もう何年もスケジュール帳に挟んで、持ち歩いている新聞の切抜きがある。
どん底の時期に、その投書を目にして、涙が止まらなかった
健康な自分が、何もせずにウジウジ悩んで、幼いまん太くんに心配かけて、一体何やってるの
何でもできるじゃん
そんな風に励まされた。
もう、8~9年も前の切り抜きが、今でも大切なお守りになっている。
迷い立ち止まっている時、読んでまた励まされている
こんな素敵な母親になりたいと、願っている。
小さなリハビリ先生
~朝日新聞 <ひととき>より~
有実ちゃん、二十四日は、あなたの五歳の誕生日。
思えば去年の今ごろは、ママが大学病院に入院する直前だった。
ママがALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病だとわかったとき、頭の中はまだ幼いあなたのことがいっぱいで、パパに「有実を産まなければよかった」と口走り、怒られた。
「有実がいるから生きられるのだ」と。
そういうパパも泣いていた。
あれから一年。
あなたはずっとママを見つめていてくれた。
ママの心がどん底状態の時は、甘えるのも我慢して見守ってくれた。
少し心が元気になったころ、いすに座っているママに「だっこ」と甘えてくるようになった。
そして小さな声で「立って」。
ゆっくり立ってみると、ママが抱いているというより、あなたが必死でママにしがみついていた。
なのに「ママがだっこできた!」と大喜びしてくれたね。
顔の筋肉のマヒで笑えなくなったママに、何度もニコッと笑うあなた。
笑顔を返せないつらさをパパに話すと、パパは一言、「心が笑っていればいいよ」
声も出にくくなって、それでも絵本を読んでいたとき、ふと気付くとあなたはママの顔をじっと見つめてほほ笑んでくれていた。
あなたは小さなリハビリの先生。
いつもママのマヒした左手を見ては「パーしてみて。できないね」と言っていたあなたの言葉がある日変わった。
「グーしてみて。できるね。」
そう、ママにはまだまだできることがいっぱいあるんだね。
有実ちゃん、生まれてきてくれて本当にありがとう。