(1971/ルネ・クレマン監督・共同脚本/フェイ・ダナウェイ、フランク・ランジェラ、バーバラ・パーキンス、モーリス・ロネ/98分)
観たのは二日前。
“「思い」は見えないが、「思いやり」は誰にでも見える”というTVCMが、思いやりの欠片もない頻度で繰り返し流されるので、テレビを中断して録画していた「パリは霧にぬれて」を観る。
映画館に毎週のように通っていた高校生時代、「SCREEN」の紹介記事は読んだものの劇場鑑賞はスルーした作品。ルネ・クレマンの「雨の訪問者 (1970)」に続くサスペンス物で、三十路に入ったばかりのフェイ・ダナウェイが美しく撮られている。
パリに住んで2年が経つ、二人の子供を持つアメリカ人夫婦。
妻のジル(ダナウェイ)が幼い息子パトリックを連れて、セーヌの川舟で遊んでいるシーンから始まり、出版社に勤める夫フィリップ(ランジェラ)は帰りが遅い二人を心配し、そんな父の様子を見ながら夕食の支度をしている長女キャシーの目にも涙が浮かんでいる。
霧に濡れたようなモヤッとした画面の効果もあり、如何にもニューロティックなサスペンスが始まりそうな雰囲気が出ているが、はたして、ジルはパリに来て以来、記憶障害のような症状に悩まされて精神科にかかっており、夫フィリップもそんなジルに関わらないように仕事に没頭しているかのように見える。
フィリップはジルに何事か隠し事をしていて、しかし観客にはしばらくソレが何なのかは分からない。
やがてフィリップがパリに引っ越したのが、ある“組織”から逃げる為だったことが分かり、組織はフィリップの住居も仕事先も突き止め、ついには組織の男(ロネ)が連絡をしてくる。そして、フィリップに“組織”に戻るように言う。断れば手段は選ばないと。
子供二人を乗せてドライブ中のジルに大きなトラックがぶつかったり、不審なベビーシッターが登場したりと、フィリップの家族の周りにも暗雲がたちこめはじめた頃、遊園地の帰りにジルが子供たちとはぐれる。フィリップは警察に捜索願を出すが、警察は精神不安定なジルに疑いの目を向けるのだった・・・。
ジルとフィリップが住むアパートの下階に住む友人役にバーバラ・パーキンス。デビューした頃はリズ・テイラー2世なんて言われてなかったっけ?
観ている内に彼女が事件の鍵を握る人物だったのを思い出してしまい、序盤で“組織”の男も出てくることから、大体の流れは分かってきた。それでも終盤にはハラハラドキドキが楽しめるのかなと思いきや、二人も登場人物が死んでしまう割には“組織”の正体も曖昧なままで、ハラハラもそれ程でも無し。最後には子供が無事に帰ってきて一安心ではあるけれども、フィリップ一家の平和も約束された訳ではない。
「雨の訪問者」もそうだったけど、クレマンは主人公の心理をサスペンス・ムードたっぷりに描くのに満足していて、終わってみれば事件そのものはあっけないんだよねぇ。
お薦め度は、“一見の価値有り”まではいかないな。
モーリス・ロネはカメオ的出演。
フランク・ランジェラは、一昨年公開されて賞レースでも話題になった「フロスト×ニクソン」で主演オスカーに名前が挙がったのが懐かしかった。
観たのは二日前。
“「思い」は見えないが、「思いやり」は誰にでも見える”というTVCMが、思いやりの欠片もない頻度で繰り返し流されるので、テレビを中断して録画していた「パリは霧にぬれて」を観る。
映画館に毎週のように通っていた高校生時代、「SCREEN」の紹介記事は読んだものの劇場鑑賞はスルーした作品。ルネ・クレマンの「雨の訪問者 (1970)」に続くサスペンス物で、三十路に入ったばかりのフェイ・ダナウェイが美しく撮られている。
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パリに住んで2年が経つ、二人の子供を持つアメリカ人夫婦。
妻のジル(ダナウェイ)が幼い息子パトリックを連れて、セーヌの川舟で遊んでいるシーンから始まり、出版社に勤める夫フィリップ(ランジェラ)は帰りが遅い二人を心配し、そんな父の様子を見ながら夕食の支度をしている長女キャシーの目にも涙が浮かんでいる。
霧に濡れたようなモヤッとした画面の効果もあり、如何にもニューロティックなサスペンスが始まりそうな雰囲気が出ているが、はたして、ジルはパリに来て以来、記憶障害のような症状に悩まされて精神科にかかっており、夫フィリップもそんなジルに関わらないように仕事に没頭しているかのように見える。
フィリップはジルに何事か隠し事をしていて、しかし観客にはしばらくソレが何なのかは分からない。
やがてフィリップがパリに引っ越したのが、ある“組織”から逃げる為だったことが分かり、組織はフィリップの住居も仕事先も突き止め、ついには組織の男(ロネ)が連絡をしてくる。そして、フィリップに“組織”に戻るように言う。断れば手段は選ばないと。
子供二人を乗せてドライブ中のジルに大きなトラックがぶつかったり、不審なベビーシッターが登場したりと、フィリップの家族の周りにも暗雲がたちこめはじめた頃、遊園地の帰りにジルが子供たちとはぐれる。フィリップは警察に捜索願を出すが、警察は精神不安定なジルに疑いの目を向けるのだった・・・。
ジルとフィリップが住むアパートの下階に住む友人役にバーバラ・パーキンス。デビューした頃はリズ・テイラー2世なんて言われてなかったっけ?
観ている内に彼女が事件の鍵を握る人物だったのを思い出してしまい、序盤で“組織”の男も出てくることから、大体の流れは分かってきた。それでも終盤にはハラハラドキドキが楽しめるのかなと思いきや、二人も登場人物が死んでしまう割には“組織”の正体も曖昧なままで、ハラハラもそれ程でも無し。最後には子供が無事に帰ってきて一安心ではあるけれども、フィリップ一家の平和も約束された訳ではない。
「雨の訪問者」もそうだったけど、クレマンは主人公の心理をサスペンス・ムードたっぷりに描くのに満足していて、終わってみれば事件そのものはあっけないんだよねぇ。
お薦め度は、“一見の価値有り”まではいかないな。
モーリス・ロネはカメオ的出演。
フランク・ランジェラは、一昨年公開されて賞レースでも話題になった「フロスト×ニクソン」で主演オスカーに名前が挙がったのが懐かしかった。
・お薦め度【★★=悪くはないけどネ】 ![テアトル十瑠](http://8seasons.life.coocan.jp/img/TJ-1.jpg)
![テアトル十瑠](http://8seasons.life.coocan.jp/img/TJ-1.jpg)
そういえばそうですね!
ジルに感情移入できたので、子供を捜す時のハラハラは楽しめたんですが、そこら辺まで考えてませんでした。もうすこし不安が後引くような終り方でもよかったのかな~。
クレマンさんの名作、「太陽がいっぱい」は犯罪者が主人公の犯罪サスペンスで、ハラハラ度はあちらの方が盛り上げやすい気がします。
これ、よくぞ書いてくださいました。
今のACのコマーシャルはもう洗脳レベルですね。
うんざりしてチャンネルを替えても同じのをやっているので逃げようがない(^^;
この映画、僕も若い頃スルーしてしまいまして、今に至っても観るチャンスに恵まれておりません。
フランク・ランジェラ、この頃は若くてもっと細身だったんでしょうね。
ACは『災害時用に作ったものではなく云々』とネットにコメントを出していたようですが、それにしても未だに洗脳レベルのCMが続いているのは如何なものか。
>この頃は若くてもっと細身だったんでしょうね。
アンソニー・パーキンスにひげ剃り跡の青いのをくっつけた感じでしょうか。
この後、吸血鬼の役なんかしちゃって、結構似合ってた印象があります。
多分、近々再放送があると思いますよ。
基本的には脚本が弱体で、サスペンスとしては水準以下ですが、当時の映画らしくムードで幾分か観られる作品にはなっているような気がしますね。
今のチャラチャラちかちか、時系列をいじくりまくって観客の頭を不要に混乱させるサスペンス映画を観るより余程良いと思います。
僕の方に紛れ込んできた変なコメントについて、先日は「映画は余り好きそうでないですが、映画について書くのは好きそうだ」というのがありましたよ。
僕は文章が書く苦手意識を克服する為に映画評を書き始めたので、考え方によっては誉め言葉なんですが、反論もせずに削除しました。
映画が分かってないヤツが書きそうな事ですな。