河北新報より転載
<宮城最終処分場建設>衆院解散で暗礁に
急展開の衆院解散で、国が進める指定廃棄物の最終処分場建設が暗礁に乗り上げている。望月義夫環境相は解散前夜の今月18日、県内3カ所で実施する計画のボーリング調査を来春以降に先送りする意向を表明。大臣ら政務三役が衆院選(12月14日投開票)後に同じポストに就くかどうかは不透明で、指定廃棄物を一時保管する県内の農家らが行く末を案じている。
処分場建設候補地の栗原市で26日夜、福島第1原発事故で生じた汚染稲わらの保管をめぐる住民説明会が開かれた。
主催した県が処分場建設の遅れを理由に保管期限延長への理解を求めると、農業男性(65)が怒りをあらわにした。「いつまでも一時保管が続いてしまう。風評被害が広がるのではないか」
県によると、県内の指定廃棄物保管量は推計で約4900トンに上り、稲わらが大半を占める。環境省は10月下旬、3候補地で詳細調査の一環であるボーリング調査に向けた準備作業を試みたが、その一つ、加美町では住民の抗議を受けて作業着手を唯一見送った。
「国のやり方に憤りを覚える。なぜ、県内に処分場を造らなければならないのか」。加美町で今月24日あった反対集会で、町内でワサビ園を営む男性(62)は語気を強めた。
環境省としての意思決定を担う政務三役は、いずれも衆院選に立候補を予定する。望月氏は解散日の21日の閣議後記者会見で「今、環境省は重要な時期に差し掛かっており、間を空けてはいけない。政務三役が力を合わせて仕事をしっかり進めていきたい」と強調した。
大和町の候補地周辺は沖縄駐留米軍の実弾砲撃訓練移転に伴い、1990年代後半から住民らが集団移転した。
住民グループ「旧升沢下原住民の会」の早坂冨士夫代表は「選挙を今やる必要性はなく勝手だと思うが、候補地にとってはチャンス。国も熟考する時間がつくれる」と歓迎する。
ある町職員は「選挙後の組閣で環境相がまた交代してしまうのではないか。交渉相手がころころ変わるとやりづらい」とこぼした。
住民説明会では汚染稲わらの処理が進まず、住民が疑問をぶつける一幕があった=26日、栗原市
2014年11月29日土曜日
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