海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

この海岸を次の世代に残さなければならない。

2015-04-15 22:41:04 | 米軍・自衛隊・基地問題

 15日は午前9時20分頃、松田ぬ浜から12艇のカヌーで海上抗議行動に出発した。途中、キャンプ・シュワブ内の解体工事の様子を見ながら北上したが、奥の方の兵舎にも足場が組まれて網がかけられているのが見えた。手前の施設は以前から内部が空洞となっていたが、取り壊しが始まっている。これらの解体工事に関してアスベストの処理はどうなっているのか、追及が必要である。

 来週の火曜日、4月21日は旧暦の3月3日で沖縄では浜下り(はまうり)という行事がある。1年で最も潮が引く時期で、女の子を海に連れて行って身を清め、家族で潮干狩りをする。私が子どもの頃は母親が兄弟姉妹に弁当を作ってくれた。家族でミナーやガシシを採りに行った日がなつかしい。

 辺野古崎付近の岩場も今日は潮がかなり引いていて、フロートやオイルフェンスが岩に乗り上げていた。これまでカヌーチームに参加した皆さんも、この写真を見ると驚くのではないだろうか。

 当初はすぐに大浦湾に出る予定だったのだが、岩場の様子を見て予定を変更し、岩の上で日にあたりながらゆんたくをしたり、自然観察をしたりしながら、しばしのんびりと時間を過ごした。

 岩場からは米軍宿舎の前でバックホーが砂利を敷き均しているらしい様子が見えた。この岩場の東側に仮設岸壁が造られる予定で、本格的な埋め立て作業がこの地点から始まるだろう。こういう自然の海岸を埋め立てれば二度と元には戻らない。砂浜を含めて次世代に残せば、キャンプ・シュワブが撤去されたあとに、自然を生かして可能性がいくらでもひらける。

 米軍基地のフェンスに阻まれて、辺野古崎のこういう場所を、ほとんどの県民は見ることもできない。沖縄県民の土地や海が、沖縄戦から70年が経っても、足を踏み入れることさえできない場所として、米軍基地に占拠されている。さらに貴重な海岸と海を破壊して新たな基地が造られようとしている。沖縄を虐げて恥じない、この日本という国の情けなさよ。そして、おぞましさよ。

 午前11時頃、岩場から平島に向かって漕ぎ出し、少し早かったが昼食をとった。快晴の空の下、平島から辺野古の海を眺めると、この海を埋め立てて新基地を造ることが狂気の沙汰としか思えない。翁長知事にぜひ訪米前に辺野古の海を船から眺め、平島にも寄ってほしい。菅官房長官や安倍首相も実際に自分の目で、平島から辺野古の海の景色を見てほしい。

 高江の森にしても、辺野古の海にしても、実際に自分の五感で確かめないと、その素晴らしさは分からない。インターネット上で反対運動の悪口を言っている人たちは、こういう自然を自分で確かめたことがあるのだろうか。以前、チャンネル桜のメンバーらが船を借りて辺野古漁港から海に出ていたが、こういう自然になにも感じなかったのだろうか。

 長島の間を抜け大浦湾に出て、この日も続けられている海底ボーリング調査への抗議行動を行った。大浦湾に出るとすぐに海上保安庁のゴムボートと船がつきまとい、警告をくり返したが、長島の北側はフロートが一部しか設置されておらず、臨時制限水域の境界がはっきりしない。そういう場所で恣意的に拘束が始まった。

 その過程で、海保の特殊警備救難艇「あるかいだ」の船上から指揮者が、船やカヌーのメンバーを「犯罪者」呼ばわりする暴言を放ち、抗議する船とカヌー、海保のゴムボートが錯綜して騒然とした状況となった。

 本来、常時立ち入り制限水域は岸から50メートルでしかなかったものを、新基地建設のために2キロまで拡大し、海の安全を守るという海保が埋め立て作業のためのガードマンと化している。そして、海の暴力装置としてカヌーや抗議船のメンバーに何人もケガを負わせてきた。沖縄県民の圧倒的多数が辺野古新基地建設に反対している。その民意を踏みにじって自らが沖縄差別の先兵となり、海の破壊の先頭になっていることに、「あるたいる」の指揮官はやましさを覚えないのだろうか。

 5名が拘束されて海保のゴムボートで松田ぬ浜近くに運ばれたが、再度態勢を立て直し、大浦湾に残っていたメンバーと合流した。

 9艇のカヌーが1時間近く海保のゴムボート向かいあったあと、一斉にスパッド台船に向かった。広範囲に広がって行動したため、かなり進んだカヌーもあったが、最後は飛び込み専門の部隊に転覆させられ、全員が拘束されて辺野古に運ばれた。

 海上では連日、緊迫した場面があるが、同時に沖縄の自然の豊かさを肌身で感じ、それを次世代に残さなければ、という思いが深まる。

 


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