奇想庵@goo

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スクウェア・エニックスの今後

2007年05月26日 23時14分22秒 | FF11
スクウェア・エニックスから発表された「平成19年3月期決算短信」及び、ITmedia +D Gamesの「新会社発足以来の最高益――スクウェア・エニックス決算発表会」の記事を読んでの感想を述べたい。

売上高1634億円、経常利益262億円で、経常利益は新会社発足以来の最高益となった。スクウェア・エニックスの事業は出版やアミューズメントなども含むが、やはりその中核となるゲーム事業とオンラインゲーム事業に注目したい。
ゲーム事業は、FFXIIが国内では2005年度分となるため786万本から721万本に低下しているが、北米や欧州での大きな伸びがあって、95.9億円から163.48億円に経常利益も伸びている。出荷本数で国内の占める割合が5割を切り、国内のゲーム市場の動向や安定した利益確保を考えればこの傾向は今後も持続するだろう。
国内では評判の良くないFFXIIが海外では評価が高かったらしい。それが売上増に繋がっているわけだが、こうした嗜好の差をどのように埋めていくのかは興味深いところだ。

一方、新規タイトルとして注目されるFFXIIIだが、発表時から複数のスタイルで出すと明言した。ゲームのメジャータイトルはナンバリングのものとそうでないものでは売れ行きが大きく異なることが多い。コアユーザーやそのタイトルのファンならずとも手を伸ばすナンバリング作品はそのタイトルの顔のような存在だ。派生ソフトはどうしてもファン向けの色合いが強い。
FFXIIIの場合、どれが顔にあたるソフトか見分けにくい。普段ゲームをしない層までを対象にするタイトルでこの手法は非常に危険に感じる。実際に出す順番や広報などの面をどのような形でするか知らないが、分かりにくさはセールスにおいて障害になるだけに販売手法に注目している。

発売ソフトのラインナップによって大きく収益の変化するゲーム事業と異なり、オンラインゲーム事業は安定した収益を上げている。右肩上がりに成長を続け、スクウェア・エニックスにとって非常に価値ある部門だが、事実上FFXI一タイトルに支えられている。
拡張ディスク「アトルガンの秘宝」の発売とXBOX360版の発売もあって、営業利益は前年同期比14.6%増の67.67億円だが、売上高は同13.1%減の136.60億円となっている。会員数も約50万人でほとんど増減がない。
5周年となった作品としては安定していると評価できる。新規ディスクの発売も発表され、もうしばらくはこの傾向に大きな変化は現れないだろう。だが、新規を取り込む努力はあまり見えず、いつかははっきりとプレイ人口の減少が知られるようになるだろう。そうなると一気にプレイヤー離れが進むことが予想される。

ゲーム事業の話だが、廉価版の販売が好調だったことが利益に繋がっていると分析しているが、こうした廉価版を出すことに対して宣伝などの努力が非常に少なく感じる。発売すること自体への宣伝もだが、内容に対する告知の乏しさも気になるところだ。普段ゲームをプレイしない者には、廉価版の存在が分かりにくいものとなっている。中古などで元のソフトも売られている中で、アルティメットヒッツなどの各社異なるタイトルで売られている廉価版は、なぜこんなに安いのか、本来の機能が削除されているのではないかなど誤った見方もされている。
ゲームを作ること自体はもちろん"ものづくり"だが、ゲームを文化的なものの一部と見なすならば単に作って売って終わりというものではない。それは単にメーカーの姿勢の問題ではなく、利益に繋がりうることだと思うが、サービス業的視点の欠落はこの業界によく目に付くことだ。

オンラインゲーム事業は更にサービス業そのものと言える事業だ。その面でも、FFXIの5年間の歩みはスクウェア・エニックスの試行錯誤の歴史とも言える。公式サイトに掲示板を作らなかったことで、匿名掲示板での主張がゲーム内にまで悪影響を及ぼしたとこ。POL内に開発関連の掲示板を作ったもののうまく機能しなかったこと。以前はプレイヤーの要望に対してそのまま取り入れることがなく、必ずひねった内容の修正を施していたが、最近はプレイヤーの要望に応えすぎといった印象であること。
昔は雑誌に先に情報を載せたりもしたが、今は公式サイトでの発表を優先している点は評価できる。RMTへの取り締まりなどプレイヤーの声に押される形で動いている点も。プレイしやすい環境作りへの細かな修正も、遅すぎるという評価はついて回るがやらないよりはやった方がいい。こうしたいい変化もあるが、まだまだサービスという面から高く評価はできない。
ただそれはスクウェア・エニックス固有の問題ではない。ゲーム事業においては国内の多くのゲームメーカーが同様だし、オンライン事業でもサービス業として機能しているところは多くない(海外の作品の委託の場合各種制限があるため仕方がない場合もあるが)。

プレイオンラインによるオンライン事業という観点では完全に失敗している。「ファンタジーアース」は事業を移譲したし、FMOも成功と言いがたい。FFXIは成功したと言えるだろうが、いつまでもそれに頼っているわけにもいくまい。
後継MMORPGをいかに成功させるかとFFXIをいかに着地させるかは非常に難しい課題だ。成功例と言える「リネージュII」だが、いまも「リネージュ」を稼動しているように移行させればいいというものではない。極端な話、後継作とFFXIを連動して魅力あるコンテンツに高め、両方に新たなプレイヤーを呼び込むような取り組みが期待されるところだ。

FFXIに関して懸念していることは、最近の開発の方向性についてだ。特にアトルガン以降顕著だが、開発の主眼はFFXI内のコンテンツに向けられている。アサルト、サルベージ、チョコボ育成など。新しいコンテンツは興味深いが、ヴァナがテーマパーク化している印象が強い。それ自体にも不満を感じるが、それ以上にバージョンアップでの変化が乏しくなった点に危機感を抱いている。ジョブ関連や戦闘自体への変化は直接感じられるが、コンテンツの変化はそれに興味を持っていなければ全く関わりないことだ。最近のヴァナはコンテンツの変化のみで新鮮味が甚だしく薄れてしまった。ネットゲームの最大の魅力は変化だ。もちろん急激な変化はプレイヤーを離れさせる要因にもなってしまうが、変化がないこともまたプレイヤーを離れさせる原因となる。
先のイベントでの「察してください」という発言は、開発側の意欲と能力に疑問を抱かせることとなった。そして、それはスクウェア・エニックスがFFXIをどうするのかということと繋がってくる。あくまで後継MMORPGに勝負を賭けるのか、あるいはずるずるとFFXIに頼るのか、それとも別の選択肢を探るのか。次の新規ディスク発売あたりで多分見えてきそうだ。この大きな岐路をどう選ぶかで国産MMORPGの将来も左右されるかもしれない。