(1988/ロバート・レッドフォード製作・監督/チック・ヴェネラ、ルーベン・ブラデス、ソニア・ブラガ、ジョン・ハード、クリストファー・ウォーケン、カルロス・リケルメ、ダニエル・スターン、ジュリー・カーメン、ジェームズ・ギャモン、リチャード・ブラッドフォード、メラニー・グリフィス/118分)
処女作の「普通の人々(1980)」で見事オスカーを獲ったレッドフォードの2作目の監督作品。『初監督作品には、人間の行動や感情を描いたものがイイと思った』らしいが、8年後の今作では一転、社会派の面もある彼らしいテーマを選んだ。環境問題、人種差別と貧困、政治力について。ニューメキシコ州のとある田舎町を舞台にした群像劇であります。
ニューメキシコの田舎町ミラグロでリゾートの開発計画が進む。水利権を奪われた先住民達の土地は農業をするわけにもいかず、ほとんどが建設会社に買収されていたが、ホセ(ヴェネラ)だけは(ゴルフ場用地の一部になる予定の)先祖からの土地を守っていた。仕事らしい仕事もなく、開発の工事現場に行っても職にありつけなかったホセは、むしゃくしゃして建設会社所有の川から自分の土地へ続く小さな水門を蹴破ってしまう。かつて父親が豆を作っていた畑に川の水が染み込んでいく。荒れ果てて、白っ茶けていた土が水分を含んで黒くなっていくのを見ながら、ホセは水の流れを止めることはしなかった。
『この畑をどうしよう。とりあえず、一晩考えてみるか』
ホセの小さな反乱は、やがて町全体を巻き込んだ騒動へと発展していくのだが・・・。
一応はホセが主人公のようですが、登場人物のバランスから言えば群像劇でしょう。
地元の保安官バーニー(ブラデス)はホセとは幼なじみで、ホセを傷つけたくないので、水を使ったことだけで逮捕するのは他の者が騒ぐので得策ではないと町長を牽制し、ホセにも考え直すように働きかける。
自動車修理工場を経営するルビー(ブラガ)は開発計画を憂いている女性で、ホセの暴挙を歓迎、この事を契機に開発工事の反対運動を盛り上げようとする。
余所から移り住んでいた人権派の元弁護士チャーリー(ハード)は、小さな菜園で野菜を作りながら手作り新聞を発行していたが、ルビーにより開発計画反対の記事を書くように薦められる。
卒論用に体験レポートを書きに都会からやってきた社会学部の大学生ハービー(スターン)は、予定の宿が確保出来ず、ホセに声をかけられて豆畑を手伝うことになる。
開発会社の社長ディバイン(ブラッドフォード)は若い妻(グリフィス)を連れて、開発計画のお披露目パーティーに参加する。
開発推進派には州知事やミラグロの町長もいて、地元の森林調査官もホセを責め立てる側。州知事から依頼を受けてミラグロへやって来る恐い刑事モンタナ(ウォーケン)は、ホセのバックにはチャーリーがついていると思っている。
その他、雑貨屋のオヤジに酒場のマスター、少し頭のおかしなマスターの母親などなど、ヒスパニック系の町の(どちらかというとミラグロ“村”と言った方が合ってるが)住人達もたくさん出てくる。
そして、この物語で狂言まわしとなっているのが、ホセの豆畑の横で暮らす長老アマランテ(リケルメ)と悪戯好きの豚ルピタ。アマランテの目には6年前に死亡したホセの父親が天使となって見えていて、時々会話を交わす。レッドフォードの作品には「バガー・ヴァンスの伝説」のように、時々不思議なキャラクターが出てくるが、この作品もこの天使のシーンがあることでファンタジー色を出していた。
原題が【THE MILAGRO BEANFIELD WAR】。脚本を書いたのは、原作者のジョン・ニコルズと「スティング」のデヴィッド・S・ウォード。
田舎町の豆畑をめぐって、色々な思惑を抱えた人々のアレコレが、バランスよく構成された上手い本でした。
一人の農民の反乱に手を焼く利権屋達を皮肉りながら、目先の都合に踊る大衆にも非があることをも描く。定石通りではありながらツボを外さないユーモアを狙った演出は、「普通の人々」でのオスカー受賞がフロックではなかったことを証明していました。今では、レッドフォードの演出が一級品であることを疑う人はいないと思いますがね。
自然を美しく撮ったカメラはロビー・グリーンバーグ。
デイヴ・グルーシンがアカデミー作曲賞を受賞したそうです。
皮肉な視点をもちながら棘がないのは好感がもてるものの、結末にインパクトが無かったのでお薦め度★一つマイナスしました。
▼(ネタバレ注意)
開発工事現場で不審火が発生したり、ホセの家に銃弾が撃ち込まれたりして、平和な町にも不穏な空気が流れ出し、アマランテまでが拳銃を持ち出す。町の住民も次々に拳銃の弾を買いに来、ディバインまでもがピストルを携帯するようになる。
ホセの畑で豆の収穫がもうすぐという朝、畑にやってきたホセが見たのは、豆を食い荒らすルピタの姿。慌てて銃をもってルピタを追っ払おうとしたホセは、それを見たアマランテと撃ち合いになり、誤って老人を撃ってしまう。正当防衛は明らかなんだが、目撃した町人はホセに逃げろと言う。ホセがスケープゴートになるのは目に見えているからだ。
この後、ホセはモンタナから追跡される。町外れの岩山での追跡シーンは「明日に向って撃て!」を思い出しました。
最終的にはアマランテが回復し、ホセも無罪放免、開発計画も中止となるというハッピーエンドですが、はてさて、これでミラグロの町はどうなるのか。開発が中止になっただけでは町の衰退は止められないので、ホントはこれから先が問題なんですがね。
▲(解除)
処女作の「普通の人々(1980)」で見事オスカーを獲ったレッドフォードの2作目の監督作品。『初監督作品には、人間の行動や感情を描いたものがイイと思った』らしいが、8年後の今作では一転、社会派の面もある彼らしいテーマを選んだ。環境問題、人種差別と貧困、政治力について。ニューメキシコ州のとある田舎町を舞台にした群像劇であります。
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ニューメキシコの田舎町ミラグロでリゾートの開発計画が進む。水利権を奪われた先住民達の土地は農業をするわけにもいかず、ほとんどが建設会社に買収されていたが、ホセ(ヴェネラ)だけは(ゴルフ場用地の一部になる予定の)先祖からの土地を守っていた。仕事らしい仕事もなく、開発の工事現場に行っても職にありつけなかったホセは、むしゃくしゃして建設会社所有の川から自分の土地へ続く小さな水門を蹴破ってしまう。かつて父親が豆を作っていた畑に川の水が染み込んでいく。荒れ果てて、白っ茶けていた土が水分を含んで黒くなっていくのを見ながら、ホセは水の流れを止めることはしなかった。
『この畑をどうしよう。とりあえず、一晩考えてみるか』
ホセの小さな反乱は、やがて町全体を巻き込んだ騒動へと発展していくのだが・・・。
一応はホセが主人公のようですが、登場人物のバランスから言えば群像劇でしょう。
地元の保安官バーニー(ブラデス)はホセとは幼なじみで、ホセを傷つけたくないので、水を使ったことだけで逮捕するのは他の者が騒ぐので得策ではないと町長を牽制し、ホセにも考え直すように働きかける。
自動車修理工場を経営するルビー(ブラガ)は開発計画を憂いている女性で、ホセの暴挙を歓迎、この事を契機に開発工事の反対運動を盛り上げようとする。
余所から移り住んでいた人権派の元弁護士チャーリー(ハード)は、小さな菜園で野菜を作りながら手作り新聞を発行していたが、ルビーにより開発計画反対の記事を書くように薦められる。
卒論用に体験レポートを書きに都会からやってきた社会学部の大学生ハービー(スターン)は、予定の宿が確保出来ず、ホセに声をかけられて豆畑を手伝うことになる。
開発会社の社長ディバイン(ブラッドフォード)は若い妻(グリフィス)を連れて、開発計画のお披露目パーティーに参加する。
開発推進派には州知事やミラグロの町長もいて、地元の森林調査官もホセを責め立てる側。州知事から依頼を受けてミラグロへやって来る恐い刑事モンタナ(ウォーケン)は、ホセのバックにはチャーリーがついていると思っている。
その他、雑貨屋のオヤジに酒場のマスター、少し頭のおかしなマスターの母親などなど、ヒスパニック系の町の(どちらかというとミラグロ“村”と言った方が合ってるが)住人達もたくさん出てくる。
そして、この物語で狂言まわしとなっているのが、ホセの豆畑の横で暮らす長老アマランテ(リケルメ)と悪戯好きの豚ルピタ。アマランテの目には6年前に死亡したホセの父親が天使となって見えていて、時々会話を交わす。レッドフォードの作品には「バガー・ヴァンスの伝説」のように、時々不思議なキャラクターが出てくるが、この作品もこの天使のシーンがあることでファンタジー色を出していた。
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原題が【THE MILAGRO BEANFIELD WAR】。脚本を書いたのは、原作者のジョン・ニコルズと「スティング」のデヴィッド・S・ウォード。
田舎町の豆畑をめぐって、色々な思惑を抱えた人々のアレコレが、バランスよく構成された上手い本でした。
一人の農民の反乱に手を焼く利権屋達を皮肉りながら、目先の都合に踊る大衆にも非があることをも描く。定石通りではありながらツボを外さないユーモアを狙った演出は、「普通の人々」でのオスカー受賞がフロックではなかったことを証明していました。今では、レッドフォードの演出が一級品であることを疑う人はいないと思いますがね。
自然を美しく撮ったカメラはロビー・グリーンバーグ。
デイヴ・グルーシンがアカデミー作曲賞を受賞したそうです。
皮肉な視点をもちながら棘がないのは好感がもてるものの、結末にインパクトが無かったのでお薦め度★一つマイナスしました。
▼(ネタバレ注意)
開発工事現場で不審火が発生したり、ホセの家に銃弾が撃ち込まれたりして、平和な町にも不穏な空気が流れ出し、アマランテまでが拳銃を持ち出す。町の住民も次々に拳銃の弾を買いに来、ディバインまでもがピストルを携帯するようになる。
ホセの畑で豆の収穫がもうすぐという朝、畑にやってきたホセが見たのは、豆を食い荒らすルピタの姿。慌てて銃をもってルピタを追っ払おうとしたホセは、それを見たアマランテと撃ち合いになり、誤って老人を撃ってしまう。正当防衛は明らかなんだが、目撃した町人はホセに逃げろと言う。ホセがスケープゴートになるのは目に見えているからだ。
この後、ホセはモンタナから追跡される。町外れの岩山での追跡シーンは「明日に向って撃て!」を思い出しました。
最終的にはアマランテが回復し、ホセも無罪放免、開発計画も中止となるというハッピーエンドですが、はてさて、これでミラグロの町はどうなるのか。開発が中止になっただけでは町の衰退は止められないので、ホントはこれから先が問題なんですがね。
▲(解除)
・お薦め度【★★★=一度は見ましょう、私は二度見ましたが】
ポスターの画像がかわいい!
「バガー・ヴァンスの伝説」は結構好きでした。大人の寓話って感じで。
この作品も機会があったら、見てみよっと
コチラも天使が踊っている図ですね。