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陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

少年老いやすく、罪忘れがたし

2012-02-21 | 教育・資格・学問・子ども



数年ぐらい前から、少年犯罪が増えた増えたと騒がれてきましたが、実は、戦後の混乱期のほうが多かったというデータもあります。少年犯罪が増えたと騒がれた、象徴的な事件のひとつが、神戸のあの連続児童殺傷事件であり、また山口県光市で起きた母子殺害事件ではなかったでしょうか。

このたび、その加害者に死刑が確定したという知らせがありましたね。
最高裁への上告が棄却され、広島高裁で二審判決が支持されたことにより、死刑が確定したのです。

この事件の判決で争われた点は、被告が犯行に及んだ当時、十八歳になったばかりだったこと。少年法では十八歳未満には死刑の適用を禁じています。しかし、十八歳になってわずか1ヶ月ばかりだった加害者には、更生の余地があるとして弁護団が上告していたのですね。

しかし、驚いたのは事件からすでに十三年も過ぎたことです。
この事件をめぐって見聞したことで、記憶に深いことがいくつかあるのですが、そのひとつは現在、大阪市長としてなにかと世間を騒がせている橋下徹氏ですね。橋下氏がテレビで被告の弁護団に懲戒請求を呼びかけた一件について、弁護団側が損害賠償をもとめたものの、昨年七月に橋下氏の逆転勝訴で終わってしまったことです。被告が一転殺意を否認しはじめた主張を弁護団が用意したシナリオだったという橋下氏の発言は、誰でもそう感じるものだと思いますよね。橋下氏がやや過剰な熱意をもってやろうとしている教育改革についても、このような少年少女が今後続出しないようにとの願いが下敷きにあると考えられ、それは氏に投票した市民多くの願いでもあるかと思われます。

もうひとつ、覚えていることは、どこかの女性大学教官が、乳幼児の命は大人半分の重さしかない、という発言をしたことですね。つまり、この事件の場合、殺害したのは二名ではなく、一・五名なので、死刑にする必要はないと。これもまた、少年法を裏返しにしたというか、逆手にとったといいますか。十八歳未満が犯した罪は大の大人が犯した罪ほど重くはなく、責任はない。だとするならば、十八歳未満が受けた被害は、等分の内容の被害を受けた大人よりも軽い、ということになりますよね。ほんとうにそうでしょうか。子どものころに虐待やいじめを受けたことのある人は成人してもその傷を背負っていますし、恐喝やたかりでお金をだまし取られたことがある人は、お金に対してひどく嫌悪感を抱いてまともなマネー感覚を身につけられなくなるし、他人を信頼しなくなります。からだは小さくても、心臓や脳がまだ幼くても、受けた傷はそのぶん大きく深いものなのです。

この光市の事件が許せないのは、生まれて一歳にもならない女の子と、その母親が被害に遭われたことです。配管工を装ったという計画性のある犯行のどこに、殺意がなかったといえるでしょうか。育児中の母親は子どものことに気をとられていますので、とっさに襲われたり、また子どもを楯にされたりしたら抵抗できないはずです。十八歳とはいえ、そこを狙ったというだけでも悪質極まりないといえます。すこし酷な言い方ですが、ほとんどの国民が重い刑を望んでいたのではないでしょうか。

今回、死刑確定にあたって、はじめて加害者の氏名が公表されたというのも驚きでした。少年法で加害者のプライバシーは守られるのに、被害者やその家族は法では守られない。少年犯罪者は少年院を出所しても、あるいは在所中に、公費で教育が受けられたり、社会復帰のための職業訓練もあるのです。いっぽう、遺族のほうはマスコミの取材で神経をすり減らされた上、病気になったり、職を失ったりして困窮するケースもあると聞きます。男女問わず中学生でも大人と見まごうような体格の子もいますし、今後、また論議を呼びそうな気がします。


【参考】
光市母子殺害の元少年、死刑確定へ 最高裁、上告棄却(アサヒコム 2012年2月20日)
光母子殺害事件、元少年の死刑確定へ…上告棄却 - YOMIURI ONLINE
光市母子殺害:元少年の死刑確定へ…当時「18歳30日」 - 毎日jp
「光市母子殺害」テレビ発言 橋下知事が逆転勝訴(YOMIURI ONLINE)


【画像】
ポール・セザンヌ『赤いチョッキの少年』(部分)
1890-95年、ビュールレ・コレクション蔵(ただし盗難に遭い現在は所在不明)





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