夕方、散歩に出ようとすると5分ほど夕立があった。もう少し降ってくれれば涼しいのに。そう思いながら、再び散歩に出た。木の少ない平塚でも、せみ時雨がすごい。季節は暑くても秋に向っているのだろうか。
今、藤沢周平の作品を読んでいる。お友達が書いた文章に藤沢周平の作品の話があったので久しぶりに読み出した。そう、一番好きな作品は「せみ時雨」だ。でも、これはドラマを見てから、作品を読んだので、どうしてもその印象が強い。藤沢周平の作品は、辛口のものはチクリと胸に刺さるものがあり、少し寂しいつらい思いになる。ただ打ちのめされるようなものではない。初老の男の娘や嫁に対する思いが、この頃なんとなく胸にしみる。遠くから見守るようなまなざしがやさしい。初めてここに父を感じた。
父は言葉の少ない人だった。それでも、進学の問題などは、母よりも父のほうが理解を示してくれた。母によれば、父は私が小さいときはそれこそ可愛がっていたという。自分は肋膜のために、軍隊から返され、弟はその軍隊で自死した。それを今思うと、ずっと重いものを背負い、冒険もせずに静かに家族を守ったのではないだろうか。娘には、寛容だったのもわかるし、母以上に心配もしていたのではないかと今は思う。
もしかしたら、私はファザコンではないだろうか?と初めて思った。藤沢周平の描く初老の男の中に、温かみを感じ、こんな父親なら と思うのは。なにを考えているのかはあまりわからなかったが、まじめに仕事をして、引退すると野菜作りなどをして私に届けてくれた。様子を見に来ていたのかもしれない。だから、そういうやさしく遠くから包み込んでくれえるような人が好きなのかもしれない。