太平洋戦争の終結を知らずに戦後の三十年を東南アジアのジャングルに潜伏して過ごした著者の自伝的エッセイ。極限状態にあっても、絶望せず、ほどほどの摂生で生きながらえたタフガイが、平和ボケした日本人を叱責する。その凄まじい半生からは得るものがありそう。(というのは、読書前の感想)
文章からみながる意志の強さ、健康への大事さを説く姿勢に共感したのだが、フィリピンの住民から略奪を繰り返している部分について、なんらの反省点もないのが惜しまれる。
食料欲しさに投降した人間は愚かで脆弱だったともいえようが、上からの司令をただ忠実に守るだけで、疑いもせず、敵は米国軍なのに、なぜかフィリピン人に迷惑をかけてもなんとも思わないという考えには違和感がある。銃撃戦で亡くなった現地人もいたことだろう。同僚の二人も死なずにすんだかもしれない。
なので、ラストサムライだと持ち上げるスタンスにはやや疑問を感じる。人生の貴重な三十年を失ったことには悼み申し上げるが。
ある意味、戦争の怖さを知る存在。
いま極右派がこの人を心酔して、戦争賛美、軍人賛美しているのを危惧する。この人は自分が命令をかたくなに守り抜いたことのみを誇りにしていて、日本の起こした戦争の過ちそのものについては批判していない。戦時中、軍人よりも民間人が空襲でどれだけ犠牲になったのか、民間人が犠牲になっても戦死扱いではないのでなんら補償もないことについて、思い来すべきだろうと思う。同じ出兵者でも満州でソビエト軍に占領されてシベリア抑留された人々は、戦後になっても、他国へ出兵された元兵士と違い、戦傷者扱いされなかったので補償金も出なかった。
現代人はひ弱なので鍛えるべき、という根性論とはわけて考えるべきではないだろうか。この人が生き延びられたのは、スパイとして命令厳守のために徹底的に教育されたからで、たとえば、現代人が戦争に巻き込まれてこれほどタフに生存できなかったとしても、それは平和と豊かさの恩恵があったという裏返しなのである。
印象に残った部分を以下に要約しておく。
・生きるためには目的意識がはっきりしていることが大切だし、そのための覚悟が必要。目的があり、信念があり、そのために絶えず実行すること。そのためには健康が大切。
・誰でもボタンのかけ違いをする。このとき、どのように立ち上がるかが,人生を大きく左右する
・怖れの感情とはまだ起きてもいにことを肥大化させている感情。そんなときは、「これ以上悪くはならない。今はどん底だ」と思うこと。
・人間、全力をあげない限り、人を納得させることはできない。
・命は神からの借り物である。命は大切にしなければならない。排泄は命の掃除。トイレは毎日の命の確認。我が身の「命」を守れなくて、なんの夢を果たせようか。「生かされている」感謝が「生きる」ことにつながる。
生きる | |
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文章からみながる意志の強さ、健康への大事さを説く姿勢に共感したのだが、フィリピンの住民から略奪を繰り返している部分について、なんらの反省点もないのが惜しまれる。
食料欲しさに投降した人間は愚かで脆弱だったともいえようが、上からの司令をただ忠実に守るだけで、疑いもせず、敵は米国軍なのに、なぜかフィリピン人に迷惑をかけてもなんとも思わないという考えには違和感がある。銃撃戦で亡くなった現地人もいたことだろう。同僚の二人も死なずにすんだかもしれない。
なので、ラストサムライだと持ち上げるスタンスにはやや疑問を感じる。人生の貴重な三十年を失ったことには悼み申し上げるが。
ある意味、戦争の怖さを知る存在。
いま極右派がこの人を心酔して、戦争賛美、軍人賛美しているのを危惧する。この人は自分が命令をかたくなに守り抜いたことのみを誇りにしていて、日本の起こした戦争の過ちそのものについては批判していない。戦時中、軍人よりも民間人が空襲でどれだけ犠牲になったのか、民間人が犠牲になっても戦死扱いではないのでなんら補償もないことについて、思い来すべきだろうと思う。同じ出兵者でも満州でソビエト軍に占領されてシベリア抑留された人々は、戦後になっても、他国へ出兵された元兵士と違い、戦傷者扱いされなかったので補償金も出なかった。
現代人はひ弱なので鍛えるべき、という根性論とはわけて考えるべきではないだろうか。この人が生き延びられたのは、スパイとして命令厳守のために徹底的に教育されたからで、たとえば、現代人が戦争に巻き込まれてこれほどタフに生存できなかったとしても、それは平和と豊かさの恩恵があったという裏返しなのである。
印象に残った部分を以下に要約しておく。
・生きるためには目的意識がはっきりしていることが大切だし、そのための覚悟が必要。目的があり、信念があり、そのために絶えず実行すること。そのためには健康が大切。
・誰でもボタンのかけ違いをする。このとき、どのように立ち上がるかが,人生を大きく左右する
・怖れの感情とはまだ起きてもいにことを肥大化させている感情。そんなときは、「これ以上悪くはならない。今はどん底だ」と思うこと。
・人間、全力をあげない限り、人を納得させることはできない。
・命は神からの借り物である。命は大切にしなければならない。排泄は命の掃除。トイレは毎日の命の確認。我が身の「命」を守れなくて、なんの夢を果たせようか。「生かされている」感謝が「生きる」ことにつながる。