幕末気象台

おりにふれて、幕末の日々の天気やエピソードを紹介します。

文久三年七月九日、十日の大風雨

2021-08-15 13:00:55 | Weblog
 文久年間の台風と思われる風雨をみてまいりました。
やってみて、レ-ダ-や衛星雲画像のない時代の、台風予報の難しさを痛感いたしました。
台風予報で、富士山頂のレーダ-設置は画期的なものだったのだと改めて分かった次第です。

今回は、文久最後の台風と思われる、文久三年七月九日、十日の大風雨について調べて見ました。
先ず、七月九日の天気を見てみますと、

文久三年 7月9日 新暦 8月22日 英艦横浜に帰着

晴天夕少々雨気也【奄美大島】晴天北風【鹿児島】晴天【豊前】晴天【高山】晴【小倉】
晴【下関】 晴天【田之浦】 晴、時々曇【山口】照、風高し、夕そはへ【広島】
陰小雨風後甚雨【京都】雨下【若山要助日記】【京都】 昨夕より大風雨【木津】雨降風荒吹夜同断【京都】昨夜より烈風,今日風雨【大坂】辰刻より大雨【池田】
雨、、晩方雨やむ、夜月明也【土佐市】
昨夜より大雨、今日終日長瀬もやう大降、前川昼後船留ル【松坂】 雨ふり天気【豊田】曇天、朝風雨【紀州田辺】雨天、時々大雨風荒吹しける、、終日同様、夜前より出水、定水より七八尺上ル、夕方より風立雨とも止む【熊野】
晴【鯖江】晴昨夜より今朝小風【巻町】 雨天【鳥取】雨降【鰍沢】雨【甲府】
北気ニ而陰、時々時雨、少々辰巳ニ替、大時雨、又々息、又降【横須賀】雨天、久々照続候処昨夜中より折々雨今日も折々降余程湿ニ相成候【生麦】曇天【藤沢】
辰巳風天気夕刻より大雨【新島】夜中より雨ふる、四頃止、又昼前より強く降る、、夕方少し晴る、日暮又降出し、深夜風雨【齋藤月岑日記】【江戸】終日雨夜更ニ成大風【世田谷】晴朝より折々大雨度々81度【江戸】
曇り五つ半頃降り八つより晴れる間もなく曇る【江戸】大雨【武蔵村山】今暁大雨追々引続降、、夜中雨降大風【多摩】 大雨【国立】 ●朝より雨大降いたし【あきる野】雨多くふり、水出ける、是にてよくしめりける【青梅】
雨天西南風【銚子】朝大雨、夫より時々雨【吉野家日記】【流山】雨降、四月より今日迄夕立或俄雨のみにして本降の雨一日もなし、されとも折々夕立有て田畑ともに作物よろしく人気穏なり【中之条】
久々ニ而雨ふり、78度、86度、明七ツ前より雨降、明六ツ時止六ツ半時より雨ふり、五ツ時迄大雨夫より快晴暑気、八ツ時より又々雨降半時斗にて止、夜中も至極晴【大高氏記録】【水戸】昨夜ヨリ雨,今朝五ツ頃ヨリ甚【日光】
朝より時雨昼頃大雨南風有夕八ツ頃より雨夜ニ入迄【相馬】
曇【山形】 晴【川西】大暑成【田代】晴【津軽】
曇天【日鑑記】【厚岸】


とありまして、九州や中国地方は殆ど晴天となっていて、天気の崩れはありません、四国では、晩前に影響あった様子です。一方近畿では日中に雨風が強く、関東では夜に大雨強風となっております。
東北でも 南部の太平洋側で影響が出ています。 してみますと、台風は近畿から方面から関東方面へ東北東へ進路をとったような感じもします。
翌十日は、

文久三年 7月10日 西暦 8月23日

晴天北東風【鹿児島】晴天、今晩雨【高山】晴天【豊前】 晴【小倉】晴、昼時分白雨、両度岡水流【小倉】
晴、、夜中小雨【土佐市】晴風、小震【丸亀】
晴【山口】 晴天【田之浦】快晴午時白雨【下関】 晴【長府付近】照、、四ツ過地震、長々三度に至る【広島】
西風新涼陰天【大坂】朝陰小雨後属晴【京都】雨降夜曇【京都】  雨間雲西に変ル、昨日出水川留、間々てらてら、折々雨降ル、、夜雨降ル【熊野】
天気【松坂】 朝より雲登る辰巳風強し、、夜大雨【豊田】
半天【鳥取】 曇折々小雨【巻町】晴【鯖江】
西風天気【新島】南気ニ而大時雨、後ニは息、又々時雨降【横須賀】 雨風【藤沢】 陰天、昨夜中より大風吹【生麦】
風雨、、四時前より雨止、曇、風【江戸】朝七つ半大雨降る五つ頃晴れる【江戸】昨夜より嵐今朝雨止、風【江戸】
嵐【世田谷】四ツ時頃迄ふる、後日天気にて南風吹【青梅】大雨風【国立】
雨天南風【銚子】 暁より大南風雨、四ツ時頃雨止、夫より南風【流山】昨夜ヨリ大雨、昼後ヨリ止【日光】曇或雨折々ふる【中之条】
暁七ツ半頃南大風雨朝少々風静ニ成り雨有夕七ツ半頃より晴【相馬】 昼頃より大雨也【花巻市】【矢沢地区】 雨、夜大雷雨【山形】大暑昼過より雨ニなり度々ふり【田代】
昼頃大雨半時計降【鯵ヶ沢】 雨天【厚岸】

とあって、大雨強風は関東で午前中、北東北では午後からとなっています。また、北海道厚岸町でも雨となっていて、台風の影響があるように思えます。

文久三年 7月11日 西暦 8月24日

曇雨【奄美大島】曇、晴天【高山】晴天西風【鹿児島】 晴天【豊前】晴【小倉】
夜涼、78度【丸亀】 半晴、、夜月明なり【土佐市】 晴【下関】晴、、大分冷気ニ成【山口】照、雲あり【広島】
半天【鳥取】晴、昼後雨【鯖江】晴暑甚敷夕刻雨諸有人悦無限夜ニ入益々降雨【巻町】
晴【京都】 晴又曇【京都】 陰辰半後晴暑【京都】双天夜同断【京都】晴【大坂】曇未刻小雨【池田】
夜雨降ル【熊野】雨ふり、、夜天気【豊田】曇り、四ツ過よりてらてら、、八ツ過より一しきり雨降ル、、 折々雨【松坂】
大風雨【駒ケ根市】 雨降【鰍沢】 雨【甲府】
辰巳風雨【新島】 大南ニ而大時雨、夜ニ入大雨降、雷鳴あり【横須賀】雨降り【藤沢山日鑑】 雨天、南風強シ【生麦】
朝晴、夫々少し雨、、冷気なり、、夜も雨【江戸】大風折々雨78度【江戸】 午後風雨【江戸】朝晴時々小雨風【世田谷】晴天、、四つ時雨降る【江戸】 雨ふる【青梅】
七月中、79度、83度、朝より快晴むら雲折々雨振り、大南風ふく、夜中も大南風ニ而夜明方止【水戸】朝晴、四ツ時頃より時々大雨、南風【流山】 晴曇或雨降【中之条】 天気西南風【銚子】大雨大風【国立】揚げ雨【武蔵村山】
雨天【石川日記】【八王子】 風雨【富沢家日記】【多摩】
朝より暑気強し晴夕八ツ頃大時雨【相馬】 晴【相馬】半晴【山形】天気【尾花沢】朝風八ツ過より雷声雨夜入強し【田代】下り風ニて少々ふり、盆中折々ふり雨【鯵ヶ沢】
晴天【日鑑記】【厚岸】

七月十一日台風は一過したと思われますが、東日本でムラのある天気となっています。
水戸や銚子、流山では南寄り風が吹いています。本来ですと台風の反時計まわりの風の循環から、西または北よりの風が吹けば分かりやすいのですが、実践では理念通りは動かないようです。

また、はっきりしない分析になりましたが、文久年間は猛烈な台風の上陸はなかったようです。
敢えて、被害の大きい台風をあげれば、薩英戦争時の台風だったと思います。
もし、砲弾の中をペリカンが飛んでいたとしたら、大変珍しい景色だったでしょう。

ながながと台風を調べてまいりましたが、能因法師の一句にて締めたいと思います。

     都をば 霞とともに立ちしかど 秋風ぞ吹く 白河の関
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4 コメント

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重ねてお礼 (frankjuso)
2021-10-07 11:35:53
閲覧おそくなりました。謝。
調べてみるとペリカンけっこう飛来してます(下記)。季節も夏とは限らないようです。残念ながら大坂のみつかりません。とはいえ、文久年間では、2年8月の尾張熱田が唯一記録に残っていますので、調べていただいた「文久二年七月二十四、二十五日(旧暦)に近畿・中部に上陸した台風」を最有力としたいと思います。大阪市立自然史博物館に問い合わせたところ、ペリカンは寒さに強く、越冬はもちろん、エサが豊富な淀川でずっと暮らすのも可能とのことですが、文政9年(1826)以後は、文久まで記録に現れていないので、無視してよいかと考えます。文久三年以後では、ちょっと間が空き過ぎるかと。

永享2年 (1430)閏11月30日 ペリカン 船津の漁師が、全身白く、嘴の下にウタ袋のある大鳥を京都に持参する(看聞御記)。
享保1年(1716)冬 ペリカン 堺の今地に2羽が飛来、1羽を捕える(月堂見聞集)。
享保10年(1725)10月1日 ペリカン 常陸国土浦で捕獲、幕府に献上(享保世話)。
文化12年(1815)8月26日 ペリカン 豊後国海部郡掻懐郷で撃つ(堀田禽譜)。
文政3年(1820)夏 ペリカン 阿波国那賀郡庄村に飛来、望遠鏡で数日観察・写生(重修本草綱目啓蒙・補記)。
文政9年(1826)秋 ペリカン 紀州紀ノ川河口に雌雄が出現(記南六郡志)。
文久2年(1862)8月 ペリカン 尾張熱田の桜新田で捕獲(ガラン鳥図)。
磯野直秀「珍禽異獣奇魚の古記録」2005(慶応義塾大学学術情報リポジトリ)より。

ホシバシペリカンが淀川に来た場合、食物となる魚は充分にあるでしょうから、暮らすのは問題ないと思います。
越冬できるかとなると、寒さに耐えられるかという話になります。けっこう暖かい地域で暮らす鳥ではありますが、こうした大型の水鳥は冬の寒さに強いので、大阪の動物園でも普通に野外ゲージで飼われています。したがって、寒さもさほど問題ならないんじゃないかと思います。
とすると、大阪でずっと暮らすのも可能じゃないかと考えます。
いろは丸 (長期間お目通し感謝いたします。)
2021-10-07 22:19:22
大型台風以外で幕末の台風にを調べるのは初めてで、
台風かどうか、判断しにくい部分も多くあいまいな結果となってしまいました。
思いがけず、期間が長くなってしまいましたが、その都度お励ましをいただき感謝しております。
今後、ペリカンの記録が史料に出てきましたら、お知らせいたします。
ありがとうございました。
あらし吹く三室の山のもみぢ葉は (frankjuso)
2021-10-17 11:03:49
龍田の川のにしきなりけり

おかげさまで、拙稿アップすることができました。貴兄の記事・コメントをそのまま並べただけで、整理も行き届いておりませんが、ご容赦。一読いただければ幸いです。
https://www.facebook.com/hachikenya/posts/5375987145762410

(ご参考までに)JCDP(日亜気候データ計画)のサイトで、日記記載の天候記録が公開されています(ただし、現在のところ、弘前藩庁日記」だけのようです)。すでにご存じかも知れませんがお知らせします。http://jcdp.jp/daily-diary-weather-records-jp/
山が冠雪しました。 (いろは丸)
2021-10-24 15:49:01
このところの寒気で近山に雪が積もりました。
夏は暑く、冬は寒い、当たり前のことですが、こちらの冬は大変です。大阪がうらやましい季節です。
JCDP(日亜気候データ計画)のこと、知っておりました、弘前藩庁日記はCDで販売しておりますので、購入いたしました。
また、何かございましrたらご教示宜しくお願いします。

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