洋上風力発電と漁業 海外と日本の経験

Offshore wind farms and fisheries
”洋上風力発電と民主主義”

洋上風力発電と漁業 海外の経験#7 米国東部大西洋沿岸9州 単一補償管理機関設置へ

2022-12-18 06:36:53 | 日記

2022年12月14日

リポート 北海道機船漁業協同組連合会 原口聖二

[#7 洋上風力発電と漁業 海外の経験 米国東部大西洋沿岸9州 単一補償管理機関設置へ]

米国東部大西洋沿岸の9つの州(メイン州・ニューハンプシャー州・マサチューセッツ州・ロードアイランド州・コネチカット州・ニューヨーク州・ニュージャージー州・メリーランド州・バージニア州)は、洋上風力発電の地元漁業への影響緩和と補償問題解決を目的とする単一の地域基金管理者の設置に向けた行動を進めている。

各州は、洋上風力エネルギーの開発と漁業分野の維持を両立させることの重要性を認識し、漁業分野への影響緩和と補償のための基金管理者の設置に関し、漁業分野、洋上風力発電開発者、事業者らの意見、情報を求めている。

これらのとりまとめは、財務管理機関および関心のある一般市民に通知される。

これは、2022年6月に内務省海洋エネルギー管理局 (BOEM)が発表した漁業分野への影響を緩和するための枠組み草案に対応したもので、影響を受ける大西洋沿岸沖合の漁業者と洋上風力発電事業者にとって、公正、公平で透明な方法で機能するシステムを目指しているとし、影響を受ける漁業関係者の経済的損失に対する資金を調達し、適性に分配するため、大西洋沿岸沖合を対象に単一の地域管理者を設置する最善の方法を選択すると加えている。

BOEM がバージニア・ ビーチ距岸24カイリの“バージニア”プロジェクトと、ニューヨーク州モントーク距岸東方沖合26.5 マイルにある“サンライズ”プロジェクトの環境影響に関する草案を 用意しており、2022年12月16日、官報で公開され、2023年2月14日までの60日間がパブリック・ コメントの期間となる。

これらの洋上風力発電プロジェクトは、審査段階の4番目と5番目の案件となっており、最初の“ヴィンヤード”と“サウス・フォーク“の2つのプロジェクトはBOEMによって承認されている。

ただし、マサチューセッツ州沖で建設中の“ヴィンヤード”のプロジェクトについては“米国漁業代表者連合”と“責任ある沖合開発同盟 (RODA)”が、マサチューセッツ州沖で建設中のプロジェクトを停止させるための訴訟を起こすなど、環境上の理由等からますます抵抗が強まっている。

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洋上風力発電と漁業 海外の経験#6 懐疑的な米国当局による漁業調査への影響緩和計画

2022-12-18 06:34:45 | 日記

2022年12月09日

リポート 北海道機船漁業協同組連合会 原口聖二

[#6 洋上風力発電と漁業 海外の経験 懐疑的な米国当局による漁業調査への影響緩和計画]

米国政府は2022年12月5日、洋上風力発電が漁業調査に与える影響を軽減するための関係機関の横断的な計画を発表した。

しかし、米国海洋大気庁(NOAA)と内務省海洋エネルギー管理局 (BOEM)の予算措置への対応に多くの疑問が残っている。

NOAAは、米国の当該緩和戦略として洋上風力発電建設と配備によって水棲生物資源調査が妨げられないようにする方法を指摘しているが、現在、案件となっているニューイングランドと大西洋中部のプロジェクトについては先行している海外や別の地域での事例を単純に流用できると考えているととれる。

またNOAA はBOEMとともに、漁業分野への影響を緩和する戦略の一環として地元漁業者を含む他の主要な利害関係者と協力することを計画している。

しかし、この取り組みに関する完全な予算措置は示されていない。

バイデン政権による2022年度会計予算での 840万米ドル (800万ユーロ) の要求は、2年以上前に策定された北東部の緩和戦略の一部のみをカバーしており、漁業分野の代表者は、要求された金額と資金の提供方法に関する不確実性について懸念を表明している。

2022年6月、60以上の漁業団体と企業が、沖合での風力発電の漁業への影響を軽減するための“強力な資金調達”の必要性について、議員らに要請書簡を送った。

その書簡には、バイデン政権の2023年度会計から5案件に対し予算計4,600万米ドル (4,400万ユーロ)の要求があった。

一方、バイデン政権の2023年度予算案では、漁業分野の科学的調査への影響緩和として1,740万米ドル (1,660万ユーロ) のみしか組まれておらず大きく乖離している。 

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洋上風力発電と漁業 海外の経験#5 米国漁業 プロジェクトの承認は性急で違法 停止を求める

2022-12-18 06:32:50 | 日記

2022年11月27日

リポート 北海道機船漁業協同組連合会 原口聖二

[#5 洋上風力発電と漁業 海外の経験 米国漁業 プロジェクトの承認は性急で違法 停止を求める]

米国では、ジョー・バイデンが大統領に就任して以来、政府が洋上風力発電プロジェクトを前進させることを強く求めてきた。

内務省海洋エネルギー管理局 (BOEM) によるリースの取り組みには、現在、東海岸沖の25 の活動地域が含まれているが、再生可能エネルギーを促進して環境を保護するとの取り組み自体が、環境上の理由からますます抵抗を受けている。

“米国漁業代表者連合”と“責任ある沖合開発同盟 (RODA)”は、マサチューセッツ州沖で建設中のヴィンヤード・ウィンド・プロジェクトを停止させるための訴訟において、ボストンのマサチューセッツ連邦裁判所に略式判決 (公判なしの判決) を下すよう求めた。

ヴィンヤード・ウィンド・プロジェクトは、マサチューセッツ州マーサズ ヴィニヤードとナンタケット島の南距岸15マイル に位置する大西洋の米国海域で建設中の洋上風力発電所で、マサチューセッツ州公共事業局は2019年にこのプロジェクトを承認、建設は2021年11月18日に開始された。

RODA は提出書類の中で、プロジェクトの承認は性急で違法であると指摘、商業漁業と希少なセイヨウセミクジラに深刻な損害を与えると説明している。

ニュージャージー州でも、漁業や環境などへの影響から、洋上風力発電プロジェクトに反対する動きが高まっている。

ロングビーチ保護を目的とする団体は、沖合9マイルに370基の風力タービンを設置することの美的、経済的損失、そして環境への悪影響を指摘、BOEM が必要な対応を準備できなかったと主張して訴訟を起こした。

他のニュージャージー州の批評家は、州政府があまりにも急速に天然ガスなどから遠ざかり、消費者に損害を与えていると述べている。

同様の動きは他にも見られている。

オレゴン州の議員2名が2022年6月に BOEM へ書簡を送り、オレゴン州南部の海岸沖に風力発電施設を設置につて、沿岸地域社会、太平洋岸の生態系、持続可能な漁業に悪影響を与えるとの懸念を表明、BOEMが、この問題に関して最も直接的な利害関係者を無視してきたと署名者の議員は批判している。

 

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洋上風力発電と漁業 海外の経験#4 米国西海岸沖合 まだ漁業分野と大きな溝がある

2022-12-18 06:30:58 | 日記

2022年11月20日

リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二

[#4 洋上風力発電と漁業 海外の経験 米国西海岸沖合 まだ漁業分野と大きな溝がある]

2022年11月18日、シアトルで開催されたパシフィック・マリン・エキスポの枠組みで、カリフォルニア沖で最初となる洋上風力リース販売プロジェクトにかかるパネル・ディスカッションが行われ、漁業者と米国内務省海洋エネルギー管理局(BOEM)の代表者が登壇、2つの産業界の合理的な共存に、まだ大きな溝があることが露呈した。

米国西海岸水産物加工協会代表ロリ・スティールは、現在の計画案では、風力発電所の設置により失う漁場が多すぎると述べ、水産業以外にフルタイムの仕事がほとんどない沿岸地域に大きな影響を与えると述べた。

また、計画が先行している東海岸においても、漁業への悪影響を緩和するための提案は全て、コンセンサスに近づいているものはなく、西海岸で悪影響の緩和について話し合うことさえ時期尚早だと語り、さらに、オレゴン州についても、計画設置の移動交渉の最中だと加えた。

東海岸のロングアイランド商業漁業協会事務局長ボニー・ブレイディによると、BOEM は早期に、ニューイングランド南部沖合で米国最初の洋上風力発電プロジェクトを審査して許可した。

しかしボニー・ブレイディによると、800メガワットのヴィンヤード・ウィンド・プロジェクトやその他のプロジェクトは前進しているものの、BOEMと洋上風力発電プロジェクト業者は、保守的財団の支援を受けて漁業者が起こした訴訟にまだ取り組んでいる。

一方、BOEM の関係者は、メキシコ湾の計画プロセスから学んだ教訓を、検討中の風力エネルギー・プロジェクト地域への対応に活用していると述べた。

BOEMは、2022年10月31日、メキシコ湾で初となる洋上風力発電を決定したと発表した。

洋上風力発電所はテキサス州ガルベストン距岸約24カイリとルイジアナ州レイクチャールズ距岸約56カイリ沖合に設置され、将来的には約300万世帯に電力を供給できる可能性があるとしている。

また、米国海洋大気庁(NOAA)と協力して、メキシコ湾全体の生態系を分析した海洋モデルを構築し、漁業や、環境への影響が最も少ない海域を選択していると説明しているが、今回の西海岸のパネル・ディスカッションでは、漁業分野の理解を得るまでに相当の時間を要する問題であることが分かった。

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洋上風力発電と漁業 海外の経験#3 アイルランド業界 政府に浮体式タービンに計画変更を要求

2022-12-18 06:28:52 | 日記

2022年11月19日

リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二

[#2 洋上風力発電と漁業 海外の経験 アイルランド業界 政府に浮体式タービンに計画変更を要求]

アイルランド漁業界は、同国政府に対し、計画されている洋上風力発電タービンを漁業への悪影響を軽減するために浮体式にすることを求めている。

先に、アイルランド業界の代表者6名が、再生可能エネルギー企業“シンプリー・ブルー”社の招待で、スコットランド沿岸のキンカーディンにある浮体式洋上風力発電所を訪問した。

アイルランド漁業者協会代表オドンネルは、新しい風力発電所を計画する際に、政府から十分に相談を受けていなかったと語り、予定されている規模の風力発電タービンはトロール漁業とは相容れないものだと加えた。

また、会員の利益を守るために懸命に取り組む必要があると述べ、例えば自社の漁船の多くは、アイリッシュ海で伝統的にダブリン湾のエビなどの魚種を対象に長年操業を行ってきたが、これらの漁場は現在、洋上風力タービンの設置が計画されているため、この先を不確実なものにしていると語った。

アイルランド環境・気候・通信大臣は、現在計画段階に入っているアイリッシュ海風力発電所6施設の建設を承認している。

オドンネルは、利用可能な豊かなアイリッシュ海の漁場のほとんどが、発電タービン設置計画と重なっており、計画を停止させることができない場合、漁船団は漁場価値が低い海域に移動せざるを得なく、大きな打撃を受けることになると語り、一方で、適切な話し合いで、全員が共存できるようになる可能性はあると言及した。

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