東京新聞より転載
【社説】
同一労働・賃金 非正規の不公平ただせ
2016年7月5日
各党は、雇用形態による賃金差をなくす「同一労働同一賃金」の実現をうたうが、具体的な道筋は見えない。非正規労働者の待遇底上げと同時に、正社員化を進める施策の議論を深めてほしい。
日本では雇用の不安定な非正規労働者は増え続けている。二〇一五年は37%超。三年間で2・3ポイント上昇している。
正社員との賃金差も大きい。正社員に対する非正規労働者の賃金水準は、欧州の八~九割に比べ、日本は六割弱だ。
仕事の内容が同じなら賃金も同じにする同一労働同一賃金は、欧州では一般的とされる。非正規労働者の待遇改善は待ったなしの課題であることはいうまでもない。
しかし、欧州などでは、各産業別に労働組合が組織され、能力の水準と仕事の内容などに応じて賃金等級が決められており、非正規にも適用される。日本とは労働慣行が大きく異なっており、制度の導入が即、非正規の待遇改善につながるとは限らない。
仮に正社員の賃金を非正規労働者の水準まで引き下げれば、同一労働同一賃金は完成するが、賃金の底上げにはならない。
自民党は公約で「正規、非正規の格差を是正する」とする。公明党は非正規の賃金水準を欧州並みに引き上げるとし、制度導入にあたり「正社員の処遇を引き下げないようにする」と条件を付ける。
これに対し、最大野党の民進党は「同一価値労働同一賃金」の法律をつくり、公明と同じように非正規の賃金に「全体を合わせることがないようにする」と記した。
国が定める時給の最低額である最低賃金の引き上げも欠かせない。最低賃金すれすれで働く人はパートやアルバイトが多く、非正規の賃金アップにつながる。
政府は「一億総活躍プラン」で、全国平均を現在の時給七百九十八円から年3%程度ずつ上げ、千円を目指すことを盛り込んだ。自民、公明両党の公約はこれを踏襲する。
民進、共産、社民、生活の野党四党は市民連合と合意した共通政策で、全国平均ではなく、すべての地域で千円以上にすることを打ち出している。
総務省の調査によると、非正規労働者の17%が、正規の仕事がなかったため非正規雇用に就いた、と回答している。
一家の大黒柱が非正規労働者という世帯も増えている。賃金底上げと同時に、正社員への転換を促す施策も重要だ。
【社説】
同一労働・賃金 非正規の不公平ただせ
2016年7月5日
各党は、雇用形態による賃金差をなくす「同一労働同一賃金」の実現をうたうが、具体的な道筋は見えない。非正規労働者の待遇底上げと同時に、正社員化を進める施策の議論を深めてほしい。
日本では雇用の不安定な非正規労働者は増え続けている。二〇一五年は37%超。三年間で2・3ポイント上昇している。
正社員との賃金差も大きい。正社員に対する非正規労働者の賃金水準は、欧州の八~九割に比べ、日本は六割弱だ。
仕事の内容が同じなら賃金も同じにする同一労働同一賃金は、欧州では一般的とされる。非正規労働者の待遇改善は待ったなしの課題であることはいうまでもない。
しかし、欧州などでは、各産業別に労働組合が組織され、能力の水準と仕事の内容などに応じて賃金等級が決められており、非正規にも適用される。日本とは労働慣行が大きく異なっており、制度の導入が即、非正規の待遇改善につながるとは限らない。
仮に正社員の賃金を非正規労働者の水準まで引き下げれば、同一労働同一賃金は完成するが、賃金の底上げにはならない。
自民党は公約で「正規、非正規の格差を是正する」とする。公明党は非正規の賃金水準を欧州並みに引き上げるとし、制度導入にあたり「正社員の処遇を引き下げないようにする」と条件を付ける。
これに対し、最大野党の民進党は「同一価値労働同一賃金」の法律をつくり、公明と同じように非正規の賃金に「全体を合わせることがないようにする」と記した。
国が定める時給の最低額である最低賃金の引き上げも欠かせない。最低賃金すれすれで働く人はパートやアルバイトが多く、非正規の賃金アップにつながる。
政府は「一億総活躍プラン」で、全国平均を現在の時給七百九十八円から年3%程度ずつ上げ、千円を目指すことを盛り込んだ。自民、公明両党の公約はこれを踏襲する。
民進、共産、社民、生活の野党四党は市民連合と合意した共通政策で、全国平均ではなく、すべての地域で千円以上にすることを打ち出している。
総務省の調査によると、非正規労働者の17%が、正規の仕事がなかったため非正規雇用に就いた、と回答している。
一家の大黒柱が非正規労働者という世帯も増えている。賃金底上げと同時に、正社員への転換を促す施策も重要だ。
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