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【あるがまま】

表現ビトの萬(よろず)徒然日記!
気功にヨーガ。そして芝居。あるものをあるがままに…

きっとそいつは小説家。その380 。

2012-02-28 20:50:40 | 小説。
『平成姥捨山』

時々思う。果たし長生きは幸せなんだろうか。

高齢化社会と言われたのは今は昔・。
もはや完全に超高齢社会だ。

医学が進み、少子化が進み、核家族ゆえ高齢者を高齢者が介護する時代・。

やれ介護保険だ老人ホームだなどと言ってるが、要はシルバー産業、蛇の生殺し文化ではないのか・。

脳死だってあっていい。
安楽死だってあっていい。
静かに死ねる選択肢も
しっかり残して置かないと・。

姥捨山が裾野に降りて
姥捨都市が出来ただけ・

に、なってはいないだろうか・。

小児科医が少なくなったこの国に 本当の介護があるのだろうか。

きっとそいつは小説家。その376 。

2012-02-24 08:20:20 | 小説。
『虫を呼ぶ男』

猪山忠治さんの糖尿病が発覚したのは、仲間に恵まれて居たからだ。

肉体労働をしていた。

工事現場には一応の簡易トイレもあるが そこは男・。

昨今の住宅街ならいざ知らず、もう10何年も前の地方の話・。 大でもない限り、あんな臭いところに閉じ込められるのは御免だ。

必然、仲間と連れションと相成るワケだ。
あれは大層気持ちがいい。
その日も青空の下、仲間達と地球におしめりを与えていた。 だが、どうも忠治さんの周りだけ虫が集まる。

「ファーブルかよ。」なんてからかわれていたが、それが来る日も来る日もなのだ。

とうとう仲間の一人が言った。

「尿が甘いから虫が来るんじゃねえか?糖尿病かも知れないぞ。」

忠治さんは肉体労働者・。身体には絶対の自信があったが、逆に身体が壊れたら、たちまち仕事がなくなる事を知っていた。

すぐに医者に行った。

仲間の見立ては当たっていた。

忠治さんは今も現場で働いている。
仲間たちからはDrと呼ばれている。
食事の時、休憩の時、何かと健康豆知識を披露し仲間の健康をチェックしている。

時々は煙たがられるが、大体は愛されている。

きっとそいつは小説家。その373 。

2012-02-21 17:34:27 | 小説。
『苦情』

来る日も来る日も苦情ばかりだ。

謝るのが仕事だと判って居ても こうも苦情ばかりだと 腹も立つし ストレスも溜まるばかりだ。

とある会社のサービス相談室に勤務する男は願った。
「苦情のない世界に行きたい。」

その日、男は夢を見た。

そこは苦情のない世界だ。夢の中の男は笑顔が絶えない。

だが夢の中のスクリーンの風景が俯瞰になった時、男は愕然とした。

その世界には男しか居ない。
ただ荒野が広がっていた。

きっとそいつは小説家。その372 。

2012-02-20 15:54:15 | 小説。
『支えびと。4』

最近、母とは口を聞いてない。喧嘩の原因は忘れたが、とにかくお互いに許せないのだ。

今日も勤め先の老人ホームの仕事をし、母の待つ重苦しい家に帰った。

なんとなくホームのお婆ちゃんに教わった唱歌を口づさんだ時だった。

いつの間にかハーモニーになっている事に気づいた。

母もその歌を歌っているのだ。

他人の面倒もいいけどさあ。自分の母親の面倒もちゃんと見ないとな・。

しみじみとそう思った。

きっとそいつは小説家。その371 。

2012-02-19 23:06:43 | 小説。
『支えびと。3』

源次郎さんが死んだ。

老人ホームに入って
たった2週間目の朝だった。

幾らそのホームには霊安室があるからって・急ぎ過ぎだ・。

新井香織は言うなれば同期だ。

まだ資格取り立てで、源次郎さんが来た日が、初勤務だった。

やおら源次郎さんに胸を触られ「ふざけんなジジイ」と言ってしまった、正直過ぎる娘さんだ。

センター長にはこっぴどく怒られるし、源次郎さんには全く反省の色はないし・。

初給料を貰ったら、辞める積もりだった。

その日も渋々とホームに来たら・源次郎さんの事を知らせれた。

良く・意味が判らなかった。

判らないまま霊安室に行き、お線香をあげた。
ただ、胸が詰まった・。

その日は虚ろに仕事をし、終え、真っすぐに帰宅した。

その晩、彼女は夢を見た。
夢の中でまた源次郎さんに胸を触られた。強い口調で「辞めてよ。源次郎さん。」と抗議した。

確かに強い口調だが、自然にさん付けで名前を言っていた・。

源次郎さんは夢の中で
「いいじゃないか。冥土の土産だ。」
と言いながら笑った・。

「ふざけんなジジイ。」
と 笑いながら返した。

目が覚めた時、彼女は泣いてた。

もう4年も前の事だ。

新井香織はまだホームで働いている。

今年の秋には結婚も決まったが、仕事も続ける積もりだ。

この仕事が好きかどうかは、よく判らない・。
でも嫌いじゃないし・。

ただ 支えたい。

と思うのだ。