気まぐれ徒然かすみ草ex

京都に生きて短歌と遊ぶ  近藤かすみの短歌日記
あけぼのの鮭缶ひとつある家に帰らむ鮭の顔ひだり向く 

空の家族 和田守玖子 現代短歌社

2023-02-09 12:31:11 | 歌集
耳内に壊れたラジオ一つあり少女の頃より夕ぐれに鳴る

お隣りの改装工事はじまりて怒り出したり聞こえるひとは

唇を読めずにわれは立ちつくす補聴器センターみなマスクなり

うず高く積りし落葉舞い上り空の家族が呼ぶ声がする

亡き母が少女となりて吾(あ)とふたりお遍路に行く春の夜の夢

空にいる笑顔の父母に会いに行く雲にかかった虹を登りて

向かい合う鏡のように知っているアサミのなかの少女のわたし

少しずつ物を減らして春の夜に行方くらます我の退職

大いなる宇宙(そら)とつながり踊る時プルメリアの花闇にゆれおり

もう足は動かないけど指はあるハンドフラでも舞台に立てば

(和田守玖子 空の家族 現代短歌社)
*****************************
見知らぬ方から送られてきた歌集。2020年11月作歌開始とのことで驚いた。短期間にたくさんの歌を作った。質も高い。楠誓英さんのアドバイスもあり、立派な一冊となった。表紙の絵も自作。七十七歳でもこんなことができたのかと感心する。内容をみると、難聴があり、病があり、辛い思いをなさってきた。学校に勤務中の、生きづらい生徒への目がやさしい。頑張り屋さんという言葉を思う。境遇に負けない生き方に感心し見習いたいと思う。