海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

日米首脳会談と琉球新報社説について

2009-11-14 17:42:59 | 米軍・自衛隊・基地問題
 今日の琉球新報朝刊一面トップは日米首脳会談で、〈現行案変更に柔軟 大統領 行程修正も〉という見出しがついている。何やら期待を抱かせるような見出しだが、記事を読むとオバマ大統領が言っているのは、「辺野古現行案の微修正」という米政府の”落とし所”を改めて示しているにすぎない。鳩山首相も普天間基地の県外移設についてオバマ大統領と直接交渉する機会を自ら放棄した。そのこと自体が鳩山首相のリーダーシップと本気度がどの程度のものであるかを示しているだろう。
 問題を先送りする一方で〈今後は、来週はじめに始まる閣僚級の作業グループを通じて早期に結論を出していく方向で一致した〉(琉球新報同上)という。〈結論〉はすでに見えている気もするが、オバマ政権の脅しに鳩山首相が腰砕けとなって”落とし所”に転落するのを許さないために、沖縄県民はさらにどれだけのエネルギーを費やせばいいのだろうか。
 鳩山首相は〈沖縄の期待感は強まっており、困難を伴う問題だ〉と発言している。だが、沖縄で強まっているのは〈期待感〉だけではない。ぶれまくっている鳩山内閣の閣僚発言や鳩山首相のリーダーシップのなさに対する苛立ちや不満、怒り、幻滅も日に日に強まっている。これで作業グループが「辺野古現行案の微修正」を結論として出し、鳩山首相がそれを受け入れたらどうなるか。〈期待感〉がしぼんで終わりではない。強まった苛立ちや不満、怒り、幻滅はただでは収まらないだろう。

 今日の琉球新報にはまた、〈鳩山・オバマ会談〉〈県外ベスト論〉という二本の社説が載っている。後者の社説に以下に引用する一節がある。

〈島袋吉和名護市長も記者会見し、「代替案があれば歓迎する」と述べた。
 遅すぎた感もあるが、この際、時期の当否は置く。来年の名護市長選挙、参院選などへ向けた「争点隠し」の思惑を指摘する声もあるが、意図はどうあれ、民意をより反映しようと方針転換することは、責められる筋合いのものではない〉

 この社説を書いた論説委員は、名護市長が出した声明文をちゃんと読んだのだろうか。名護市長は実際に〈民意をより反映しようと方針転換〉したのだろうか。〈意図はどうあれ〉と書いているが、その意図にこだわり分析・検証するのがジャーナリストの仕事ではないのか。島袋市長が「県外移設容認」に〈方針転換〉していないのは、声明文を読めば分かることだ。それを〈「県外」が県民の総意である〉という結論に持っていくために、希望的観測から島袋市長の声明を拡大解釈するのは誤りである。
 また、〈責められる筋合いのものではない〉という主張もおかしい。政治家の声明や発言を検証し、疑問を述べたり批判を行うのは民主主義社会では当然のことであり、それを〈責められる〉ととらえて批判を封じようとするかのような主張は、ジャーナリストとしての見識を疑う。
 島袋市長は辺野古沿岸部への新基地建設という現行案推進の立場を変えておらず、引き続き「沖合移動」を求めている。世論調査で「県外・国外移設」が7割を超す名護市民の〈民意〉に従って〈方針転換〉していないからこそ批判されているのだ。

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1 コメント

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環境大臣も (宮坂亨)
2009-11-14 22:02:50
>来週はじめに始まる閣僚級の作業グループを通じて早期に結論を出していく

作業グループには環境大臣も入ってほしいですね。辺野古にはジュゴンが棲み、来年は国際ジュゴン年です。秋には名古屋で生物多様性条約第10回締結国会議があります。
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