福岡県は久留米市に『Shines』(シャインズ)というアマチュア・バンドがあり、
近頃評判だと言う。
どうやらPPMのコピーをやっていて、
最近は気に入ったモノがあれば他の曲もやるらしい。
このシャインズが初めて単独で2時間ほどのコンサートをやるというので、
どんなものなのか観てきてやろうと思い、
昨夜、会場の「えーるピア久留米」に出かけた。
受付やスタッフはアマチュアらしく友人などがやっているようで、
手作りの温かさが感じられ好感を持った。
私は開演の20分ほど前に到着したが、
雨にもかかわらずすでに多くの観客が集まっており、
聞くと250席ほどのキャパは瞬く間に完売してしまったと言う。
やがて客席のライトが落ち、ステージにスポットが当たると、
初の単独コンサートの為か幾分緊張した面持ちの5名のメンバーが現れた。
皆正装しており、男性3名はバタフライ、女性は薄い絹のようなドレスを着ている。
パンパンに膨らませた風船をカミソリでなぞっているような
心地良い緊張の中、演奏は始まった。
私はPPM(ピーター・ポール&マリー)を特に聴き込んだ訳ではなく
全くの白地の聴き手として、目を瞑った。
マリーをメインとした彼らのハーモニーは、
桃の肌に柔らかな羽根を丁寧に滑らしたり、
フォンと浮き上がってストンと軽やかに着地したり、
その一声一声のあくまで独立した音程(寸分の狂いも無い)は、
まるで絹を紡ぐように時として縒り合わされ、時として単独に突き抜けた。
それはあたかもロブションが自ら手がけるアミューズ・ブッシュのように、
繊細で確かで柔らかくデリシャスであった。
彼らの歌声によってややもすれば見落とされがちのギターやベースは、
その音質、タイミング、音量、、、もうこれ以上はないであろうという極限の一点にあり、
狙い澄ませた、湖上に落ちる露の一滴を思わせた。
「悲惨な戦争」「パフ」、、おなじみのPPMのレパートリーに織り込まれて歌われた「竹田の子守唄」、、
永らく日本の音楽界で封印されてきたこの民謡は、シャインズによって生まれ変わり、
他のバンドでは成し得ないであろう完成された“なにもの”かに昇華し、
私は理由も無く目頭が熱くなってしまった。
彼らは途中でラフなスタイルに着替え、曲目も少し明るめの楽曲が増えた。
明るくてラフな楽曲も良かったが、
私の好みは緊張の中にある繊細とスィートだったように思う。
演奏する彼らにしてみれば2時間もの間、
あの張り詰めた状態を持続しろ、というのは酷な事ではあるが、、
あっという間の、、、欣快な、幸せな、、、、、一瞬だった。
『Shines』HP
http://izumipj.com/shines/
慈しみ慎重に、大切に磨いてきた家宝のマイセン白磁を、
初めて正式に人々に公開する厳父のようでしたよ。
ステージが無事に進行するよう細心の気配りをするあなたの緊張は、
私にも、そして観客にも充分に伝わり、
それはシャインズの舞台で最良の結晶として実を結んだのだと思います。
私はまだ余韻が冷めやりません。
記憶の陰影に微熱があるのです。
お二人の、多岐に亘る音楽・芸術への造詣の深さ、ありのままに臆する事無く誠実に厳しく評価される姿勢。実は私だけでしょうがかなり気にしていました。
いくら、アマチュアだからと言っても許されない部分はありますから、100の賞賛の声よりお二人の鋭い一喝を覚悟しつつ、半分期待しつつこのブログを開いたのでした。テクニックの巧さを誉めて頂くのも嬉しいのですが、曲の気持ちを伝えようとする雰囲気を少しでも感じて頂けるように環境を整えることが、スタッフであり、ファンのひとりである私の想いでした。
ステージのサポートが出来て本当に嬉しいのです。
主役だけではなく、大道具や切符モギリの役目にも、それぞれの誇りと喜びがあるのです。
でも、いつかこっそりチクリと改善点も聞かせて下さいね(笑)
そして、ありがとうございました。
実は私はシャインズの演奏は今回初めて真剣に聴きました。
そして、もし、それが凡庸であったなら、
私は論評を控えようと思っていました。
すると、どうでしょう!
、、、私は書かずにおれなくなったのです。
あの夜のシャインズは、
時としてグリーンに、また紅色にと、
変化しながらしっとりと輝くクリソベリルのアレキサンドライトを
雨中の庭園に観るようでした。
しかも、私などよりずっと専門的であり辛辣である岩と石君が
『いや、凄かった!驚きましたね!』
と興奮していたのですよ。
素晴らしかったですね!
なるべく陰に回りシャインズを一生支えて行く覚悟をした私としては、何物にもまさる有難い珠玉の言葉・プレゼントに感じました。スタッフ冥利につきます。自分が誉められるより何倍も嬉しいのです。
他のブログ(私のも含めて)で、いろんな有難いコメントを頂いていますが、最初に貴方の文に感謝を申し上げたくなりました。
岩と石さんにも表現出来ない嬉しさで一杯です。
お疲れ様でした。
僕はお追従は書かない主義です。
これは思ったことを誠実に述べたのですよ。
本当に素晴らしかった。
僕の若い友人も『凄かった!』と言っていましたよ。
でも誉めすぎです。
しかしおかげさまで無事に2時間努める事が
できました。
ほんとうにありがとうございました。