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いつの間にか喧嘩をやめた二人が俺たちの近くに立っていて、青柳弟は顔をしかめた。
「なぁ~に、人をデストロイヤーみたいに…」
上手い形容だ。
「でも、どうやって学校にフスマを持ってくるんですか?ドアみたいな大きさのものなんですよね」
俺がふと疑問をぶつけると、青柳弟は自分の額をピシャッと叩いた。動作が古い。
「あーっ!それ考えてなかったわ」
「車で運んでもらったらどうですか?…えーと、親御さんに」
早瀬が横合いから提案したが、青柳姉弟は急に複雑そうな表情で顔を見合わせた。
「でも…」
「あのオヤジに『文化祭のために襖を車で送って下さいませんか』って頼むぐらいなら、俺が自分で運んでくるよ。自転車にくくり付けて。」
青柳弟は、仏頂面で言った。
海野はなにやら考え込んでいたが、急に立ち上がったって言った。
「だったら誰か、軽トラ持ってる運転手に心当たり無いか?」
俺は、ちらっと早瀬を見た。早瀬も俺を見た。
「…あります。」
俺は、ゆっくりと言った。
「そうか、よかった!じゃあ、文化祭のための一週間前になったらここに運び入れる。それまでに八坂はその人に許可取ってくれな。もし駄目だったら、また別な方法を探そう。」
海野がてきぱきと言った。
その日の帰り、早瀬は急にこの話を振ってきた。
「…お姉さんに頼むの?」
早瀬が珍しく静かだったせいでまったく別のことを考えていた俺は、返事に詰まった。
「ぁえ?」
「運転手。襖運ぶ。」
「あ…うん。そう。」
「いいの?えっと、つまりおれの言いたいのは…」
また余計なこと…お節介なヤツ。早瀬のお節介やきは幼稚園児の頃からだけど。
修学旅行や遠足の前には必ず電話してきたし、学校を休むと必ず俺の家まで来た。心配そうな顔で。
自分の方が忘れっぽくてうっかりやで危なっかしいくせに。本当は俺の方が早瀬を心配するべきなのに。
例えるなら、コイツは一人暮らしを寂しいと感じている人間の家にいきなり上がりこんできてその家の主がとりあえず茶を出してやろうとしたらもうすでに自分で二人分淹れているというタイプの人間だ。…今ので伝わったか?
俺は、無意識にため息をついた。理由は自分でもよく分からない。
「…俺、学校に会わせたい人がいるから。」
「あ~…うん、そうか。」
早瀬は小さく頷いた。
自分のこと知りすぎてるヤツって、時々イラつかされるけど、でもそういう人が近くに一人はいたほうがいいのかもしれないかもしれない。
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いつの間にか喧嘩をやめた二人が俺たちの近くに立っていて、青柳弟は顔をしかめた。
「なぁ~に、人をデストロイヤーみたいに…」
上手い形容だ。
「でも、どうやって学校にフスマを持ってくるんですか?ドアみたいな大きさのものなんですよね」
俺がふと疑問をぶつけると、青柳弟は自分の額をピシャッと叩いた。動作が古い。
「あーっ!それ考えてなかったわ」
「車で運んでもらったらどうですか?…えーと、親御さんに」
早瀬が横合いから提案したが、青柳姉弟は急に複雑そうな表情で顔を見合わせた。
「でも…」
「あのオヤジに『文化祭のために襖を車で送って下さいませんか』って頼むぐらいなら、俺が自分で運んでくるよ。自転車にくくり付けて。」
青柳弟は、仏頂面で言った。
海野はなにやら考え込んでいたが、急に立ち上がったって言った。
「だったら誰か、軽トラ持ってる運転手に心当たり無いか?」
俺は、ちらっと早瀬を見た。早瀬も俺を見た。
「…あります。」
俺は、ゆっくりと言った。
「そうか、よかった!じゃあ、文化祭のための一週間前になったらここに運び入れる。それまでに八坂はその人に許可取ってくれな。もし駄目だったら、また別な方法を探そう。」
海野がてきぱきと言った。
その日の帰り、早瀬は急にこの話を振ってきた。
「…お姉さんに頼むの?」
早瀬が珍しく静かだったせいでまったく別のことを考えていた俺は、返事に詰まった。
「ぁえ?」
「運転手。襖運ぶ。」
「あ…うん。そう。」
「いいの?えっと、つまりおれの言いたいのは…」
また余計なこと…お節介なヤツ。早瀬のお節介やきは幼稚園児の頃からだけど。
修学旅行や遠足の前には必ず電話してきたし、学校を休むと必ず俺の家まで来た。心配そうな顔で。
自分の方が忘れっぽくてうっかりやで危なっかしいくせに。本当は俺の方が早瀬を心配するべきなのに。
例えるなら、コイツは一人暮らしを寂しいと感じている人間の家にいきなり上がりこんできてその家の主がとりあえず茶を出してやろうとしたらもうすでに自分で二人分淹れているというタイプの人間だ。…今ので伝わったか?
俺は、無意識にため息をついた。理由は自分でもよく分からない。
「…俺、学校に会わせたい人がいるから。」
「あ~…うん、そうか。」
早瀬は小さく頷いた。
自分のこと知りすぎてるヤツって、時々イラつかされるけど、でもそういう人が近くに一人はいたほうがいいのかもしれないかもしれない。
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