気まぐれ徒然かすみ草ex

京都に生きて短歌と遊ぶ  近藤かすみの短歌日記
あけぼのの鮭缶ひとつある家に帰らむ鮭の顔ひだり向く 

鱧と水仙50号

2018-02-27 18:59:12 | 鱧と水仙
鱧と水仙50号が出ました。

25年間の歴史をふりかえる年表とともに、
作品30首「地図のない旅」を出しています。

現代短歌3月号、作品時評を書いています。

併せてお読みいただければ、幸いです。

三日月が小舟 古賀大介 

2018-02-20 23:35:46 | 歌集
窓の灯にそれぞれ暮らしある事をほつほつ思いほつほつ歩く

耳たぶのたぶがぽろっと取れそうで市役所前で飲み込んだガム

靴下を穿く脱ぐなどを繰り返しつつちちぷぷと一年は過ぎ

「楽しめ」とブロッコリーが言うのです熱いシチューの中で何度も

コンビニを出でて小暗き道ゆけば「温めますか」の「か」が冷えてゆく

テーブルの下に父、母、われ必死にうずくまりたり「よかね、大丈夫ね、」

熊本城天守閣の瓦ぼろぼろにああぼろぼろに崩れ落ちたり

駅前の銀行のドアは開いていてしゃきしゃき下ろす五万円ほど

三日月が小舟のように浮かびたる夜を仄かな灯火とせり

葉にしずく手の中に風一点の抒情は深く呼吸しており

(古賀大介 三日月が小舟 六花書林)

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短歌人所属の古賀大介の第一歌集より。熊本在住。
「ほつほつ」「ちちぷぷ」「ぼろぼろ」「しゃきしゃき」など、擬態語を多用している。音に引かれて、次の音を導く。熊本地震の歌は、方言の話し言葉で臨場感を出す。