海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

普天間基地撤去のために

2009-08-25 23:56:48 | 米軍・自衛隊・基地問題
 衆議院選挙の投票までわずかとなったが、新聞やテレビの世論調査や情勢分析を見ていると、沖縄では1~4区の全選挙区で自民党が姿を消すということが起こりそうだ。強固な保守地盤といわれ、候補者の知名度と実績で大きな差のある沖縄4区でも、民主党の新人が自民党の現職をリードしているというのだから、雪崩現象とでもいうべき「政権交代」の波が沖縄にも押し寄せている。
 ただ、前回の小泉「郵政選挙」から今回の民主党「政権交代選挙」へと、票の流れが極端から極端にぶれる現象には、これが小選挙区の特徴とはいっても、危うさを感じてならない。選挙区で少数政党に入れてもどうせ死に票になるだけ、ということで、選挙区は民主党に入れて比例代表で支持政党に入れる、という声をまわりでよく聞く。マニフェスト選挙といわれるが、実際に各党のマニフェストを比較して支持を決め、票を入れるというより、一度は「政権交代」が必要だという意識と、勝ち馬に乗るという意識が重なって、選挙区は民主党へ、という空気が広がっているというのが現状ではないか。
 残りの選挙期間で何が起こるか分からないし、民主党への雪崩現象に逆バネが働くかもしれないが、仮に民主党が圧勝して単独政権となったとき、沖縄の基地問題はどう動くのか。参議院では共産党や社民党が一定の影響力を持つているが、民主党政権が普天間基地の「県外移設」を進め、辺野古の新基地建設を止める選択を行うか。
 8月25日に島袋名護市長が環境アセスメント「準備書」への意見書を県に提出した。10月には仲井真知事の意見書が出される。キャンプ・シュワブ基地内では兵舎建設や道路工事などが着々と進んでいる。民主党政権ができても、後戻りできないようにできるだけ早く埋め立て工事の着工に踏みきろう、という動きも強まっている。
 マニフェストに普天間基地の「県外移設」を載せなかった民主党に、現在進んでいる新基地建設の動きを本気で止めようという意志があるかは疑わしい。沖縄の基地問題の今後を考えるなら、民主党が圧勝すればいいというものではない。社民党や共産党が一定の勢力を保持し、普天間基地の閉鎖・返還、辺野古新基地建設反対の原則的な主張を国会で行うことが必要だ。仮に民主党政権ができたとしても、日米関係の重要性を理由に「県外移設」をなし崩しにしようとする動きが出てくるだろう。それを国会で牽制する役割を果たす政党が必要である。
 琉球新報と共同通信が行った電話世論調査の結果が、8月24日付琉球新報に載っている。それによれば、「米軍普天間飛行場の返還手法」について県内全体では、「海外に撤去」が48・5%、「嘉手納基地への統合」が10・9%、「辺野古への移設に賛成」が10・1%、「国内のどこかへの移設」7・1%、「下地島空港への移設」が1・2%となっている。名護市が含まれる衆院選3区では「辺野古への移設に賛成」が弱冠多くなっているが、それでも14・5%にすぎない。自公政権や仲井真知事、島袋名護市長が進めてきた普天間基地の「県内移設」=辺野古新基地建設は、これまでの世論調査と同様に、県民の支持をまったく得られていない。
 普天間基地は市街地にあって危険だから、早く辺野古に「移設」すべきだ。自民党・公明党はそのような主張を行ってきた。しかし、それは沖縄県民を分断・対立させ、北部を切り捨てるものだ。そのような主張を支持するほど沖縄県民の多くは愚かではない、ということを世論調査の結果は示している。
 どのような新政権ができたとしても、沖縄県民のこの世論を無視することはできない。県民世論を無視して「県内移設」を進めた自公政権の過ちをくり返すことは許されない。

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