ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)

2011年05月07日 | 周産期医学

persistent pulmonary hypertension of the newborn

出生後の適応不全症候群で、出生後の肺動脈の拡張が不十分なために起こる肺高血圧症の結果、動脈管と卵円孔を介する右→左シャントによるチアノーゼが続く疾患である。

※ 以前は胎児循環遺残症(PFC: persistent fetal circulation)と呼ばれていた。

Pphn_2

PPHNの病態生理:
・ 肺動脈の低形成、血管壁筋層の肥厚、肺動脈の感受性亢進が素因としてあり、新生児仮死、胎便吸引症候群、低酸素症などが誘因となり、肺血管抵抗が増大しPPHNとなる。
・ PPHNは、正期産児または過期産児に生じる。

PPHNの臨床症状:
・ 呼吸障害の程度に比べてチアノーゼが著明である。
・ 新生児仮死、胎便吸引症候群、肺低形成などに続発することが多い。
・ 動脈管を介して右→左シャントした血液が流れる下肢にチアノーゼがより強くみられる(differential cyanosis)。
・ 三尖弁逆流による心雑音を聴取する。

PPHNの診断:
先天性心疾患によらない右→左シャントの存在により診断される。したがって、心臓超音波検査は診断のために必須である。

PPHNの治療:
・ 基礎疾患に対する治療・酸素投与とアシドーシスの補正
・ 一酸化窒素(NO)吸入療法
 【選択的に肺動脈を拡張させる】
・ 患児にストレスをかけない管理
・ 難治性の場合は、ECMO(体外式膜型人工肺)が用いられる。

cf. 先天性チアノーゼ型心疾患
・ 大血管転位症
・ 総動脈幹症
・ Fallot四徴症の重症型
・ 三尖弁閉鎖症
・ 総肺静脈還流異常


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