【ツカナ制作所】きまぐれ日誌

ガラス・金工・樹脂アクセサリー作家です。絵も描いております。制作過程や日常の話、イベント告知等。

【連載】ETC、始動 ―13―

2016-03-27 10:00:18 | 【連載終了】ETC、始動
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九、出入り口


文化祭まで、あと二ヶ月を切った時のことだった。




部室に入ると、なにやら不穏な空気が漂っていた。

海野はカリカリして部屋の中を歩き回っているし、青柳弟は床の上で死んでるし、第一深雪先輩がいない。

深雪先輩がいないとなると、この部活は色々とヤバい。

「おう…来たか一年…」

青柳弟が、むっくり起き上がって言った。死んだ魚の目をしている。

「何があったんスか」

早瀬が恐る恐る訊くと、海野はその場で檻の中の虎みたいにぐるぐる歩き回りながらしゃべり出した。

「あんにゃろ~…チクショウ…とにかく、三回にしろだと!?…ふざけんな!…こっちだって本気なんだよっ…名前ぐらい教えろよ…殴りこみに行ってやら…」

物騒なヤツだな。

「そんなんだから教えてもらえなかったんでしょ~?」

急に現れた深雪先輩が、ちょっと疲れた声で言った。

今日は低めの位置にツインテール。いちごのシュシュが似合っている。

先輩は壁にもたれて、困った顔をした。

「実は、さっき生徒会から連絡がきてね…体育館の使用回数、三回にしろって。」

な、なにぃ?

「なんでも、他にも使いたい人がいるからって。もちろん本当は早い者勝ちなんだけど、その人たちも部活を公式に認められるチャンスだからって、すごく強行みたいなの。話し合いで手を引いてもらおうと思ったんだけど、生徒会がその人たちが誰だか教えてくれなくって…」

深雪先輩は話し合いのつもりでも、うちに一人何かやらかしそうなヤツがいますもんね。

「あいつら普段は優柔不断なくせによっ!こうなったら、あいつに訊くしかねぇ。全員、持ってる菓子を出せ」

海野は、いきなりカツアゲみたいなことを言い出した。





とりあえず、勢いに乗せられて全員が持っているお菓子を机の上に置いた。


俺は梅昆布とタブレットキャンディー(ミント味)、牛タン味の風船ガム。

早瀬はハチミツのど飴。

海野は食べかけの板チョコ。

青柳弟は何も持っていなかったが、深雪先輩はポテチ(のりしお)、チュッパチョップス、グレ子キャラメル、ホワイトライトニングと桃太郎飴を山積みにした。

どこにこんなに沢山持ってたんだろう。

「梅昆布出したのはどこのオヤジだ?牛タンってどんな趣味だよ。」

海野が呆れて言ったが、俺には何も聞こえなかった。

「これだけありゃいいだろ。じゃ、みんな十分後にまたここで集合だ。きっかり十分後に来いよ?それまでここに近づかないよーに。よし、解散!」

他の四人は、うい~っと締まらない返事をした。



「なんだろうね」

早瀬が、チラチラと部室の方を振り返りながら言った。

「まるで…うーん、何かをおびき出そうとしてるような…」




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