教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

電磁界解析ツールの意外に重宝する使いかた

2009-10-08 00:00:22 | 科学
電磁界解析シミュレータというものがある。
2次元平面とか3次元構造のものの電波伝搬をシミュレーションするソフトである。

今までなら、部分部分に区切って等価回路に書き直して解析するとか、ためしに試作してみるとかするしかなかったところだが、こいつを使えば3次元でお絵かきした構造そのままでシミュレーションすることができる。
何が何とも言えないようなヘンテコな形のものでも解析できるし、慣れてくれば試作しなくてもシミュレーションでどうにでも解析できるしで、じつに便利なツールである。

しかし!

こいつには、当初は思いもよらなかった意外に重宝する使いかたがある。

それは
「電磁界解析したらこんな電界分布になりました。だからここが原因です!」
とカンタンに相手を黙らす口実をでっち上げることができることである。



たとえば。
どこかのだれかが回路で動作不良を発生させたとしよう。

もしその問題が大きい場合、担当者一味やら他部署の有識者やら偉い人やらが集まって対策会議をすることになる。
大概は、担当者一味なら何が問題なのかは理解しているし、他部署でも有識者ならちょいと話を聞けばすぐに問題を理解できる場合がほとんどである。

ところがどっこい、偉い人はそうでもない。
その部署のトップの管理職の人が、かならずしも問題を発生させている原因の分野に明るいとは限らない。

偉い人は詳細な実験データや解析結果を要求する。
しかし、それを専門にやっている実担当者レベルでは、原因ははっきりしている事を知っていて、実験しても自明な結果が出るだけなのを知っている場合は多い。

生産縮小傾向の鮮明な非主流製品であればとりあえず的な対処両方さえ解っていれば十分な場合も多く、時間を使うほうがもったいない場合も往々にしてよくある。
それに、わざわざ時間をつぶしてアタリマエなことを実験しなければならないのは非常にかったるいし、モチベーションは少しも上がりもしない。

ところが偉い人に
「そんなのアタリマエですから実験するのもめんどくさいし、別にコレでいいじゃないですか・・・」
と言っても
「なんでそれがアタリマエだと言い切れるんだ! 数字で説明しろ!」
と、それはそれで別の意味でめんどくさいことになるケースもある。

場合によっては相手は上司の上司だとかいう事もありうるわけで、ムカついたからといって実験レポートの結果報告に
「アタリマエのことをしてアタリマエな結果が得られただけで、本実験で特に新しくわかった事があるわけでもない」
とか書けるはずもなく、かといって
「実験した結果、○○のとき△△となる新たな事実がわかった」
とか書くと、逆に自分がそんな事も知らん程度のレベルの低い技術屋だと思われかねないから書くわけにもいかず、そういう意味でも色々とかったるいわけである。

やれやれ、困ったもんだ。
従来はそれで渋々シゴトをこなすしかなかったわけだ。

ところが!

実はそういう時にこそ、電磁界解析シミュレータの真価を発揮するときなのだ!



その手順はこうだ。

・とりあえず問題となった部分の設計情報をコピペして3次元のお絵かきをする。
  ↓
・それを電磁界解析シミュレータにほおりこむ。
  ↓
・どっか適当な周波数での共振分布とか信号伝播とか、なんかそれっぽい解析をさせる。
  ↓
・解析が終わったら、赤~黄~緑~青のグラデーションのかかったカッコいい解析結果の絵を表示させる。
  ↓
・それを偉い人の前にもってって、
 「シミュレーションした結果、このようにここの電界が強く立っていまして・・・」
 というような説明をする。



ここまですると、たいがいの専門家でない人は黙る。
グラデーションのかかったカッコいい解析結果を出されると、やったことのない人から見れば何だか知らんがすごいことをやってきたかのように見えるようなのだ。
(専門知識のある偉い人の場合はツッコミを入れるかもしれないが、そもそもそういう人はアタリマエな結果が出るような実験をしろとゴリ押しするようなことはまず無い。意味を理解できる人同士ならば話せば解るのだ。)

こういうシミュレーションを2時間くらいでパッとやって持っていけば、そりゃあもう課長クラスの人たちは大喜びだ。
なんせ、何日も部下の工数をかけてどーでもいいような実験をさせる事もなく、口先三寸で誤魔化してすませる材料ができたからだ。
そしてそれをレポートに貼り付け、偉い人の前でさもマジメに検証してきたかのように報告するわけである。

実はこいつはヤミツキになってしまう。
そんなのを1度でも渡してしまったら
「このボードでこの辺に○GHzくらいで変な共振が出るんだけど、それっぽいような電磁界シミュレーションしてくれない?」
とか、いろんな部署からよく頼みに来るようになる。
そうやってポイポイ結果を渡してやり、そしてわたしはみんなのムダな実験時間の削減に大いに貢献しているのだ。

電磁界解析シミュレータとは、カンタンに偉い人を黙らすこともできる、なんとも便利な重宝するツールでもあるのである。



追伸:

いちおう念のために言っておくけど・・・
電磁界解析シミュレータはホンモノの研究開発に使っている時間のほうが圧倒的に長いわけで、そういうアホらしいことをするためだけに用意しているわけでないからね(笑)。