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陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

米国はもはや日本のよき隣人ではない

2025-03-07 | 政治・経済・産業・社会・法務

ホワイトハウスでのトランプ大統領とゼレンスキー大統領の対談は、物別れに終わったようだ。
トランプは、戦争を長引かせているのはお前だ、さっさと領土をロシアに明け渡せと迫ったらしい。米国がウクライナに貸し付けている資金回収ができないためである。これが、かつて世界の警察と呼ばれた平和の調停者たる合衆国のすがたであろうか。米国の権威も地に墜ちたものだ。

米国の対ウクライナ姿勢には怒りを感じる。
あれは、かつて小泉純一郎首相が土下座させられ、輸入押しつけで国内農産業は壊滅させられ、北方領土すら取り返せず、原爆を投下させられ、軍事力をもてない日本の未来像。空襲によって国土は焦土と化して、終戦をむかえてから今年は80周年にあたる。

トランプはノーベル平和賞受賞を目論む野心家から、ロシアとよしみを通じ、ゼレンスキー大統領に圧力をかけて、ねじ伏せようとしている。
一歩間違えばウクライナは、第二のイスラエルや朝鮮半島になってしまうだろう。米国はかつて国体維持のために我が国の天皇制を温存してくれた、陽気な頼もしいヤンキーの国ではない。

そもそもオバマ大統領がノーベル平和賞受賞をしたのさえ、おかしかった。
ただ核依存脱却を「発言した」だけなのに、それがなぜか功績になってしまった。米国はそもそも核を棄ててさえいないのに。ウクライナのように核放棄したがゆえに安全を脅かされたのではたまったものではないだろう。

その昔、外大に進んだ友人と会食した折。
前触れもなしに白人男性を連れてきて、その彼の水墨アートをほめちぎり(私にはどうしてもセンスがいいとは思えない、そもそもどういう根拠で芸術家を名乗っているのか?)、私が渡そうとしたお金をはねのけて気前よく財布をひらき、その白人がいなくなったあとで、あなたの分だけ奢ったお金を返せと言われたことがある。

しかし、それからしばらくして、友人はその白人男性のことを何も言わなくなった。
むべなるかな。語学好きな日本人女性をイエローキャブだと見下して近づいてくる外国人たちは少なからずいるのだ。英会話学校よりは安上がりかもしれないが、知的教養があるわけでもない素性の知れぬ外国人と日常会話を楽しんだところで、自分の階級がランクアップするはずもないのである。

あの態度はまさに海外かぶれする日本人の本質ではなかったろうか?
外面はいいが、家庭では、自分の周囲には自分の体裁をまもるために、お前たちが犠牲になればいいといった暗黙の隷属化。そして、外国人受けがいいとなれば、柄にもなくポケモンなどにハマっていく。十数年連れ添った田舎じみた友人知人よりも、素性の知れない外国人のほうが自分を認めて、高いところへひきあげてくれるはずだと妄信する、それは幕末以後の日本人の病なのではなかったのか。そして、自分にもそうした虚栄心のくすぶる態度はあったのかもしれない。

海外通の友人たちが語る旅行話。留学先での日常話。
ひと皮むけたキラキラした自分。新しい世界を開いたように語るが、なぜだか私には憧れが微塵もなかった。実家の財政事情から渡航できなかった劣等感もあっただろう。

だが。現地のインディアや黒人たちを虐殺し、ジャズなど彼らの文化の上澄みだけを吸い上げ、麻薬や銃をのさばらせ、平和維持のストッパーのような顔をしながら、裏では中東のゲリラ組織に武器を裏取引している。オーバーカロリーの食事で肥満も多い。アメリカンドリームといいながら、一歩まかりまちがえばスラム街に落ち、隣人にテロリストがいるかもしれない。そんな国のどこに惹かれるというのか。

現代では、オーストラリアなどへワーキングホリディに出かけた日本人が現地の農場などを解雇され、食料配給の列に並んでいる、といった事例も報道されている。フードバンクならば日本にもあるのに、海外で高い時給で働いている自分を見せかけておきたいという意地があるらしい。

セブンアンドアイホールディングズの日本人最高責任者が退任し、後任には外国人の社外取締役を据えるとの発表があった。
海外展開に活路を見出すためであろうが、日産を食い物にして暴利をむさぼったカルロス・ゴーンのような悪夢は、日本のそこかしこで増えている。地方の不動産が海外資産家に目を付けられ、水資源は荒らされていく。

修論を英語で書きながらも、私が海外文化に憧れなかったのは、日本人が強熱する欧米人像と、その中世の闇めいた歴史や思想とに乖離があるからだ。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のような快活なアメリカ現代劇のドラマに、どこかハマり切れないのも、米国の抱える二面性ゆえ。むしろ「イージーライダー」のような若者の夢と挫折を描いたほうが、まだしも信憑性がある。けっして、かの国は騎士道の、紳士の、自由を愛する、礼儀正しい国家ではなかった。

経済界が米国に倣ったがために、2000年代前後に日本の終身雇用制度は破壊され、功利主義的な競争化をもたらされた。既得権益層をまもるために非正規雇用を増やしたため、就職氷河期世代は路頭に迷った。外資系の働き方になじめる層もあっただろうが、なにかあればすぐレイオフされる労働契約では、やりがい搾取され報われない労働者はふえつづける。

博士課程を出るまでに日本育英会で数百万円の奨学金を積み、非正規ポスドク職であえぎながら暮らす高学歴者が、家庭教師の教え子の中国人留学生が信じられないぐらい高額の給付金をもらっていて、やるせない気持ちになったという声も、Xで見かけてしまった。

外国人が半年間国内に滞在しただけで高額療養費制度を利用できるため、日本の医療制度にただ乗りしているという指摘もある。
イスラム系の移民が増えすぎていて、どこぞの自治体が土葬施設を建設せねばならなくなったともいう。石破政権は米国への巨額投資をうけいれた矢先、高額療養費の改悪という国民負担を提案しだした。どちらへ顔を向けて政治をおこなっているのだろう。

戦争で住む場所を追われた難民は、やさしく受け入れやすい寛容な国を目指すだろう。
アニメや漫画で平和の尊さや差別意識への非暴力な抵抗をしめしつづけた日本を、海外の彼らは楽園のように思いなすのかもしれない。公平な取引を望み、略奪ではなく、気前よくお金を払う日本人を。

しかし、ほんとうにそうだろうか?
米国大統領のウクライナへの態度、国土を侵略された者の悲嘆に寄り添いつつも、ではわれわれ自身の生活を削って、こうした戦争弱者への支援をすると政府が発表すれば、途端に反論の声があがるばかりだろう。

われわれは青い目に透き通った白い肌のウクライナ人を応援するが、これがアフリカ人だったり、ポリネシア人だったりしたら、そこまで肩入れするのであろうか。いまでも紛争が絶えない地域は各地にたくさんあるのだ。でも、どこかにある悲鳴はここには届いていない。

食料支給も、軍事力も、社会制度さえも、もはや日本は海外に依存しきっている。これまで輸入品が安かったのは途上国における現地人の労働力を安く買いたたいてきたからであって、こうした経済の南北問題が平坦化されてきつつあるいま、白人至上主義を見直すべきときがきたのではあるまいか。

国内のコメ不足と価格高騰がつづいているのは、業者が海外向け出荷を優先して流通させないようにしているらしい。
労働にあえぐ国民だけが飢えていて、土地を乱開発して資源をうばい、なにも価値を創造していない国内外の富裕層だけが食いあさっていくような地獄が、近い将来の日本が直面する危機なのではないか。


(2025.03.03)




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