海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

14年目の10・21

2009-10-21 20:05:14 | 米軍・自衛隊・基地問題
 今日は10・21国際反戦デーであり、1995年に8万人余を集めた県民大会が開かれた日でもある。当時コザ高校に勤めていて、高教組の分会として職場の人たちと参加したことを思い出す。生徒たちも個人や友人同士、あるいは家族と一緒にかなりの数が参加していた。
 言うまでもなく、宜野湾海浜公園にそれだけの人が集まったのは、沖縄島北部で発生した3名の米兵による少女への暴行事件に対し、怒りと抗議の意思を示すためだった。普天間基地「移設」問題の端緒にはこの事件がある。しかし、それを忘れたかのように事件が起こった北部の地に普天間基地を「移設」させようとしている。そこにはどれだけの深い頽廃があることか。
 こう書けば、基地問題は倫理的に語るものではない、という意見が返ってくるかもしれない。あるいは、情緒的な反応として一笑に付されるかもしれない。だが、私はこの14年間の「普天間基地問題」の端緒に何があったのか、に常に立ち返って考え、行動したいと思っている。

 ゲーツ国防長官が来日し、岡田外相や北沢防衛相、鳩山首相らと対談した。辺野古沿岸部への「移設」以外の選択肢はない、とゲーツ長官は強硬姿勢を示し、民主党を中心とした政権に代わろうとも、日本はしょせん米国の「属国」にすぎないんだ、と言わんばかりの高圧的な態度で終始した。
 それに対してすっかり受け身になり、沖縄県民の気持ちがどうのこうのと逃げ腰になって言い訳している鳩山首相らのみっともなさよ。小泉・安倍・麻生といった面々のようにへらへら笑って尻尾を振らないだけましかもしれないが、日替わり発言と揶揄され、かつ沖縄に下駄をあずけようとする無責任さに加え、今回のゲーツ国防長官との対談を見せられた沖縄では、鳩山政権に期待や幻想を抱いていた人たちも、急速に熱が冷めているだろう。
 一方で、米政府高官が50メートルの微修正を示したことを評価する仲井真知事の発言は、ヤマトゥのメディアに大いに利用された。米政府と沖縄県が微修正で辺野古沿岸部への「移設」を鳩山政権に迫っている。テレビを見ていると、そういう構図で報じているのがほとんどで、沖合移動で微修正し受け入れる、という落とし所を視聴者に露骨に示して、鳩山政権が方針転換をしても納得させる地ならしが進められている。

 だが、問題は微修正がどうのこうのですむことではない。環境問題が大きく扱われる一方でほとんど触れられないが、辺野古沿岸部に新基地ができればキャンプ・シュワブ基地の人口は6400名になる。その中には基地従業員も含まれるが、大半は米兵、軍属およびその家族だ。14年前に事件を起こしたキャンプ・ハンセン基地の米兵とあわせて、北部東海岸にこれだけの米兵が集中するのだ。このような現状を生み出しても「沖縄の負担軽減」ということを口にする仲井真知事の愚劣さには怒りを抑えかねるが、基地の集中化が事件・事故の集中化でもあることを沖縄の歴史は示している。
 14年前に県民大会に参加した一人として、大会の結果がこのような形になることだけは、けっして許してならないと思っている。辺野古への新基地建設を許さず、普天間基地やそれ以外の米軍基地を沖縄から撤去させるために、自分が生活をしている場所で努力をしなければと思う。

コメント (5)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 臥牛吐開拓団跡 | トップ | パラシュート降下訓練とオス... »
最新の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
「落しどころ」か? (キー坊)
2009-10-22 13:07:44
今日の官房長官会見で、来月のオバマ来日までに普天間の結論は出さないと発表しました。
取りあえずはゲーツ長官の強要を交わした訳です。マスコミは微修正報道と、訳のわからない仲井真知事の発言報道を繰り返しながら、「落しどころ」に誘導しようと操作しています。

普天間に関して、鳩山政権もその「落しどころ」に落とすことを狙っている可能性もあります。が、首相が「友愛」の精神から本心で、それを避けようとしているのではないか、という期待は捨て切れません。
今度の郵政人事を見ても、首相の指導力は心もとないものですが、政権内には本心から普天基地沖縄県内移転を阻止したい勢力も在ると思います。
鳩山政権に絶望する事は、もう少し推移を見てからでも遅くないのではないでしょうか。
返信する
絶望の虚妄なること (目取真)
2009-10-22 23:13:53
絶望の虚妄なること希望に同じ、という言葉があります。
鳩山政権は絶望の対象でもなければ、希望の対象でもありません。
推移を見るのではなく、辺野古沖への微修正という落とし所を許さないために、自分は何をするのかが問われていると思います。
返信する
東京の方々に (宮坂亨)
2009-10-23 00:14:30
信州の者です。
辺野古の闘いを通して知り合った東京のはるさんが中心になって「東京の方々に辺野古をつたえよう」というプロジェクトを始めました。
11月23日に東京で集会を企画しました。東京の方ぜひ御参集下さい。
天木直人さんの講演。
QAB「海にすわる」上映
ヘリ基地反対協の安次富浩の講演です。

http://www.henokowo-tsutaeru.com/henokokouenkai.pdf
返信する
言論人の見解 (キー坊)
2009-10-23 11:30:42
失脚させられても屈しない二人の言論人がいます。元外務官僚・天木直人氏とエコノミスト・植草一秀氏です。植草氏は民主党の全面的擁護者ですが、普天間基地については「滑走路の見直しなどでの着地点を見出すことが現実的な選択である」と、日米合意を支持してます。これを見て私は民主党政権への疑惑も生じています。
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-4838.html

これに対して、天木氏の普天間基地への意見は明快です。「米軍にとっての普天間飛行場は、日本国内での代替基地建設を必要とする(ほどの)重要性はない… (強行は)ノーベル平和賞を受賞した、環境重視のオバマ大統領には打撃になる。… 皮相的な米国追従は米国の利益すらならない。」http://www.amakiblog.com/archives/2009/10/20/

私は普天間基地移転問題は日本国の命運さえ決める重大事だと思うので、どっちがより深い「愛国」日本人か判った気がします。
返信する
本の紹介 (目取真)
2009-10-23 12:36:46
沖縄タイムスの記者・屋良朝博氏の『砂上の同盟 米軍再編が明かすウソ』(沖縄タイムス社)は、沖縄に米軍基地を集中させてきた日本政府のウソと無作為を暴いていて、普天間基地問題を考える上でぜひ読んでほしい一冊です。
新書版で1260円。おすすめします。
返信する

米軍・自衛隊・基地問題」カテゴリの最新記事