特待生と野球留学

「特待生」、「野球留学」、「アマチュアリズム」に焦点を絞って展開します。

先駆者

2007年06月01日 | アマチュアリズム

私は、いつの頃からか「アマチュアリズム」を“宗教”だと感じていました。ただ、「セットポジション」ではこの問題に(ほとんど)触れていませんので、Web上でアマチュアリズムを“宗教”と呼んだのは、このブログを始める直前の4月21日です。

んだ>特待生
学生野球憲章とはアマチュアリズムという名の“宗教”における、いわば経典です。「学生野球憲章に時効はない」と言う田名部氏はこの“宗教”の熱狂的信者です。信仰は自由です。

先日、Web検索しているうちに、とても興味深いブログをみつけました。

Catalonia is not Spain>プロ野球の裏金問題について・・・「学生野球」という名の「宗教」
しかし,アマチュアリズム自体には,こう疑問が浮かびます。
「スポーツによる金銭的な報酬を受けるべきではない?それはなぜ?」
と。私は,正直よくわかりません。知っている方がいれば教えてほしいのですが,私は,おそらく合理的な理由が無いんだろう,と思います。つまり,これは「信仰」だろうと。

これは3月17日付の記事です。そしてまた、この記事では学生野球憲章に「アマチュアリズム」という言葉が存在しないことにも触れてあります。私がこの点に触れたのは5月9日付の「アマチュア資格とは?」です。ずいぶん先を越されていたわけです。先駆者には敬意を表さねばなりません。

さて、この記事は、田名部氏の「びっくりする話があった」「そんなばかなことがあるもんかと思った」という発言を報じるニュース記事から始まります。実は、私もこれには「びっくり」しました。「そんなばかな」とは思いませんでしたが…。

ブログの筆者は田名部氏が「びっくり」したことに「びっくり」しているわけですが、悶絶・昏倒していただけそうな話もあります。ほんの数年前のことです。東北地方のある私立高校(もちろん申告校)が、かつてプロ球団で春季キャンプ中に臨時コーチを務めたことのある大学教授にトレーニングメニューの作成を依頼していたことが問題になったのです。

結果的には不問に付されたはずですが、こんなことさえ憲章違反(臨時コーチであっても元プロ関係者だという理屈)に問われかねないのが学生野球という競技なのです。もうとっくに削除してありますが、私は「んだ」に“こんなことでは、自分は野球ファンだと胸を張って言えない。肩身の狭い思いをさせてくれるな”と記述したのを今でも鮮明に覚えています。

アマチュア野球ファンにとっては高校生がプロの練習に行ったというのは大問題(になることがわかっているわけ)ですが、世間様の目は決してそうではありません。この場合、後者が健全な視点です。“教主様”の横暴にあまりにも寛容でありすぎたことを野球ファンは自省しなければなりません(ということで、このブログを始めたわけです)。

先のブログの筆者は、続いて学生野球憲章に言及します。すでにご本人はお気づきのようですが、初めて学生野球憲章を読む人が陥りやすい落とし穴に嵌ってしまいます。

学生野球憲章は、前文の理念に基づいて各条項が定められたのではありません。まず先に条項があって、前文はあとから付け加えられたものなのです。先にあった条項とは野球統制令です。格調高い前文はあとでひねり出したものです。

「日本学生野球憲章」そもそもどうして生まれたの?
(産経新聞 2007/05/14 08:55)
「日本学生野球憲章」は、昭和25年の制定。内容は終戦の翌年の21年に日本学生野球協会の前身・学生野球指導委員会が策定した「学生野球基準要綱」を基本としたものだ。<略>協会史は「選手として何らの恩恵も報酬も受けないところに学生野球の限りない尊さがあり、さん然たる輝きがあるからだ」と、その精神を説明する。

学生野球憲章と野球統制令の間に挟まれるのが学生野球基準要項(学生野球協会のWebサイトでは「要綱」でなく「要項」)です。基準要項ができたのは学生野球指導委員会設立時の1946年12月であり、翌47年5月に野球統制令は廃止されました。で、その野球統制令は次のような背景があって発令されたものです。

【コラム・断】アマ野球事情の今昔 (産経新聞 2007/05/18 08:52)
 チームの遠征は必ず1等車利用。宿泊は超高級旅館。ファンは人気選手を接待づけ。酒も女も望みのまま。人気選手なら、親の生活費までチームの予算で賄われる。八百長組織まで発生して、もう目茶苦茶だ。
 はて、何の話か。大正から昭和初期のアマチュア野球、特に大学野球だ。試合の入場料収入が膨大で、学校や関係者が潤う。利権が増殖した。

当時、日本にはまだプロ野球はありません。また、大学野球はすでに私学全盛ですが、(当時の)中等野球はまだ公立優位の時代です。もちろん、軍部の台頭という時代背景やスポーツの政治利用という側面もありますが、アマチュア野球には暗い過去があるのです。

そのうち、野球統制令と学生野球憲章を逐条比較したいと思います(「セットポジション」でやるかもしれません)が、とりあえず本日はここまで。