意識”したのは意外と遅く、
『隠された記憶』の頃。
でも、そのときにはもうすっかり
彼は伝説的な監督になっていた。
『ファニーゲーム』も
公開当時は“衝撃作”として紹介されたはずなんだけど、
そういう表現ってあまりにも多いから、
実は流してしまっていたんだね。
まあ、『ちょっと変わった映画を作る監督だな』という程度で…。
まさか、あの作品が
今をときめくミヒャエル・ハネケのだったとは…」

----つまり、このハリウッド・リメイクを途中まで観て
やっとオリジナルを観ていたことに気づいたってワケだ。
それは確かに恥ずかしい。
「まあ、そう言わないでよ。
この映画、プロットは実にシンプル、
湖畔の別荘で夏のバカンスを楽しむためにやってきた家族を
純白の手袋と白いポロシャツに素足の若いふたりの青年が襲うという
ただそれだけのお話。
でもその描き方がスゴいんだ。
最初、青年の一人が鱗家の人に頼まれたと卵をもらいにくる。
よころがそれをわざと落とし、
代わりにもらった卵も犬に吠えられたと言ってまた落とし…。
そうやって、じわりじわり家族に不快感を与えていく。
そのときのナオミ・ワッツ演じる主婦との<距離>が絶妙。
人と人の距離は、
ある程度は離れていないと
相手に不安を与えるということを改めて感じたね。
まあ、そういう形で彼らは
最初はじわ~っと、
そして急に凶暴に
いつしか家族を自分たちの支配下においてしまう」

----その青年たちは最初からその家族を狙っていたの?
それとも、もともと知り合いだったというわけ?
「いやいや、
彼らの最初の標的は
翌日にゴルフを約束している隣家の家族。
その写し方というのが、
ナオミ・ワッツとその夫を演じるティム・ロスたち家族からの目線。
遠くからしか写らないんだけど、
なぜか不穏。
この空気感が実にうまい」

----前の作品でもそうだったわけ?。
「うん。そうなんだ。
というのも、
最初に『もしかして?』と思ったのが
そのストーリーではなく、この主観ショット。
あれっ、どこかで観たような……ってね。
その他にもたとえば
途中からまったく姿を見せなくなる隣人、
あるいはナオミ・ワッツが逃げ出して
外の車に助けを求めようとするシーン、
そして湖でのとんでもないカタの付け方と、
それに続くありえないエンディング。
いずれのシークエンスも
観ているうちにふつふつと
当時の記憶が甦ってきた。
後でプレス読んだら、
どうやらショットまで完璧にリメイクしたようだ」

----また、ニャンでそんなことしたの?
どうせなら新しく作ればいいのに。
ハリウッドだから予算もあるわけでしょ?
「う~ん。
同じフレームにオリジナル版とは違うキャストを入れる-----。
そこから生まれるオモシロさに興味を抱いたようだね。
監督が舞台演出の経験者だと知れば、
それも分からないでもないけどね」

----でも、話はハリウッド向きじゃないような…。
「ところがこの映画、
いわゆる“殺し”のシーンを
フレームに入れてはいない。
派手に残酷なシーンを見せることで
直截的な恐怖を観客に与える昨今のホラーとは
いわば対極にあると言えるだろうね。
そうそう、『隠された記憶』もリメイクされるらしいけど、
こちらはハネケはノータッチ。
この作品『ファニーゲーム』以外の自分の映画は
決してリメイクしないと
本人は、そう言っているみたいだよ」


       (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「理由なき殺人は怖いニャ」もう寝る

※しかし、それにしてもナオミ・ワッツはハマりすぎだ度

人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー 

ポスター画像はフランス・オフィシャル/ダウンロードサイトより。


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは☆ (dai)
2009-01-05 07:00:06
>『ファニーゲーム』以外の自分の映画は
決してリメイクしない

やっぱりハネケにとって『ファニーゲーム』は
特別だということなんですね。

それにしても膨大な量の作品を知っているえいさんが、”観ているらしい”なんて経験をする作品があるんですね。でもえいさんぐらい映画を観ていたら忘れるものも出てくるかw
■daiさん (えい)
2009-01-05 11:30:56
あらあら。

いま、見直すと、バカ正直に
ヤバいこと書いていますね。

前にも一度、別の作品で
東京国際映画祭で観ていながら、
試写に行き、
「あれっ、これ観てる」と気づいた映画もありました。

この『ファニー・ゲーム』は
ぼくにとっては不快感を与えられた作品で、
それがまさか
ここまで伝説化されたハネケ作品と同一のものとは、
思いもよらなかったということでしょうか。

と、ちょっと言い訳。
こんにちは (なな)
2009-07-05 12:33:54
私もオリジナルを観ていたので
オリジナルと寸分たがわぬショットを
違う俳優さんが演じている・・・という楽しみ方ができました。
不快感や嫌悪感は2度目だと初見ほどは強くなく。
こんな不快感に慣れちゃうというのも考え物ですが。
私はハネケはどちらかというと嫌いな監督さんですが
この「ファニーゲーム」だけは繰り返し観たいと思う力がありますね。
もちろん人にお勧めはしないんですが・・・。
■ななさん (えい)
2009-07-06 18:56:46
こんばんは。

ぼくがハネケで繰り返し観たいのは、
『隠された記憶』です。

でも、あれも鶏の例のシーンのように
かなり挑発的な残酷シーンが…。

まあ、普通の生理感覚ではついていけない監督ですね。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。