【産経抄】11月12日
2008.11.12 03:05
テレビの醍醐味(だいごみ)は、なんといっても生中継にある。結果が出てしま
った後で野球や競馬の録画を見ても興趣に乏しい。国会中継も同じだが、なぜか参
院できのう開かれた田母神俊雄・前航空幕僚長の参考人招致は、生中継されなかっ
た。
▼タレントのみのもんたさんもお怒りのようで、TBS系の「朝ズバッ!」では
「国民の知る権利を奪っている」と中継を認めなかったとおぼしき国会に思いっき
りかみついていた。お怒りごもっとも。でも実態はだいぶ違っている。
▼与野党は、「田母神氏の持論展開の場にしてはいけない」として、
NHKに中継を要請しなかったが、禁止したわけではなかった。参院側は民放から
の中継申請を認めていたのだ。生放送しなかったのは、各局の自主判断だった。ち
なみにTBSはドラマの再放送をやっていたが。
▼つまらない委員会でも相撲中継を短縮してまで放送するほど国会中継に熱心な
NHKは、申請すらしなかったという。与野党から要請がなければ放送しないなら
受信料を返してほしい。「みなさまのNHK」は「国会議員のみなさま」しか
眼中にないのだろう。
▼国会議員も情けない。民主党出身の委員長は「後世の歴史の検証に堪えうる質
疑を」と大見えを切りながら参考人の発言を再三、制していた。更迭された田母神
氏に対する批判は当然あるだろうが、参考人に呼んでおいて発言を規制する
のは失礼千万だ。
▼議員の質疑も防衛相に聞く方が多く、民間人となった前空幕長が自由に発言す
るのを恐れているようだった。生中継を見られなかった読者のみなさんには、少なくとも
「言論統制が徹底した軍に自衛隊をすべきではない」という彼の発言は、
説得力があったことをお伝えしておきたい。
もっともな話だ。
これだけの国民の関心事である参考人招致を
国会議員が嫌がるからと中継しなかったのであれば
NHKは受信料を返さなければならない。
「田母神氏の持論展開の場にしてはいけない」とは、
何を言っているのか?
皆で寄ってたかって袋叩きにしようというのだから
相手はひとり、
自信のある具体的論拠を述べて
論駁すれば良いだけの事ではないか。
たった一人を相手に
大勢で攻撃するのに
手足を縛り、口を塞ごうというのだから
あきれ果てた卑怯である。
これらの議員達は
この事態を
自身の子供たちに何と言って説明するつもりか?
腑抜けばかりの与野党議員の中で、
田母神氏の委員会での姿は
汚泥の中にスクと立つ
菊の花のようであった。