2024年06月16日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[洋上風力発電と漁業 日本の経験#77 浮体式洋上風力発電実証事業選定 石狩市浜益沖もれる]
新型コロナウイルスのパンデミックを発端とするサプライチェーンの混乱は、ウクライナ紛争で一段と深刻化しており、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、そして、インフレにより、洋上風力発電事業者の利益が圧迫され、内容が悪化、このような環境で、漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、はなはだ疑問な状況が伝えられている。
地元にこれらの情報が伝わっているのか理解に苦しみ、日本の洋上風力発電プロジェクトのプロモーションは、国民負担の賦課金を最初からあてにした”確信的背景”を想像させるものとなってきている。
2024年6月11日、北海道新聞(国乗敦子様)は、風車を海に浮かべる浮体式洋上風力発電の導入に向けた国の実証事業の選定区域が同日発表され、全国の候補4区域の一つとされていた石狩市浜益沖は選ばれなかったことを伝えた。
洋上風力発電を巡っては石狩市は今後、国が優先的に整備を進める「促進区域」の指定に向けて、あらためてかじを切り直す構えだが、一方、景観や生態系への影響を懸念している住民からは、安堵の声が聞かれたとしている。
候補とされていたのは石狩市浜益の沖合8~9.5キロの約2.4平方キロメートルで、東京電力と中部電力が出資する発電会社JERA(ジェラ、東京)が風車を1、2基設置、海底の基礎にワイヤをピンと張り、風車を安定させる「TLP方式」により海面下の占有面積を減らして漁業への影響を抑えるとの計画だったが、選外により、実証事業の実施は遠のいた格好とのことだ。
しかし、浜益沖の南側の石狩市沖は2023年5月、整備に向けて具体的な検討に入る「有望区域」に選定されており、石狩市は国や道と連携しながら「促進区域」への指定を目指す構えだとしている。
一方、風力発電に疑問を投げかける「石狩湾岸の風力発電を考える石狩市民の会」の糟谷奈保子共同代表は浮体式の実証事業で選外となったことについて、「雄大な山と海が広がる素晴らしい浜益の景観が守られるので良かった」と話したと結んでいる。
先に稼働が開始されている石狩湾でのプロジェクトについて、2023年11月13日、国土交通省港湾局海洋・環境課海洋利用調査センター(所長:榊原基生様)は、把握している限り、漁業影響調査に関する論議に至らなかったと語り、調べた限り漁業影響調査を行っていないと明らかにしている。
漁業への影響について、所謂“ベースライン調査”なしに当該商業運転がされていることになる。