陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

大河ドラマ「篤姫」最終回

2008-12-21 | テレビドラマ・アニメ


先週日曜、フィギュアグランプリシリーズファイナルのエキシビション(「氷上のミュージカル 魅了の舞」を参照)と迷った末に切り捨てた大河ドラマ「篤姫」最終回を、この土曜視聴いたしました。しかし、今年はじめにあんなに期待した記事を書いときながらですね、まったく一話もレヴューしなかったという(酷ッ)

理由はやっぱりもうさんざんやりつくされた感がある幕末ものだったから、でした。が、しかし!この「篤姫」、人気のでない幕末ものでありながら、異例の高視聴率をマーク。毎回恒例一時間の最終回が十分延長されたり、最大の見どころである江戸城無血開城の回は異例にも、翌週の土曜にくわえ金曜の夕方にも放映されていました。

とはいえ、大奥といいましたら権謀渦まく女の世界。お世継ぎが、将軍職が、家督が…と、もうそんな聞き慣れた件で一族郎党もしくは旧知の仲どうしが争うという構図がなんともいやで。やはりそれを、一年五十回もとおして見せられるのもいやなので、けっきょくほとんど観なかったわけですが。
あと、最終回を是が非でも観る気がおきなかったのは、たしか日本テレビ系列の日本史ミステリーとかいう番組で、天璋院の特集をやっていてその後半生がすっぱり紹介されていたので、観るには及びませんでしたという次第。
二十六日から三夜連続の年末特別ヴァージョン再放送は、できれば観ておきたいですね。これを観るといつも年末だなって感じます。

ところで、この「篤姫」が高い支持を得たのは、あまり教科書では知られなかった歴史を影でうごかした人物(天璋院や小松帯刀、島津斉彬など)を掘りさげたことでしょう。あの皇居のきれいなお堀がみられるのも、篤姫さんのおかげなんですね!(正確にいえば、その後、第二次大戦で連合国軍が天皇制維持を条件に日本に早期降伏をうながすため東京を灰にしなかったこともあるけれど)一歩まちがうと、お隣の清国のように、旧幕府側と尊王派でふたつに国が割れて内紛しているところを列強諸国につけいられて植民地化されてしまいかねなかったわけです。

ふつうでしたら、自分を送り出してくれた故郷とか血縁の意思をくんでみせるのが筋なのに、国難を思ってあえて意に叛いて将軍として有能なほうを育て推す。なかなかできないですよね。篤姫に実子がなかったからこそ、家茂や家達のめんどうみたり、敗走した慶喜の擁護にまで回れたのかもしれないですが。かなり脚色されているとは思いつつ、大奥のひとつの家族として結束をかためていくあたりは、やはり観ていてすがすがしい。これが男性だと、やはり相手に情けをかけられるのは恥とかなんとかいって、むだな争いをしてしまうのでしょう。

この天璋院篤姫の生きざま、どことなく誰かに似ているなっと思いましたら、そう、あのエース・オブ・エース高町なのはさん!(かなり強引な解釈ですね)
ところで、主演の宮崎おあいさん。壮年期の天璋院を演じた際、声がこわいぐらいに低くてびっくりです。二十歳そこそことは思えないくらい威厳たっぷり貫禄じゅうぶん。でも笑ったとき口裂け女みたいで、しかもメイクのせいか眉間に寄りじわができて恐かった…(よけいなこと言うな)額がひろくて、八〇年代に流行病のように矢追進のミステリーサークルとかUFOの特集番組ででてきた宇宙人に似てると思ったのは私だけでしょうか?(爆)

この大河ドラマ、さらに秀逸だと思ったのがキャスティング。西郷隆盛と大久保利通はほんとよく似てましたよね。しかも原田泰造、けっこう演技がうまいですし。慎重な台詞をいうときに限ってまなたきの回数が多くなる(笑)お笑いタレントって感情の掴み方がうまいのかも。

幕末がよくとりあげられるのは、たぶん、身分に関係なく日本で志のある若者が政治を動かすことができたからでしょう。いまの二十歳にならないと選挙権もなくて二十五歳以上じゃないと立候補できない。しかし、実質、若くてなれるのは二世、三世議員ばかりなり。(橋下徹大阪府知事とか三十代の知事もいますけれどね)実権は還暦過ぎたお年寄りばかりが握っていて働く若い層が搾取されるいっぽうだけど、楽しみがいっぱい転がっているので不満があっても蜂起しようとはしない。そんな院政もしくは元老院のような政治システムをひっくりかえすには、幕末のような政権転覆の動きが必要?でも、やっぱり篤姫たちが願ったように、愛と平和がいちばんだよね~と思う私です。

このOP映像、CG凝り過ぎ(笑)って眺めていたんですが、かのグスタフ・クリムトの絵を意識してるらしいです。正確にいいますと画家が活躍したのは一八八〇年代後半から一九一〇年代。篤姫の活躍した一八六〇年代あたりならば、マネやドガなど印象派が芽吹いた頃合い。微妙に時期がずれますが、クリムトふうを思わせたのは、クリムト画が淋派の影響を受けていたとされるため。そしてなにより、クリムトが好んで描いたファム・ファタル(宿命の女)という主題になぞらえたものでありましょう。とはいえ、この篤姫、とうしょは薩摩の密命をうけて政治工作のためにおくりこまれたいわば女諜報部員といっても過言ではないのですが、ハニートラップで大奥の実権を掌握したというわけでもなく、へたれ将軍慶喜よりも、敵方の和宮などと手をとりあったことなどから女性の人気を得ているのでしょうね。

来年は直江兼続を主人公とした『天地人』、主演は妻夫木聡(つい最近まで「めのとぎさとし」って思ってました(殴))くんなんですが、トレンディドラマにでてくる若手俳優をやたら登用するのってどうしても現代劇のイメージがついてしまって違和感拭えません。主演阿部寛ならよかったのにな、声もいいし。しかも、北村一輝(このひと「時宗」のときもそうだったんですが(笑))とめくるめくアツい男子の主従愛が展開されそうな予感。たぶん脚本家は若かりし頃『炎のミラージュ』にでもハマっていたんでしょう。来年も女子を中心に視聴率がアップすることまちがいないしですね。でも脚本家が女性ばかりだと、男性陣が軟派なメンツばっかりになるのがなんとも…。

さて、来年のNHKエンタープライズは「天地人」を商標登録するのでしょうか?(よけいなこと言うな その2)



【画像】
グスタフ・クリムト『ユディトI』(の部分) 一九〇一年
高島田を思わせる女性の髪の結い方や、誘っているんだけどしっかした顔の輪郭や意志の強さがうかがえる太い眉が、どことなく天璋院篤姫の実像と似ていなくもない?



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