『冬潮を航く』三好直太の歌 久我田鶴子
発行:六花書林 2025/4/18 ¥2.000.-
相変わらずの不勉強にして三好直太(みよしなおた)という歌人を
知らなかったが、彼は「地中海」の歌人である。
彼のうたを鑑賞しながら彼の51年の生涯を紹介してゆく久我田鶴子。
読み物として面白い。
歌人には、いや人間にはそれぞれの物語がある。
「はじめに」に三好が書いた一文が引用されている。
略)一首を推敲する一刻々々の累積が、やがて一生のぼくぎりぎりの一刻が、
いかに真剣であるか、或は否かが、ぼくをどのようにでも、明日へ押しあげて
いくのである(略
イマドキこのように真剣にうたと向き合う短歌愛好者がどれだけいるだろう。
SNSに横書きで溢れかえる・・、また説教じみるのでやめておく。
私はいま直喩のうたに興味があるので三好の作品から紹介する。
みずからに銹(さび)吹くごとく黙し佇つゆうべ凍みて澄む島嶼のうえの空
*久我は<島嶼>は単に「しま」と読むのではないかと解説する。
巌稜によぎらん魄を喚ぶごとく黒髪ながき女を想えり
三好直太は漢字の力を信じていたように思う。
ともすれば難しい、近づきがたい歌に思えるがそこがまた魅力。
SNSでは表現し難い世界だろう。