陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「ストレンジャー」

2009-01-14 | 映画───サスペンス・ホラー


学生時代に、おなじ寮住まいで心理学専攻の同級生に、心理学の実験につきあわされたことがありました。
どういうものだったか、詳しくは忘れましたが。うそ発見器みたいな(?)装置に座らされて、アンケートに答える、というものでした。お礼のお菓子に眼がくらんで(現金ですね!)協力したけれど、どうも自分の望む結果に誘導しているようなふしが見られるのでした。
また卒論の提出が近くなると、受講者の多く、多種多様な興味の人種があつまる一般教養科目(いま、この名称ってあるのでしょうか?)のおわりに、とつぜん心理学専攻の学生がやってきて、抜き打ちアンケートが実施されるのでした。
失礼ながら、こんなお手軽な一次資料と、参考文献からの抜き書きだけで卒業研究がなりたつなら、お安いものだと私は思ってしまうのでした。
シュルレアリスムを好みながら、その理論の支柱であるというフロイトの精神分析を卑猥に感じ遠ざけていたのも、その偏見でした。

私は心理学というものは、デスモンド・モリスのように辛抱強く多種多様な人間を観察して得られるデータの分析からなりたつものであると考えていたのです。AをしたらBになる、という合理性ははたしてひとの心理に適用されるべきなのだろうか。ひとの行動が科学的に予見可能であれば、ひとはかならず幸福を追求し、生きる喜びにあふれ、日々は充実していることでしょう。でも、そうはならない。
人類は宇宙を開拓し、歴史の土を掘りさげ、生物学と医学は肉体の強化につとめ、芸術は時代の趣味をつくりあげてきました。しかし、まだしも誕生して一世紀まもないこの学問、心理学は進化をみせていないように思われます。というのも、医者と違い、心にいれるメスを握る人間は、健康でない場合が多々あるからです。

いささか、前置きが長くなりましたが。
きょう、レヴューする映画は「ストレンジャー」、九六年作のラブサスペンスです。ミステリーなので、なるたけネタバレしないように感想を。


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主人公は美貌の犯罪心理学者サラ・テイラー。いざとなれば色香を匂わせる、ブロンドの才女っていいですよね。
多重人格をよそおって婦女暴行を否認している容疑者の精神鑑定を担当したあたりから、彼女の周囲はにわかに物騒になります。
とうしょは、かたくなに捜査に協力しない容疑者の協力者のしわざと踏んでいたのですが。やがて、彼女に関係する男たち──おなじマンションに住む芸術家、もと刑事で謎の多い魅力的な恋人、幼少時代に因縁のある父親、さらにはとつぜん蒸発してしまった離婚した夫までも──すべてが怪しさを放っている。はたして、犯人は誰なのか?

命の危機を察した彼女は、ある人物に目星をつけ、私立探偵をやとい、彼のついていた嘘をあばくのですが。
なんとなくとちゅうから犯人は読めてしまうものの、最後は予想を裏切る結末。
しかし、こういうサスペンス映画のあの、なんとも見られている、静かな恐怖感をかりたてる演出っていいですよね。

ヒッチ・コックの映画にあるような、乾いた画調と、不安を煽る甲高い足音とやたら閉塞感を強調するドアの開閉。殺伐としたぴりぴりした空気感が、いかにも冬らしい。
しかし、血を見るのがいやだったのに、最近、慣れてしまったかも。
「揺りかごをゆらす手」で有名な女優レベッカ・デモーネイの終盤の演技にご注目。ついでにいっておきますと、ちょっとエロティックです(笑)あと、音楽もかなりよかったですね。

(〇九年一月十日)




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2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
本日の (海月)
2009-02-07 21:29:28
深夜に放送される【ストレンジャー】の内容を知りたく検索をかけたら此処にたどり着きました。

簡単な…だけど分かり易い説明で興味が湧いたのでとりあえず今夜の映画は観てみようと思います。
ありがとうございましたm(_ _)m
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TV東京で? (万葉樹)
2009-02-07 23:34:51
ごきげんよう、海月さま。
コメントありがとうございます。

きょうは「ストレンジャー」の検索でこちらに通われた方が、けっこう多かったようですね。映画専門ブログではないのに、驚きでした。

いちおうサスペンスですから、真犯人が分からないように書いておりますが、察しがついちゃうかもしれませんね。

そんなにグロテスクじゃないのですが、やたらと恐怖感を煽る演出にはご注目です。でも、見慣れた方にはけっこうありきたりに思われるかもしれませんよね。

では、深夜からお楽しみくださいませ。

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