私たちの将校は
「日本が戦争をおこしたのは申しわけないことであった。これからは仲よくしたい」
という意味のことを言った。
(中略)英軍中尉は非常にきっとした態度をとって答えた。
「君はスレイブ(奴隷)か。スレイブだったのか。
(中略)われわれはわれわれの祖国の行動が正しいと思って戦った。
君たちも自分の国を正しいと思って戦ったのだろう。
負けたらすぐ悪かったと本当に思うほどその信念はたよりなかったのか。
それともただ主人の命令だったから悪いと知りつつ戦ったのか。
負けたらすぐ勝者のご機嫌をとるのか。
そういう人は奴隷であってサムライではない。
われわれは多くの戦友をこのビルマ戦線で失った。
私はかれらが奴隷と戦って死んだとは思いたくない。
私たちは日本のサムライたちと戦って勝ったことを誇りとしているのだ。
そういう情けないことは言ってくれるな」
「アーロン収容所」(会田雄次=歴史学者。1943年に応召しビルマ戦線に歩兵一等兵として従軍、イギリス軍の捕虜となった)より