tetralogy of Fallot (ToF)
四つの形態的特徴:
①肺動脈狭窄、
②心室中隔欠損、
③大動脈の心室中隔への騎乗、
④右室肥大
日本では先天性心疾患の約14%を占める。
● 血行動態
強い右室流出路狭窄と大きい心室中隔欠損があるため、右室からの血液が大動脈に流れ、動脈血の脱飽和とチアノーゼを生じる。
● 症状
典型例では、生後数か月後より徐々にチアノーゼが出現する。体重増加は正常である。チアノーゼは成長するにしたがって次第に増強する。生後3カ月ころからチアノーゼ発作(低酸素発作)が出現する。肺動脈狭窄の程度によってチアノ-ゼの程度はさまざまで、人によってはほとんどチアノ-ゼのでない場合もある。
歩行などの体動時に蹲踞姿勢(squatting)をとる。これによって下肢から戻ってくる酸素飽和度の低い静脈圧が減少し、大腿動脈を圧排することで体血管抵抗が増加し、肺血流が増えて動脈の酸素飽和度が上昇する。
● 胸部X線所見
① 特徴的な木靴型(boot shape)像
② 肺血管陰影の減少
③ 20~30%程度に右側大動脈弓
● 心エコー
①大きな心室中隔欠損
②右室流出路狭窄部位の診断(2D)と程度の診断(ドプラ法)
③大動脈の心室中隔欠損部への騎乗
④合併心奇形の診断:ASD、ECD、右側大動脈
●合併症
①脳血管障害
②脳膿瘍
③感染性心内膜炎
● 22q11.2欠失症候群
22q11.2欠失症候群は、第22番染色体長腕q11.2領域の微細欠失を原因とするもので、複数の臓器の発生異常や奇形を特徴とする。本症候群においては、①心血管異常、②特有の顔貌、③胸腺低形成、④口蓋裂、⑤低カルシウム血症、という5つの主要症状を呈する。
心疾患として、Fallot四徴症、総動脈幹症、心室中隔欠損を伴う肺動脈弁閉鎖、大動脈弓離断、右側大動脈弓、右側肺動脈の大動脈起始などを伴っている。
● 治療
1. 内科的治療
① 鉄欠乏性貧血の改善
② 低酸素発作の治療
③ 感染性心内膜炎の予防
2. 外科的治療
①BT(Blalock-Taussig)シャント術(乳児期)
鎖骨下動脈と肺動脈の間を人工血管につなぐ手術(modified BT)。チアノーゼ性心疾患に対する姑息手術で、肺血流量を増やし左室の発達を促す。
②根治手術
心室中隔欠損孔閉鎖と右室流出路形成術を行う。
従来は1~2歳で行われてきたが、最近は乳児期に行う施設もある。
③バルーンによる肺動脈拡張術
重症例に対して乳児期に行う施設がある。
● 予後
乳児期にチアノーゼ発作で死亡する例もあるが、外科的治療を受けなくても40~50歳くらいまで生存する例もある。高度に日常生活や運動の制限を必要とする症例もある。青年期に再手術が必要となる症例も存在する。