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三度目に舞台が明るくなった時、部長は紙袋を手にして頬と肩の間に受話器を挟み、嬉々とした表情でしゃべり始めた。
「ようっ!例のブツ、確かに届いたぜ。欲しかったもんは手に入ったから教えといてやるよ。実はな、あのオメェが少し食べたっていう校長先生のケーキな、残りはおれが全部食べたのよ。校長先生もおれが犯人ってことはとっくにご存知だ。つまり、オメェはいらぬ心配してオレに大事な大事なバレンタインチョコを送っちゃったわけだ。ハハハハハ、ざまぁめぇ!おれはどうせ全教科赤点だが、このチョコがあればちょっとはマシだからな。
ほんじゃ、いっただっきまーす!」
部長は紙袋から、茶色いハート型のものを取り出してかじった。
「うっ…」
そしてすぐに一声うめくと、床に崩れ落ちる部長。
受話器が手から離れ、ぶらぶらと揺れる。部長は震える手で再び受話器を取り、苦しそうに笑って言った。
「オメェ…かわいそうな奴だな。同情するよ。ぐふっ、好きな子からもらったチョコ…これ、チョコじゃなかったよ。…カレールーだ。しかも…うっ…げき…か、ら」
そう言ってバタンと倒れた部長を、闇が隠した。
「あのチョコォ!本物のカレールーと入れ替えたのはどこのどいつだぁあああああ!?」
舞台から控え室に帰ってくるなり、部長が吠えた。
確実に客席にも聞こえたなぁ、今のは。
俺たち(俺、深雪先輩、青柳・弟、早瀬)は、同時にさっと手を上げた。
「裏切り者はお前らだぁーっ!」
どっかで聞いたようなセリフを吐いて床にこぶしを打ち付ける部長。
「リアルな演技になったし、よかったんじゃない?」
にこにこ顔の深雪先輩がさらっとひどい事を口にする。
「面白かったから来年のバレンタインでも、また作ろうって春ちゃんと約束したんだ~♪」
ねっ、と深雪先輩に言われ、俺は思わず笑った。早瀬が渋い顔をする。
「よーう、エンターテイメント部一同、邪魔していいかい?」
と、ドアの外で聞き覚えのある声がした。
「おう、南会長!もしかして見ててくれたんですか」
いそいそと出迎える海野。ドアを開けて入ってきたのは、見覚えのあるテカード艦長…ではなく、生徒会長の南風人先輩だ。
「うんうん、見に来た。実質この部を公認にするかしないかの決定権持ってるのは俺ら生徒会と校長だからね。さっき校長も見かけた。」
そういうと、南会長はにやっと笑った。
「その校長を劇中に登場させるとは、なかなか策士だね。しかもちゃーんと『校長先生』ってバカ丁寧に言ってたし。」
部長が自慢げに笑った。本当に仕組んだんだろうか。(後でクロから聞いた話では、確かに部長が校長に自ら『最後の公演にだけは来て下さい』と言ったらしい。意外だ。意外に周到だ。)
「他の生徒会のメンバーは、ダンスを見たから充分だって言ってて来なかったみたいだけど、やっぱ来てよかった。まだ決定じゃないけど、期待していいと思うよ」
「うっす!」
「ここは、いい部だね」
そう言って笑う南会長は、ちょっと羨ましそうに見えた。
次回→
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三度目に舞台が明るくなった時、部長は紙袋を手にして頬と肩の間に受話器を挟み、嬉々とした表情でしゃべり始めた。
「ようっ!例のブツ、確かに届いたぜ。欲しかったもんは手に入ったから教えといてやるよ。実はな、あのオメェが少し食べたっていう校長先生のケーキな、残りはおれが全部食べたのよ。校長先生もおれが犯人ってことはとっくにご存知だ。つまり、オメェはいらぬ心配してオレに大事な大事なバレンタインチョコを送っちゃったわけだ。ハハハハハ、ざまぁめぇ!おれはどうせ全教科赤点だが、このチョコがあればちょっとはマシだからな。
ほんじゃ、いっただっきまーす!」
部長は紙袋から、茶色いハート型のものを取り出してかじった。
「うっ…」
そしてすぐに一声うめくと、床に崩れ落ちる部長。
受話器が手から離れ、ぶらぶらと揺れる。部長は震える手で再び受話器を取り、苦しそうに笑って言った。
「オメェ…かわいそうな奴だな。同情するよ。ぐふっ、好きな子からもらったチョコ…これ、チョコじゃなかったよ。…カレールーだ。しかも…うっ…げき…か、ら」
そう言ってバタンと倒れた部長を、闇が隠した。
「あのチョコォ!本物のカレールーと入れ替えたのはどこのどいつだぁあああああ!?」
舞台から控え室に帰ってくるなり、部長が吠えた。
確実に客席にも聞こえたなぁ、今のは。
俺たち(俺、深雪先輩、青柳・弟、早瀬)は、同時にさっと手を上げた。
「裏切り者はお前らだぁーっ!」
どっかで聞いたようなセリフを吐いて床にこぶしを打ち付ける部長。
「リアルな演技になったし、よかったんじゃない?」
にこにこ顔の深雪先輩がさらっとひどい事を口にする。
「面白かったから来年のバレンタインでも、また作ろうって春ちゃんと約束したんだ~♪」
ねっ、と深雪先輩に言われ、俺は思わず笑った。早瀬が渋い顔をする。
「よーう、エンターテイメント部一同、邪魔していいかい?」
と、ドアの外で聞き覚えのある声がした。
「おう、南会長!もしかして見ててくれたんですか」
いそいそと出迎える海野。ドアを開けて入ってきたのは、見覚えのあるテカード艦長…ではなく、生徒会長の南風人先輩だ。
「うんうん、見に来た。実質この部を公認にするかしないかの決定権持ってるのは俺ら生徒会と校長だからね。さっき校長も見かけた。」
そういうと、南会長はにやっと笑った。
「その校長を劇中に登場させるとは、なかなか策士だね。しかもちゃーんと『校長先生』ってバカ丁寧に言ってたし。」
部長が自慢げに笑った。本当に仕組んだんだろうか。(後でクロから聞いた話では、確かに部長が校長に自ら『最後の公演にだけは来て下さい』と言ったらしい。意外だ。意外に周到だ。)
「他の生徒会のメンバーは、ダンスを見たから充分だって言ってて来なかったみたいだけど、やっぱ来てよかった。まだ決定じゃないけど、期待していいと思うよ」
「うっす!」
「ここは、いい部だね」
そう言って笑う南会長は、ちょっと羨ましそうに見えた。
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