徒然なるまままに

展覧会の感想や旅先のことを書いてます。

国宝室 法華経(久能寺経) 方便品・厳王品 ほか

2006-03-08 | 美術
国宝室 法華経(久能寺経) 方便品・厳王品
2006/1/31~ 2006/3/12
国宝 法華経法師功徳品第十九(慈光寺経)
国宝 平治物語絵巻 六波羅行幸巻
2006/2/7~ 2006/3/19

東京国立博物館

書の至宝展に合わせて、国宝 法華経(久能寺経) 方便品・厳王品が展示されていた。久能寺経は、もとは『法華経』28品に『無量義経』および『観普賢経』の開結両経を加えた30巻本。鉄舟寺の前身・久能寺に伝来したためこの名がある。現在は、28巻?が現存し、19巻は鉄舟寺に、3巻は東京国立博物館、法華経序品・法師功徳品は五島美術館に、ほか諸家に所蔵されている。

五島美術館では春の優品展で所蔵品を展示予定:4/1-4/28。なお1991年に五島美術館で開催した特別展「久能寺経と古経楼」では「法華経」類30巻のうち現存する鉄舟寺蔵の国宝と、東京国立博物館蔵と五島美術館所蔵の重要文化財など合わせて26巻が展示されたとの由。書の至宝展では、化城喩品(国宝静岡・鉄舟寺蔵 ~1/29)、安楽行品(東京国立博物館蔵 1/31~)が展示されていた。

それにしても、この方便品・厳王品の2巻の料紙の美しさは、眼を見張るものであった。「平安末期には、仏教の末法思想により貴族による装飾写経が多く行われた。鳥羽法皇らによって駿河久能寺に奉納された法華経「久能寺経」(1141頃)、平清盛が厳島神社に納めた法華経「平家納経」(1164)は、我が国を代表する装飾経。」(日本の古書・古典籍小史及び蒐集の手引から)という風に装飾経といえば、久能寺経か平家納経らしいが、浅学にして書の至宝展のときは凄いとはおもったが、今回、この2品を見て、その美しさを実感した次第。

巻頭の絵(見返絵)だけを比較すれば、平家納経は仏画が描かれていたと記憶しているが、今回の厳王品・方便品についていえば、厳王品は、金地を背景に赤と萌黄色と装束の貴族二人がまさに小さな橋をわたらんとする後姿を描き、方便品は、おなじく金地に赤や緑の「もみじ」の葉をちりばめている。末法思想というより華麗な貴族の栄華を伺える。

料紙については方便品は、薄い藍色の染紙に金銀の切箔や砂子を撒き、上下に銀泥で折枝、蓮花や唐草、鳥などの文様を描く。厳王品は、細かく裁断した金箔を前面に撒いて霞がたなびくように銀泥をひき、線は金泥でひく。
写真はこちらのサイトに

展示解説によれば、1142年2月に待賢門院(鳥羽上皇中宮 藤原璋子、第75代崇徳・第77代後白河両天皇の母)が出家の際に鳥羽上皇、美福門院(鳥羽上皇皇后藤原得子、第76代近衛天皇の母)をはじめ、近臣、女房らが逆修供養のために写経したもの。なお、1142年2月に待賢門院が出家したのは、第75代崇徳天皇が異母兄弟である第76代近衛天皇に譲位させられたからと知ると逆修供養がなぜこれまで絢爛に行われたか判り、それが国宝になっているとは歴史は不思議なものです。そして、崇徳天皇の恨みが保元の乱1156年のクーデタにつながり、「武者ノ世」のはじまり、平治の乱につながっていくわけです。
  • WikiPedia 待賢門院
  • WikiPedia 美福門院
  • WikiPedia 崇徳天皇
  • WikiPedia 女院

    隣の展示室には紺紙金字無量義経(平基親願経)(1178年)。見返絵に色あでやかな装束の貴族の姿が描かれている。

    そして、もう一点展示されていたのが、国宝 法華経法師功徳品第十九(慈光寺経)(埼玉・慈光寺蔵)(鎌倉時代・12~13世紀)。こちらは一寸時代が下がって宜秋門院(後鳥羽中宮)や出身の九条関係者が結縁した法華経。巻頭は黒地に金で仏画を描き、藍の料紙に薄墨と金泥で地を引いている上に写経していると推察。金箔も撒いて鮮やか。先月33巻のうち25巻が一同に公開されていたようで見逃したようで残念。

    隣の展示室には国宝 平治物語絵巻 六波羅行幸巻(鎌倉時代)(3/19まで展示)が。解説によれば
    「平治の乱(1159年)に取材した合戦絵巻の代表作。ボストン美術館の「三条殿夜討」,静嘉堂文庫美術館の「信西」の巻などとともに大部のセットであったと思われる。内裏に幽閉された二条天皇が脱出をはかり,清盛の六波羅邸に逸れるべく行幸する次第を描く。動きのある構図ときびきびした筆線で緊迫した画面を見事に描き綴る。」とあるが、白地を生かした画面構成は平安時代を違って、鎌倉時代の質実剛健な武士の好みを反映している。

    おまけ:平家納経雑感(梶谷亮治)。平家納経の見返絵についてふれられている

  • コメント    この記事についてブログを書く
    • X
    • Facebookでシェアする
    • はてなブックマークに追加する
    • LINEでシェアする
    « 季節の茶道具取り合わせ 畠... | トップ | ベオグラード国立美術館所蔵... »
    最新の画像もっと見る

    コメントを投稿

    ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

    美術」カテゴリの最新記事