Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

11歳のハムレット

2024年05月10日 06時30分00秒 | Weblog
 鋼太郎さんは、「シェイクスピアは11歳で夭折した息子:ハムネットのために「ハムレット」を書いた」というが、私もこの解釈は正しいと思う。
 その最大のヒントはもちろん名前だが、それ以外にも、シェイクスピアが書いた「ソネット」を読むと、彼の意図が推測出来るように思う。
 なお、小田島恒志さんによれば、当時「劇作家」という言葉はなく、シェイクスピアは「詩人」と呼ばれていたそうである。
 なので、彼の戯曲も「詩劇」と見ればよいのだろう。

And every fair from fair sometime declines,
By chance or nature’s changing course untrimm'd;
But thy eternal summer shall not fade,
Nor lose possession of that fair thou ow’st;
Nor shall death brag thou wander’st in his shade,
When in eternal lines to time thou grow’st:
So long as men can breathe or eyes can see,
So long lives this, and this gives life to thee.

美しいものはすべていつかは頽れてゆくもの、
偶発時によって、また自然の変化によって、崩れてしまう。
しかし君という夏は永久にしおれることはなく、
君の今の輝きも色褪せることはない、
君が死の影の谷を歩むとは死神も吹聴できはしない、
時間を超えた詩行の中に君が生きるならば。
人が息づき、目が見えているかぎり、
この詩は生きつづけ、この詩によって君も命を永らえる。

 最後の4行を読むと、シェイクスピアは、小倉紀蔵先生が提唱した「第3の生命」のことを説いているかのようである(道具概念vs.道具概念(4))。
 それはさておき、私が(あるいは鋼太郎さんも?)言いたいことは、「ソネット18番」で Fair Youth に語ったのと同じことを、シェイクスピアは、今度は亡き息子ハムネットを対象として、「ハムレット」という作品によって実践したのではないかということである。
 つまり、今度は詩ではなく、戯曲「ハムレット」によって、ハムネットに「命を与える」(give life)ことを試みたと解されるのである。
 こう考えると、ハムレットが愚直なまでにピュアであり、「自我」と「状況ないし世界」を切り離して考えることが出来ない人間である理由も分かる。
 ハムレットは、30歳という設定ではあるが(30歳で成人?)、11歳(奇しくもアニーと同じ年齢!:見せていい)で死んだハムネットと精神年齢は同じと考えてみるとよい。
 「死んだ子は年をとらない」からである。
 ハムレットが11歳の心を持っているとすれば、父が死んだ直後に叔父と結婚する母を見て、彼が悲嘆に暮れる理由がよく分かるだろう。

吉田「家庭劇だと解釈すると、この家に夫はいなかったんですよ。すごく仕事が出来る人で、いつも留守。クローディアスは兄がガートルードと結婚した当初から好きでたまらなかったんですね。それはおそらく恋ではなく劣情のほう。つまり、ものすごくタイプだったんだろうと(笑)。現実的に考えると、ガートルードも夫に顧みられず欲求不満が溜まっていたのだろうという、生々しい話で(一同笑)。その関係性がないと、ハムレットはあんなに悩まないですよ。本当は夫が死んだんだから結婚しようが自由なんだけど、息子にしてみたら耐えられないことじゃないですか。」(公演パンフレット~CROSS TALK(1)より)

 11歳の少年には、母と叔父が相思相愛の仲で”体の相性が良い”ことも、亡き父がくどいほど「お母さんを責めてはいけない」と言い付ける理由(仕事に没頭する余り妻を欲求不満に陥らせたことに対する自責の念から?)も、うまく理解出来ないわけだ。
 仮に自分が11歳の時に、このような”不都合な真実”を知ってしまったとしたら、どうすればよいだろうか?
 ここはやはり、同じ11歳のアニーを見習うのが良いだろう。
 ”TOMORROW”を口ずさみながら、「明日まで頑張り」(”hang on 'til tomorrow,”)、ひたすらウォーバックスを待つのである。

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