Tokyo日記

社会学者のよしなしごと

新しい本

2005-12-27 13:34:56 | 本を読んだ
勁草書房から、上野千鶴子編『脱アイデンティティ』が出ました。
『構築主義とは何か』に続く第二弾です。
発刊まで時間がかかってしまったので、今となってはインパクトが薄いかも知れないけれど、固定的なアイデンティティの政治がもたらす脅迫について一度考えてみようという本。平田由美さんが鷺沢萌について書かれていてなかなか面白かったのですが、鷺沢さんも本の刊行を待たずに亡くなってしまいました。

アイデンティティの流動性ばかりをいっても仕方がないし、ときとして一時的に固定的なアイデンティティが必要になるときもあるけれど、一度きちんと固定的アイデンティティの政治がもたらす脅迫については考えたほうがいいのではないかと思っています。そういう意味では、女の運動って巷のイメージとは逆に風通しがいい。ところが好き。

個人的には「様々な属性に還元されない『わたし』」という議論をもう少し詰めるべきだったなと反省しているのですが、ひさしぶりにいいたいことを書いたなという気持ちがあり、論文の出来とは別に、満足感があります。

予約だけで初刷りがほとんどなくなったそうなので、是非ご一読を(宣伝)。
→二刷ができました。よろしく。