
転職をあまりに繰り返していると、ときどき、社内の奇妙な習慣や文化に遭遇することがあります。あまり属人的なものを紹介すると企業秘密に関わりそうなので、私が謎に思っているが、あんがいどこでもあるのでは?と思う不思議を。
それは、あまりに古すぎるパソコンが残されていること。
どれぐらい古いかと言えば、おそらく二、三十年は前の、白のデスクトップ型。年代がかっているので黄ばんでいます。昭和世代なら知っているブラウン管型のテレビみたいなモニタの。なぜか知らないが、キーボードがなくて、そのデスクトップが何台も積み上げられているんです。倉庫みたいな場所に。
私がこれを見つけたのは二社で社歴が30年以上で、従業員が50名を下回る事業所でした。
もちろん事務作業は、その時代の最新式(といっても何年か前だろうけども)の黒い幅広のモニタで、キーボードも山形に盛り上がっていない薄めのタイプ。なので、その古いパソコンを見たときはかなりのカルチャーショックを受けました。
なにせ、私がはじめてパソコンなるものを拝んだのは、2000年前後の国立大学在籍時。
しかも当時流行っていた、かなりおしゃれなMacだったのです。会社に残されたあの古いパソコンは1980年代ぐらいのもの、だったのかもしれません。
衝撃的だったのは、特殊な帳票を出力するときには、かなり黄ばんだ古くさいプリンタを接続していたりしたことです。
請求書を出すときに、ガガガガ…ととんでもない騒音を出されるのにびっくり。しかも途中で止まったりもする。修理できるのは、社内でひとりぐらいの男性社員のみ。こんな古い機器を愛好しているのですから、当然ながら社内でのIT化だのペーパーレス化だのが進むわけもありませんでした。
化石めいた黄ばんだデスクトップが置かれていたのは、社内でのデッドゾーン。
休憩所の奥のほうだったり、資料室や物品保管庫の端だったり。その長い歴史のなかで年に一度は行われたであろう大掃除でも廃棄されることはなかったのでしょう。埃をかぶり、脂ぎっていて、触るのがためらわれる状態にもなっています。
パソコンだけに限りませんが、昭和ちっくな応接セットだとか、タイル張りの和式トイレ(男女共用だったりする!)だとか、稼働するときに大きな音がする空調だとか、とにかく建物そのものが年季が入っているケースが多いもの。要するに会社を移転したことがなく、社屋を建て替えたこともないので、古いものを払い出ししたことがないのです。
私のように、築ウン十年の納屋を解体した経験がある者からすると驚きなのですが、田舎の会社はなかなか環境を刷新する余力がないので、致し方ないことなのかもしれません。当然ですが、こうした会社は社員の平均年齢も高く、氷河期世代の私でも若い方扱いされます。
こうした古いパソコンが残されるのは、単にめんどくさいから見逃されてしまったというのもあるでしょうが。経営者が年輩なので、そのパソコンを購入当時は何十万、いや下手をすれば百万近く投資した記憶があったがために、捨てがたくなってしまったため、かと察せられます。ただ、こうした使えない機材を残しておいても、将来的に価値があがるとも考え難く、不衛生きわまりなく映ります。実際、古いパソコンを放置しているところは、他にもロッカーの中に保管年限を過ぎた書類を溜め込み過ぎて整理できていないものです。
古いパソコンが残されていなかったのは、お役所や医療機関など。
大企業で、人手が足りていて、若手スタッフが多く在籍し、個人情報を扱うためにシステムの入れ替えが定期的に行われている組織でしょう。パソコンは自前の資産ではなく、リース契約を結んでいることもあります。行政機関で使うパソコンはたまにふるさと納税でのお礼品として下げ渡しされてもいますよね。けっこういいお値段がするので、私は手を出しませんけどね。
(2024.06.06)