テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

バガー・ヴァンスの伝説

2005-08-28 | ファンタジー
(2000/ロバート・レッドフォード監督・共同製作/ウィル・スミス、マット・デイモン、シャーリーズ・セロン、J・マイケル・モンクリーフ、ジャック・レモン)


 ゴルフの映画というのは珍しい。これ以前に観たのは、ロン・シェルトンの「ティン・カップ(1996)」(主演:ケヴィン・コスナー)くらいしか覚えていない。

 ロバート・レッドフォードの「モンタナの風に抱かれて(1998)」に続く監督第6作

 落ちぶれたかつての天才ゴルファーが、神秘的なキャディーに助けられて、昔の恋人の企画した著名なゴルファー達との試合に挑戦するという話。アメリカの大恐慌時代の話だ。
 “バガー・ヴァンス”というのは、その神がかり的な助言を与える黒人キャディーの名。演じるのはウィル・スミス。忽然と現れ、『スイングを失った』ゴルファーにキャディを申し出る。主役のゴルファーに憧れる少年ハーディー(モンクリーフ=この作品の語り手の少年時代)と一緒に、試合前夜のコースの下見をするシーンでの会話は、スポーツを神聖視するアメリカらしく、人生案内的で印象深い。

 レッドフォードらしい個々の人間の心理描写がしっかりと描かれていて、今回はファンタジーの要素が過去の作品群より強い。観賞後にポジティブな気分になれる作品である。

 “著名なゴルファー達”というのは、球聖ボビー・ジョーンズウォルター・ヘーゲン。どちらも実在したゴルファーで、演じたのが、ジョエル・グレッチブルース・マックギル。ヘーゲンは知らないが、B・ジョーンズは、あのマスターズが行われるアトランタ、オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブのコースも設計した、ゴルフ界の偉人ですな。

 主役の天才ゴルファー、ラナルフ・ジュナ役はM・デイモン。
 16歳でジョージア・オープンに優勝したジュナは、サバーナの町の誇り。第一次世界大戦に意気揚々と参加するも、大勢の部下を死なせた事にショックを受け、故郷にもひっそりと帰ってくる。
 酒浸りで無気力状態のジョナは無精髭があってそれらしかったが、試合に参加した時のデイモンは、髭無しの顔がえらく若く感じて、“復活”というよりも“新人の挑戦”という雰囲気だった。
 デイモンはゴルフクラブを握るのもこの時が初めてらしく、プロのコーチに習ってグリップから覚えていったらしい。スイングの美しい前出の二人と違って、彼のティー・ショットは素人目にもいまいちであった。

 ジュナの恋人アデール役はS・セロン。「サイダーハウス・ルール(1999)」の翌年なのに、少女のようだった前作と違って随分と大人びて見えた。「華麗なるギャツビー」を彷彿とさせる衣装の数々。ファッションは分からないけど、シャーリーはどれも美しくて見とれてしまいそうだった。

 W・スミスは「インデペンデンス・デイ(1996)」と「メン・イン・ブラック(1997)」くらいしか観てない。神秘的なイメージは全然なくて、どんなモノやらと思っていたが、いつも穏やかな表情で静かにしゃべる“バガー・ヴァンス”の不思議なキャラクターが作れていた。
 『父親が会社のオーナーだったこともあり比較的裕福な家庭に育つ。その大らかな性格から“プリンス”の愛称で呼ばれていた。』とのことだから、適役だったのかも知れない。

 <前述した“バガー・ヴァンス”の(少年への)言葉>
 『グリップが正しければ、人生の把握(グリップ)も正しい。ゴルフのリズムは人生のリズムだ。』
 『自分のスイングを見つければ勝てる。人は誰でも、どこかに、自分のスイングを持ってる。もって生まれたもので、教えたり学んだり出来ないスイングだ。大切にしないと、それは身体のどこかに埋もれてしまい、見失ってしまう。あとに残るのは後悔だけ。スイングの形さえ忘れる。』
 『自分のスイングを忘れるな。人は誰でもどこかに唯一のスイングを持っている。宇宙の一部になるまで打ち続けろ。持って生まれたものだ。』

 老人になったハーディーを演じたのがジャック・レモン。これが遺作になったとのことである。映画の中でゴルフも出来てたのに・・・やっぱり、寂しいなぁ。

2009年の再見記事はコチラ

・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】 テアトル十瑠

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6 コメント

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TBありがとうございますた! (anupam)
2006-01-19 19:10:24
ジャック・レモン、いい味出してましたよね。亡くなってしまい残念です。



ウィル・スミスはものすごいジェントルマンなんですって。お母さんのしつけが厳しかったらしく、女性への配慮はすごい行き届いているらしいです。どこか育ちのいいボンボンっぽく見えますよね。
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実は・・・ (十瑠)
2006-01-19 21:15:51
こんな映画があったのさえ知らずにいたのに、偶然レンタルショップで見つけて、中古販売になってたので買って観たんでした。

拾いものでした。

レモンの遺作がちゃんとした映画でよかったです。
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TBありがとうございました! (なぎさ)
2006-02-24 15:57:57
老人になったハーディーを演じてたのは、やっぱりジャック・レモンだったんですね~!

あ~、これが遺作だったんですねぇ。



二人のゴルファーが実在の人物だったことなど、とても参考になりました☆

当方の拙い記事ですが、TB返しさせてくださいね。
返信する
TB返し&コメント、ありがとうございました! (十瑠)
2006-02-24 17:45:27
ジミーちゃん似のマット・デイモンか・・・。



言われるとそうかも。でも、マットファンには怒られちゃうよな~
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TB返し、ありがとうございました。 (180tcp)
2009-06-07 18:29:18
こんにちは、十瑠さん。先日、TBさせていただいた
「俳優別映画紹介」(http://filters417.blog37.fc2.com/)の
管理人の180tcpです。
TB返し、ありがとうございました。
十瑠さんのサイト拝見しました。
情報量が多く素晴らしいサイトですね。
事後報告で申し訳ありませんが、この度、勝手ながら
貴サイトを掲載させていただきました。
もし、可能でしたら相互リンクをお願いできませんでしょうか?
ご検討いただければ幸いです。
今後とも、よろしくお願いいたします。
返信する
いらっしゃいませ、180tcpさん (十瑠)
2009-06-07 21:42:22
“お気に入りサイト”への掲載ありがとうございます。

>可能でしたら相互リンクをお願いできませんでしょうか?

ブログの場合は、当方ではブックマーク欄ではなく“Blog List ”ページに掲載する事になっていますので、ご了承下さい。

コチラこそ、宜しくお願いします。
返信する

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