しろくま

軟い雑感、とりとめなく。

八朔の雪

2017-07-09 | 本棚
ヌッポロ一番のはるか昔、江戸時代の小料理屋「つる屋」

黒木華(NHKドラマ)逆引き。全十巻のうちの一巻目
「神田御台所町で江戸の人々には馴染みの薄い上方料理を出す「つる家」。店を任され、調理場で腕を振るう澪は、故郷の大坂で、少女の頃に水害で両親を失い、天涯孤独の身であった。大坂と江戸の味の違いに戸惑いながらも、天性の味覚と負けん気で、日々研鑽を重ねる澪。しかし、そんなある日、彼女の腕を妬み、名料理屋「登龍楼」が非道な妨害をしかけてきたが・・・・・。料理だけが自分の仕合わせへの道筋と定めた澪の奮闘と、それを囲む人々の人情が織りなす、連作時代小説の傑作ここに誕生!」
と、カバーにある。
うまそうだから、寄ってみた。

江戸と上方との違い。
味付けの違い、流し台の低さ…武士と職人の町と商人(あきんど)の町の違い
「粋か実か?」気風、気質の違い。
初物好きの江戸っ子が煙たがる戻鰹、猫またぎで、賄い風「はてなの飯」
(ググればいい今日と違って、苦労にあふれ、
だからこそ、工夫にあふれていたのかもしれない)。

江戸時代だから当然、一日、暦は旧い方。
一日、季節の移ろい
花見、月見やお稲荷さんに供える草花ばかりでなく、
早もの、旬の季節感はこっちが上。
酷い暑さ、寒さの年があるにしても
季節感の無い「異常気象」の時代の私には羨ましい*。

季節折々の料理だけでなく、人情味もあふれている。
“下がり眉”澪。
つる屋店主「こいつはいけねえ、いけねえよう**」種市
常連で口の悪い浪人、小松原
町医者「口から摂るものだけが体を作る」源斉。
長屋の隣のおりょう夫婦と太一
もと天満一兆庵の女将で澪をわが子のように思う芳の大阪弁も、聞きやすい(読みやすい)
…***

料理対決/番付だの
時間が限られているテレビドラマは
おいしいとこどりだが、
そうでない、中落ち、粗(あら)のストーリーにも味がある。

今日日すっかり悪い響きがついてしまった感のある忖度とか
心許り(こころばかり)という言葉は、
下衆な政治屋の話でなく
もともとはこの話の方が合うし、深みも感じる。

小料理屋(と澪)の話ながら
「雲外蒼天」、いい言葉だと思った。

巻末(付録)にはレシピ
一粒符(御守り)ならぬ一粒で二度おいしい

おまけながら
はんなり、さがり眉な
卯月みゆきの装画もいい。

八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)
クリエーター情報なし
角川春樹事務所


*酷暑、酷寒でなく「異常」だと気象も否定されている気がしてならない。
**現代語なら「ヤバい」「激ヤバ」だろうか?
***登場人物の好みは読者それぞれだろうが
個人的には
小松原や源斉よりも、
扇屋の料理人で澪の料理をあさひ大夫(野江)に運ぶ又次と
戯作者清右衛門。

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