テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

ウォー・ゲーム

2006-02-22 | SF
(1983/ジョン・バダム監督/マシュー・ブロデリック、ダブニー・コールマン、ジョン・ウッド、アリー・シーディ/113分)


 以前「張り込み」で紹介したジョン・バダム監督を、ご贔屓にするきっかけになった作品。

 シアトルに住むコンピューター・オタクの高校生が、ゲームソフト会社にハッキングしたつもりが、ペンタゴンの国防システムコンピューターに侵入、米ソによる第3次世界大戦勃発の危機をもたらしてしまうというお話。

 主演の高校生デビットにアメリカ版ゴジラ「GODZILLA(1998)」のマシュー・ブロデリック。23年前ですから、若い若い! この時21歳ですが、充分高校生に見えました。
 ガールフレンド、ジェニファーには、アリー・シーディ。彼女はこの後のバダム作品「ショート・サーキット(1986)」にも主演しています。これもおかしなロボットが出てくるSFチックな映画でした。

 着想が素晴らしいローレンス・ラスカーウォルター・F・パークスのオリジナル脚本は、アカデミー脚本賞にノミネートされたとのこと。この二人の脚本作品には、フィル・アルデン・ロビンソン監督の「スニーカーズ(1992)」という、やはり元コンピューター少年だった友人同士が成人して敵同士で戦うというものもある。レッドフォード主演で、敵役がベン・キングズレーシドニー・ポアチエも出ていましたな。

*

 さて、「ウォー・ゲーム」の導入部は、アメリカの対ソ用の秘密基地から始まる。ソヴィエトが崩壊する前の話で、お互いに核武装して抑止力としていた時代だ。基地の中には核弾頭を積んだミサイルがあって、オペレーションブースではソ連からの攻撃を感知して、必要とあれば発射ボタンを押すようにマニュアル化されていた。発射ボタンの担当は軍人が二人一組で構成されている。(実際はボタンではなくて、キーを回すんですがネ)
 その日、いつものように担当者が交替して間もなく、コンピューターは非常事態を知らせてくる。危険レベルは最高でミサイル発射を指示しているが、まさかの事態に、二人の内の片方が発射キーを回せなくなってしまう。『2000万人が死ぬんだぞ。』
 キーに手をかけている方は、躊躇している相方に対して拳銃を向けてこう言う。『キーを掴むんだ!』

 実はコレは演習であったというオチだが、知らされていなかった担当者にとっては生命の危機に関わる事件だった。一方、国防省もこの事態を重く見ていた。この数秒の躊躇にアメリカの存亡がかかっているからである。
 かねてから国防システムのコンピューター化を進めていた担当者は、これを機にミサイル発射システムまでコンピューターに組み込む事を進言、受理される。

 主人公デビットがアクセスしたのが、このコンピューターだったのだ。

 IBMがパソコンを初めて世に出したのが81年で、現在のPCの元になったAT機は84年だから、この映画のパソコンにはWindowsは勿論、WWWもブラウザーもない。インターネットはあったようだが、一部の人間しか使っていなかっただろう。回線は一般回線しか無かったと思うが、デビットは“もぐり”で使っているとジェニファーには言っていた。アクセス手段はモデムではなくて、音響カプラーだった。
 白状しますと、この映画を見た頃はキーボードさえ触ったこともない私でした。カプラーは未だに見たこともありません。(女房が会員制のショッピングに使っていたのを忘れておりました^^)

 パンフレットで新しいゲームソフトが販売されることを知ったデビットは、タダで試そうとこの会社にアクセスを試みる。そして、突然繋がったのが、例のコンピューター。この辺は実際にはどうなんでしょうか? インターネットが国防システムとして始まったとはいえ、ねぇ・・・?

 繋がっても、ログインしなければ遊ぶことは出来ない。知り合いの大学生に聞いたり図書館で調べたりして、ついに秘密のパスワードを見つけだすデビット。相手がペンタゴンとは知らずにアクセスした彼は、中に組み込まれているゲームのリストを呼び出し、一番面白そうなモノを選ぶ。曰く、「全面核戦争」。
 ジェニファーとデビットは、面白半分でアメリカとソ連に別れて攻撃目標等を設定していくが、その頃国防基地の大スクリーンではソ連の攻撃が始まったとモニターしていた・・・・。

*

▼(ネタバレ注意)
 ガール・フレンドと一緒にそのゲームでひとしきり遊んだ後、居間に降りてきたデビットに飛び込んできたのが、ソ連の核ミサイルの危機を伝えるTVニュース。それは、さっきまで遊んでいたゲームソフトの成り行きによく似ていた。いや、アレに違いない。同じようにニュースで驚いたジェニファーも電話してくる。ビックリしたデビットは、彼女にこの事を誰にもしゃべらないように言う。
 部屋に戻るデビット。と、パソコンに繋がった電話が鳴る。なんと、相手は例のコンピューターだった。
 先程の「全面核戦争」の続きをやろうと言う。まだ終わっていない、これは、どちらかが勝つまでは終わらないゲームなんだと。
 大慌てで逆探知されないように回線コードを外したデビットだが、翌日には数人の男達に捕まってしまう。

 スパイ容疑でFBIの尋問を受けるデビット。ゲーム会社にアクセスしたつもりだったと言ってもFBIは信用してくれない。更に、ホスト・コンピューターは勝手に「全面核戦争」の続きを始めていた。それは、現実のモノではないのだが、軍事基地のモニターには、ソ連が潜水艦や戦闘機を配備しているように見える。ゲームの最終時間も設定済みのため、あと数十時間後にはミサイル発射の段階になるはずだ。
 ミサイルの発射の権限をコンピューターに依存している今のシステムで、果たしてこの暴走を止めることは出来るのか? そして、デビットの運命や如何に・・・。(な~んてネ)

 コンピューターへのログインは作成者の裏パスワードを使う。ちょっと、このパスワードは安直過ぎるけど、過程の描き方は面白かった。死んだとされたプログラム作成者の博士が実は生きていて、高校生のカップルは何とかしてもらおうと会いに行く。愛する妻子が事故でなくなった為、厭世的になった博士が、隠遁生活をしているという設定だった。
 元々は演習用に開発されたプログラムなのに、軍事用として使われたことにも嫌気を差していたようで、遅かれ早かれ人類はこうなる運命だから、明日死ぬ事を甘受しようではないかとまで言う博士だった。

 このプログラムは自分で学習能力を持っているのが画期的で、その学習能力も「2001年」のHAL並で、暴走し始めると人間からのアクセスを拒否、勝手にパスワードを消したりもする。ラストでは、この学習能力を逆手にとって人類滅亡は避けられるわけですが、一難去って又一難という終盤の面白さは抜群。全体としても、ストーリー・テリングが優秀な作品でありました。

 機械に依存する事への警鐘でもあるし、人間的な感性をなくしてはいけないというメッセージも感じさせた。
▲(解除)

*

 学校の成績は芳しくないが、機械に強いデビットの活躍も見所いっぱい。FBIに監禁されたドアを破る方法や、タダで公衆電話を使う方法は(使えば犯罪だろうが)、機械オンチの私にはオドロキばかりでしたな。

 初めて観た時には、バダムは第2のスピルバーグか、なんて思いましたが、どうやら職人監督に収まったようで、野心のあるテーマもなかったのか、特別な話題作はないようです。それでも、この頃のバダムは面白い映画を作ってました。
 人が死んだりしないので強烈なシーンは無いんですが、緊張感はしっかりと出せてますので手に汗握ります。同じ年の「ブルーサンダー」も面白かったなあ。





・お薦め度【★★★★=SFファンの、友達にも薦めて】 テアトル十瑠

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