海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

緊急シンポジウムー名護・徳之島から5.28日米共同声明を問うー

2010-06-21 02:16:27 | 米軍・自衛隊・基地問題
 6月20日(日)午後1時から名護市民会館中ホールで「緊急シンポジウムー名護・沖縄から5.28日米共同声明を問うー」が開かれた。主催は沖縄の「基地と行政」を考える大学人の会で、名護市、徳之島伊仙町、天城町が共催し、300人ほどの参加があった。5時までの予定を40分オーバーして数多くの発言が行われたが、そのごく一部を紹介したい。



 第1部では、宮城実篤嘉手納町長が「歴史の転換点に立ってー今、嘉手納町から日米安保を問う」と題して基調報告をし、民主党沖縄県連の喜納昌吉代表のビデオ報告のあと、民主党鹿児島県連の川内博史代表が「徳之島移設案に対する民主党鹿児島県連の方針」と題して報告を行った。
 川内代表は、在沖海兵隊の基礎的情報をはっきりさせたうえで考えるのが出発点と述べ、8000人がグアムに行ったら、どの部隊、何人が残るのか、政府、外務省、防衛相の官僚ですらはっきりと知らない、と批判した。そして、5月26日から27日かけて「県外、国外移設」を政府方針に盛り込むべきという呼びかけを行い、衆参両院で182名の署名を集め、政府に持ち込んだことを紹介し、望みはまだある、閣議決定の文書には国外、県外への分散に引き続き取り組むと書いてある、それが入っていることで、グアム、テニアンという地元も望んでいる地域への移設の可能性がある、と述べた。
 この発言あたりから会場からヤジが飛び始め、川内代表が、菅首相が「日米合意を踏まえて」と言うとマスコミが辺野古、徳之島と書くが、菅首相は正式には辺野古と言っていない、と発言したことに対して、詭弁だ、ごまかすな、などのヤジが次々と飛んだ。川内代表もヤジに対応して、反対と言ってるだけでできるなら簡単、などと応じていたが、後半は飛び交うヤジに反論しながらの発言となった。
 川内代表に続いて玉城デニー議員も発言した。次の日程があるということで、発言が終わるとすぐに二人は会場を後にした。



 第2部は最初に「5.28共同声明を問う」と題して新崎盛暉沖縄大学名誉教授が基調報告を行った。続いて、大久保明伊仙町町長が「徳之島移設拒否ー4.18島民大会の成功をふまえて」と題して報告し、稲嶺進名護市長が「5.28声明を拒否する名護の闘い」と題して報告した。そのあと、ヘリ基地いらない二見以北十区の会の浦島悦子氏が発言した。



 大久保町長は、沖縄の人口が70万人から140万人近くまで増えたのに対して、奄美群島では人口が半減している。沖縄みたいに発展して公共工事がもらえるなら普天間基地移設は千載一遇のチャンス、という声が島内の一部にあったが、調べれば調べるほど大変なことだと分かり、反対が増えていったと語った。また、それまで同胞と言いながら沖縄の苦しみを分かっていなかったことや、安保について無知だったことへの反省を述べた。
 琉球の北山による支配や薩摩の支配下で奄美群島のサトウキビから得た利益、徳之島の祖先の血と汗と涙の結晶が、明治維新を成し遂げた背景にあったことなど、徳之島の歴史についても触れ、長寿・子宝日本一の島を大切にして、政府の強行に反対していくこと、そのために署名運動に取り組んでいることなどを紹介した。
 また、オバマ大統領の核のない世界を、という発言を引きながら、多極化する世界で日本は積極的に世界平和のために軍縮に向かうべきだと主張した。そして、南西諸島は戦争ではなく、経済や知力で勝負する地域となることを期待する、と語り、これから辺野古に基地はいらないと訴えていきたい、と結んだ。



 稲嶺名護市長はまず、昨年8月30日の衆議院選挙の結果を受けた鳩山政権誕生から5月28日の日米共同声明までの政府の動きと、それに対する名護、沖縄の取り組みを振り返った。そして、6月8日に菅内閣が誕生したが、鳩山首相を支持しなかった閣僚が残り、何も変わっていないと述べ、これでは希望を持てないし、菅首相が負担軽減と言っても何も伝わらない。政府は琉球処分と同じ手法で今もやろうとしている。東京で見たり思っている人と沖縄とでは余りにも乖離がある、と批判した。
 また、久志区の評議員会が6月13日に反対決議をあげたこと、久辺三区で稲嶺市長を支える会が作られたことなど、久辺三区の中から「容認」と見られることを拒否する動きが起こっていることを紹介し、日米合意が決まったから仕方がないとあきらめてはいけない、と訴えた。
 さらに西里喜行氏の新聞投稿から、奄美、宮古、八重山が分割されようとしたときに琉球人、ウチナーンチュが粘り強く自己主張してそれをあきらめさせたことについて触れ、県外、国外を実現するために、それぞれが自覚して持続的に最善の選択肢をとり、力を持った権力に向かっていくことを呼びかけた。※1


 
 進行が遅れていることもあって、予定されていたプログラムが途中で何度か変更になった。発言者が多く内容を詰め込みすぎではないか、と感じていた人は多いと思うのだが、主催者は事前にもっと調整ができなかったのか。
 後半のパネルディスカッションは、宮城実篤町長、大久保明町長、新崎盛暉名誉教授、稲嶺進市長、浦島悦子氏の5人で行われた。時間不足のために各自の報告を補足した短いコメントが述べられただけで、相互の議論はなかった。宮城町長からは川内博史代表への厳しい批判が述べられたが、川内代表が最後まで残って議論が交わされるのを見られなかったのが残念だった。
 フロアからの発言はすでに終了時間を過ぎていて、時間を延長して行われた。フロアからの発言を省略しなかったのはいいとして、あらかじめ報告、特論、メッセージ数を調整し、フロアからの発言をパネリストの議論と絡めたり、主催者はどう考え、どう対処するのかなどの応答も必要ではなかったか。発言者の提案が言いっぱなしで終わってしまった感は否めない。
 
※1 大久保、稲嶺両氏の発言はきわめて簡潔にまとめてあるので、詳しくは主催者の報告などを参照してください。
 


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