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科野の国ラウンドトレイル ドMバンザイ参戦記

2017-11-13 00:08:35 | ランニング



2017/11/11 晩秋の長野県千曲市で行われた第3回科野(しなの)の国ラウンドトレイル
ロングコース32キロに参戦。 今回でトレイルレース2回目である。

白馬では足の甲を痛めていたので下りで速度を稼げず、悔しいフィニッシュとなった。
白馬の素晴らしい光景、心温まる応援があっただけに、余計に悔しかった。

良く走りきった!、と両手を強く握りしめ、高く上げて栄光のフィニッシュを切りたい。
フィニッシュしても本当に満足ってなかなかない。
エイドで長い時間休んでしまったり、思わずも歩く距離が長くなってしまったり、反省すべき点は必ずある。
それが多ければ多いほどフィニッシュの感動は薄れるし、腕を高く挙げる勢いも弱くなる。
だから、白馬が終わり、それから2ヶ月の間、その悔しさを忘れずに、逆に大切に育んだ。

育んだ悔しさを次のレースにぶつけるために練習しなくちゃいけない。
でもトレイルの経験がまだまだ少ないので、練習方法などわからない。
だから、こうするしかない。
エイドでは休まない。
下りではとにかくぶっ飛ばす。
登りでは絶対立ち止まらない。
とにかく前へ、前へ、前へ、前へ。
走ってゴールできるというこは、まだまだ余力があるわけだからね。

そして11/11レース朝を迎える。
当初は日本海低気圧により雨、強風予報。
予報が変わったのは前日。
低気圧通過が速まったのだ。
雨は未明だけで、寝起きに窓から見る雲の切れ目からは青空が覗いてきた。

8時に会場に入る。

(スタート前のアップはちゃんとね、1。)

(2。)

(3,はい!)

会場には科野歴史館がある。そこには萌えるような山々に囲まれ弥生時代の再現住居や古墳がある。
数時間後には走っているだろう稜線がスタートゲートから遥か遠くにクッキリと見える。
稜線はとても遠い。そしてとても高いところにある。

あそこに辿り着くのに何日かかるのだろうか、、、そんな距離感がある。
もし1年前ならそう思った。あんな遠くへ行くなんて時間がいくらあっても無理。
今は違う。あの遥か遠くに見える稜線の頂き、鏡台山までは2時間半だ。
あそこまで自分の足で。2時間半で辿り着く。
できるのか? わからない。でもやってみる。やる。

歴史を巡る古代トレイル。
スポンサーのモントレイルのフラッグが立ち並び、
フーファイターズがBGMでガンガン鳴っている。
トレイルのスタートはたまらない高揚感で包まれる。これが大好きだ。

(茅ヶ崎ファロス陸上部3名、スタート準備ヨシ!右後ろの遠くの稜線を右から左に走る。)

これからすべてのランナーが痛みと辛さを思う存分味わいに行くのだ。
それなのになんなんだろう、選手の笑顔、盛り上がり。
ドMバンザイ、まさに変態祭り。
カウントダウンが始まり、Ready Set、ホーンとともに一斉スタート。

出走は400人くらいいたと思う。
レースはみんなのレース、一人ひとりのレース、でオレ様のレースでもある。
だから最初から飛ばせ! GO GO!!!
、、、、とは言ってもこの勢いを維持するのは難しい。
もう息切れが、、、、苦しい。。
呼吸は心肺が温まってくると落ち着く。でもその前に登りがあったらアウトだな。
と思ってた矢先に登りが現れる。そういうものだ。
トレイルはそういうふうに出来ている。
でもトップは登りもどんどん走っている。きっとそのままフィニッシュするんだろう。

トップ集団はすでに遥か前方。しかもまだ1キロ、2キロなのにどんどん後続に抜かれる。
小さなアップダウンを繰り返しながら登り基調のコースに入っていく。
そして全て登りのコースになる。
さあ、修行僧ならぬ修行走の始まりである。

急斜面は落ち葉に覆われ、そして未明の雨でスリッピー。
何度か足を滑らす。地面に手を付く。その度にリズムを崩す。いらつく。

最初のエイドにやっと着く。
スタートから10キロ。
コーラを2杯がぶ飲みして休まずに再スタート。
目の前には戦意を喪失させる先程より更に急な斜面が。
丹沢のヤビツコースが一番きついと思っていたけど、
あんなのは楽勝だな、と思わせるくらいエゲツない。
しっかり目の前の岩を手でホールドしないと足が上に上がらない。
この登りでの順位が恐らく最後まで続くだろう。

(忍耐、根性、気合、3種類バランスよい斜面仕上げになっております)


100m進むのに何分もかかる。脚は震え始め、汗が滴り落ち、頭がぼーっとしてくる。
這った体勢のまま動かない者、大木を背に放心してる者を横目に登り続ける。
意識が一瞬遠のいてもいいように、歩調だけは脳の管轄外にする。
脚はマシーンなので痛みとか辛さに関係なく動かせるようにする。

なんてクールなことを言ってるが、
この調子で果たして1時間持つだろうか、いや数分だろうか、、、
ただただそういうことを考える。
つらいことだけを考える。
この上り坂にいるランナー達はきっと同じことを考えている。
辛さだけを考えている。
ツライツライをマントラのように唱えて登る。

白馬では、なんでこんな事やってるんだ??と登りながら考えたものだ。
でも今回は少し違っていた。
このツライツライ、自分にとってはいつものツライと少し違った。
ツラ楽しいのだ。こんな辛いこと一般の人は味わえない。
いやーたまんねー!最高!って思ったのだ。
M度ではオレは少し成長したのかもしれないね。



やがてピークに到着する。12時ジャスト。スタートから2時間半。
目標通りだ。なんだできるじゃねえか。

激登終わり下りのパートに入る。
登りで使った筋肉はそこから休憩に入る。
下り用の筋肉にスイッチ。
両頬を両手でパンパンと叩き、気持ちを入れ替えてダウンヒル開始。
紅い落ち葉で埋め尽くされたトレイルを走る。
ここから真のトレイルランニングだ。
下りを楽しむために登る。下りには、辛かった分と同じ絶対量の幸せが待っていた。
天国のようなフカフカ絨毯。明るい陽が差しこむトレイル。
遠くには真っ赤に萌える山々。
思わず声が出る。吠える。野生に帰る瞬間、それがダウンヒル。
一人抜き、二人抜き、三人四人、勢いはその次の登りでも変わらない。
ここでやっと調子が上がってきた。
シングルトレイルで前方に選手がいたら道を逸れて前に出る。
とにかく走れるところは走る。
必要なのは、今オレは選手だということだ。
参加者ではない。選手だ。

後半になると同じレベル同士での凌ぎ合いになる。
下りで抜くが登りで抜かれる。登りで抜いても下りで抜かれる。

やがてV字の深い急下りが目の前に現れる。
Vにはぎっしり落ち葉がたまり、腐葉が始まっている。
落葉はこうやって土になっていくんだろうな、という自然の製造工程だ。
下り始めると、膝まで埋まる落ち葉が衝撃的だった。
このようなコンディションは初めてだ。
この急斜面を足元に躊躇して止まっている選手が数人いる。
数キロ前の登りでオレを思い切りぶち抜いた選手もそこで止まっていた。
相当急だったし、根があったり石があったりで落ち葉の底が予測できないのだ。

でもそういうところは根も石もない。
根拠は一切ないが、何も無いようにできているのだ。そういうものなのだ。
だから滑り降りれば良い。
急斜面パウダースノースキイングで。
水が長るるが如し。走ってはいけない。自ら滑り落ちるのだ。
そこでオレは水を得た魚になった。
波を得たウインドサーファー。
雪を得たスキーヤー。
落ち葉を得たトレイルランナー。

選手同士の抜きつ抜かれつはコップの中の粉が撹拌されて落ち着かない様子と同じだ。
やがてコップの水流はなくなり、粉は底に落ち着く。それが20キロ地点。
一旦林道に出る。だらだら緩やかなアップダウンを繰り返しながら最後の山に続く。
その20キロ地点から前後誰もいないままフィニッシュを迎えることになった。
(実際は3人しか越していない。抜かれてはいない。)
林道も、登りも下りもずーっとだ。

まさにコップの底に沈んだ粉のように時間の止まった信濃路を静かにコツコツ前へ進んだ。
あまりの静寂に、あまりの人気の無さに、
実はオレはもともとスタートしていないのでは?
レース自体に参加していないのでは?
ここは本当に信濃なのか??そんな錯覚に陥った。

走っていると筋肉だけではなく脳も相当疲れる。
回りに人気はないし、なんとも不思議な気分になった。
夢を見ているような気分だ。

それでもオレはそれなりに走っていたし、
道なき下りの斜面はコーステープを探しながら走った。

そう、コーステープがあったから、これは確かに大会なんだ。
沢の底へ行ってしまいそうな魂を引き摺り戻した。
下りスピードを上げる。

道なき道を、たぶんこっちだろう的な感覚で走る。これが楽しかった。
このパートは独りぼっちでも寂しくない。
アドベンチャーワールドへようこそ、みたいな感じで懐かしささえあった。
幼少期の家から幼稚園に通う道にこういうところがあった。
道を外れるとトレイルアドベンチャーがあったのだ。
昔はこういうところで鬼ごっこしたりしたんだ。

トレイルランニングは懐古主義でもある。古く懐かしい。山の景色がそうさせる。

これでもう終わりだろう。つづら折りを降りる。
ウオッチを見る。30キロだ。
あと2キロ。もすぐ下界。
その地点にこのレース運営団体「北信濃トレイルフリークス」のメッセージボードが立っていた。
「このレースに出てくれてありがとうございます。
コースはいかがでしたか?お疲れ様でした。
最後力振り絞ってください」
記憶が定かではないが、そんな内容だったと思う。
素直に感動した。胸が熱くなる。
とても素晴らしい運営団体で、あちこちのコースに努力した整備の跡があった。
彼らの熱い思いが伝わってくるコースなのだ。

トレイルの出口に神社があった。
そこで無事下山できたこと。
このレースに出れたこと。
健康な身体であることに鈴を鳴らし手を合わせ頭を下げた。
そしてラスト、ロードのパートに出た。
力走した。力走できた。でもとても長い2キロだったなあ。
会場に入る直前に後ろを振り返ると今降りてきた山が真っ赤な紅葉で萌えていた。

今回、一瞬たりとも諦めることはなかったよ。
もうダメだとか、もうやめたいとか、もう無理とか思わなかった。
思った時点で足が止まるからね。

フィニッシュゲートが見える。
ゼッケン№、名前が読み上げられる。
良く走りきった、と両手を強く握りしめ、高く上げて栄光のフィニッシュを切った。

レースディレクターが一人ひとりを迎えてくれた。
オレは、いいレースを開催してもらったことに礼を言い深々頭を下げた。
後半は一人で走ったけど、一人であって独りではない。
こうやって運営をして待ってくれてる人達がいるのだ。




4時間54分。32キロ。累積標高2120m。
本日のトレイルジャーニー終了。

 

オレはあらためて思ったよ。
トレイルはとてもいいね!

追記
・一緒に参戦したミドリちゃん、女子6位入賞。
卓越したトレイルテクニックで急成長。嬉しい!!


・フィニッシュしたら、そこにヤスオちゃん。
なんとスキースクール時代の後輩と30年ぶりに会う。
みんな身体動かしてるね。嬉しい!!


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